第7話 Gods Willing
砂丘を越えて荒地をしばらく歩いてから、人の往来があると思しき道を発見した。
この道を行けば街へ辿り着けると思ったものの、残念ながら先に日が暮れてきてしまった。
街道から少し離れた場所に野営跡が残っていたので、有り難く使わせてもらうことにして、その場にテントを張る。
火を起こし、晩御飯を食べようとする頃には既に日は落ちきって暗くなっていた。
硬いパンとこれまたゴムみたいに硬い干し肉を噛み締めながら、ソフィが自分に起きている違和感について話してくれていた。
「つまり、本来ならソフィは排泄について何も知らない筈が何故か分かった、知っていたって事か」
「そうだ。これは間違いなくあの神の仕業だろう。どういうつもりかは知らないが」
「ソフィが言ってくれるまで普通に話してるのも全然不思議に感じてなかったよ…」
俺は、取り乱していたのにスッと落ち着いたあの時の事を思い出していた。
「でも別に悪い事じゃないだろ?神様のサービスだよ、たぶん」
「だが、どこまであの神に弄られてるのかわからないのが気持ち悪い」
「それは……確かに…」
俺の身体も、神様は少し頑丈で健康にして蘇生してあげると言っていたが、今日一日中歩いてもさほど疲れた感じがしなかったり、ちょっとした作業の時に重い物を軽く持ち上げられたり、少し頑丈どころでは無い強化のされ方をしている。
……あの神様、結構いい加減な気がするな。
「ん?おい、ケンジ!袋が光ってるぞ!」
「光ってるって…神様ノートか?」
バッグを開くと、思った通り日報の神様ノートが光っていた。…いい加減とか思ったか怒らせた?
とりあえず開いて見ようと手に取ると、光は収まった。
恐る恐る開いてみると、前に見たときは無かった文字が追加されていた。
内容は──
【異世界での第二の人生で困らないよう、君達には最低限の『異世界スタータープログラム』をそうとは気付かないように入れてあげたんだけど、気付いちゃったかぁ。ま、気にしないで大丈夫だよ。君たちの人格や記憶は特に触ってないから。あと、その世界に降り立った時点で僕は君達に干渉は出来ないので、そこも心配しなくていいよ。どうやら、いい加減な神様は嫌われてるみたいだからもう関わらないようにするね。
それじゃバイバイ~。
PS.一応、使命は忘れないでね】
…………なるほど?てか神様拗ねてる?なんか…ごめんなさい。
とりあえず、神様からのメッセージをソフィにも見せる事にした。
メッセージを見たソフィは可愛らしい顔を歪めながら、訝しげに眉間に皺を寄せている。
「……どうかな、これ。ソフィは信じて良いと思うか?」
「…信じられないが……信じても良いと、思う」
「え?マジで?」
ソフィからは意外な返事が返ってきた。元魔王だと聞いてるし、てっきり『信じられるわけない!』とか言うと思ってたのに。
「仮にも神を名乗っているのだから、自分の言ったことを曲げることは無い…と思う。それにあの恐ろしい神が、わざわざ私達相手に嘘を吐く必要もないはず」
「なるほど…」
「ま、関わらんと言うのならそれで良い。
それより、なんだこの…いや、ほんとなんだこの肉は!
中々噛みきれんし、やたら口の中がしょっぱい!このパンとかいうのも硬いし……私はもうアゴが痛いぞ……」
神様の話などもうどうでもいいと言わんばかりに、ソフィは保存食に苦戦していた。
俺はこの身体のおかげか、硬いがそこまで気にしなくてもいいって感じだが……。
「うう……もう、いい!あとはケンジにやるぞ!」
「気持ちはわかるけど、ちゃんと食べないと動けなくなるぞ。ほら、水に浸せば少し柔らかくなるから、頑張れ」
「むぅ〜どこまで不便なんだ!人間の身体は!」
その後も、硬い…気持ち悪い…と文句を言いながら、ソフィはなんとか保存食を完食した。




