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第2話 ミブ ケンジ

 自分で言うのもなんだが、俺はそれなりに上手く人生ってやつを生きてきた─つもりだ。

 ……いや、嘘をついた。そんなに上手くはいってない。

 中学時代、調子に乗っていた俺は身勝手な正義感を振り回して、正論で人を言い負かすのが正しいかの様に振舞った。

 結果、いじめ…という程の事はなかったが、それでもクラスに居場所を失い、不登校となり自分の部屋に引き籠った。

 高校受験を前になんとか復帰し、なんとか第三志望の学校に合格できた。

 ──高校生活はそれなりに順調だ。

 中学の時のような馬鹿な真似はせず、周りの空気を読み、それなりに上手くやっている…はずだ。

 それなりに中の良いクラスメイト。勉強。部活。悪くはない。

 たまに、教室や校舎裏でいじめの現場を目にする。

 つい、声を上げたくなる。

 カッコ悪い事はやめろ!立派な犯罪だ!

 そんな風に、止めたい気持ちはある。だけど……

 どうしても中学時代の事を思い出して足が前に出ない。怖いんだ。

 またハブられて、居た堪れなくなって、部屋に引き籠るようになるんじゃないかと、そう考えてしまって……

 結局俺は、自分が可愛くて行動できないでいた。

 俺なんかに出来ることは無い。なにかしたって無意味だ。俺が気に病むことじゃない。言い訳は、いくらでもできた。

 

 ある日の下校中、歩道の信号が青になり横断歩道をわたる。忙しなく行き来する人混みの中、自分の隣をおじいさんが歩いていた。

 それを特に気にしてたわけじゃないけど、途中なにかあっても気分が悪いので、なんとなく気にかけるように少しゆっくりと歩いていた。

 遠くで悲鳴が聞こえた。

 何事かとその声の方を見ると、クラクションを鳴り響かせながら暴走したワゴン車が信号も人も、無視して走って来ていた。

 とっさに逃げようとした時、立ち止まっているおじいさんが目に留まる。

 ──気が付いた時には、おじいさんを押し退けて、瞬間鈍い音と衝撃に見舞われ──

(明日のテスト、どうしようか)

なんて、何故かそんな事が頭に浮かんで、俺の意識は途切れた。



「やあ。おはよう、壬生 健仁君。目覚めの気分はどうだい?」

「……?……え?」


 気が付いた時、俺は真っ黒な空間で真っ白なスーツ姿の少年の前に座っていた。

 ここ、どこ?


「ここはね、死後の世界だよ。正しくは、その手前かな」

「死後の──世界…?……は?え?な、なんで?」

「あれ?憶えてない?君、車に撥ねられたんだよ。こう、バーンッ!てね」


 車に、撥ねられた…?死んだ?いや、でもこうして今座っているし……

そう思って、足元を見るとそこは真っ黒でなにもない。現実で見たことのないナニか。

 ──手が、震える。


「当たり所が悪かったんだろうねぇ。ほとんど即死だったみたいだよ?」


 あ、え、いや、そん、なあああ────あああああああああああああああああ

 そうだ!暴走したワゴン車に撥ねられてそれで俺はっ!!そんな…そんな馬鹿な!し、死んだのか……?本当に…?


「おっとしまった。ごめんごめん、ちょっと失礼するよ」


 パチリっと少年が指を鳴らすと、荒れていたはずの思考がクリアになっていく。落ち着いていく。

 ──不思議だ。自分が死んだことが、まるで遠い昔の事の様に感じる。いや、実際どうなんだ?気が付くまでに何年も経ってたりするのか?


「落ち着いたみたいだね。どう?お話し、できそうかな?」

「え?あ、はい…だいじょうぶ、です。たぶん」


 この少年が何かしたのだろうか。一体何者なんだ?悪魔とか神とか?


「悪魔は不敬だけど、まぁ何も知らないわけだし赦そう。神様であってるよ。

 その神様から君にちょっとお願いがあるんだ」

「はぁお願い、ですか?」


 神様だったのか。神様ってこんな感じなのか…。いや、ていうかお願い?俺に?俺なんかに?


「ふふふ、君はどうも自己評価が低いみたいだけどそこまで卑下しなくても良いと思うよ?君は他人のために命を投げ出せる…投げ出せた。そう出来る事じゃない」

「そんなんじゃ、ないですよ…」


 あれはとっさに体が動いただけで、命懸けの行動ってわけじゃない。褒められるのは、まぁ嬉しいけど。


「そこでとっさに動ける事が…いや、まぁいいか。とりあえず、僕のお願い、聞いてくれるかい?何もタダでやってくれとは言わないからさ」


 そういって微笑みながらウインクしてくる神様。なんというか、ずいぶんお茶目な神様だな。


「詳しい理由は省くけど、とある世界の…そうだな、僕の後輩みたいな感じの神がちょ~っと良くない事をしちゃってね。お咎め無しって訳にはいかないから、すこしお仕置きを─ね」

「お仕置き、ですか」

「うん。だけど、僕がかの世界に直接降臨するのは、ちょっと避けたい。これでも忙しい身だしね。そこで、代わりに君に行ってほしいって訳さ」

「…なるほど」


 いやいやいやいやいやいや……単なる人間の、それもただの高校生の俺に何をおっしゃるのかこの神様は。


「さっきも言ったけど、もちろんタダじゃないよ。まずは死んだ君を死んだ時と同じ、いや少し健康で頑丈にするオマケ付きで生き返らせてあげよう。そして君の為に二つ、望みの能力を授けてあげよう」

「二つ…それは、なんでも?」

「ん~大抵はかまわないけど?」

「たとえば、不老不死とかでも?」


 時の権力者達がこぞって欲しがる不老不死。それが手に入ったりする?いや、冷静に考えたらあんまりいらないかも……


「あ~それはダメだね。不老不死はちょっとね、よくないんだよね。代わりに超回復力とかどうだい?即死、は流石に無理だけど大抵の怪我や病気なんかもすごい速さで回復する割と便利な能力だよ」

「それは、確かによさそうですね」


 どのぐらい早いのかはわからないけど、怪我や病気は早く治るに越したことは無いしな。──いや、まだやるって言ってないけど…?


「まぁまぁ、もうあきらめてサッサと能力決めて行ってきてよ。とりあえず目的の神の所まで行ってくれたら後は好きにしていいからさ。ほら、チート転生だよ?お得だよ~」

「え?神の所に行くだけでいいんですか?その、倒したりとかじゃなくて」


 俺がそういうと神はカラカラと笑って顔を見せればそれでいいと言った。

 そんなんでいいのか…?

 ただ、それなら確かに悪くない。

 命懸けの戦いという訳じゃなく、あくまで懲罰対象の神の元まで向かうだけ。それなら俺でも出来そうだ。ああいや、でも…


「その、向かう世界はどんなところなんです?」

「やる気になってくれて嬉しいよ。そうだねぇ、わかりやすく言うと剣と魔法とモンスターのファンタジー世界、かな」


 はい、剣と魔法としかもモンスターと。うーん、怪我が早く治るとは言っても直接戦うのは怖いな…格闘技とかの経験もないし……そうだ!


「あの、共に戦ってくれる仲間というか相棒みたいなのってお願いできますか?ポケモンとかデジモンみたいなの」


 そう、なにも自分が戦わなくても戦ってくれるモンスターの仲間が居てくれたらいいのだ。好きなんだよなぁ、あれ系のゲーム。


「な、仲間かい?」


 神は少し予想外といった感じだ。でも自分で戦うのとかできそうにないし、知らない所に気の許せる存在がいてくれるのは有難いと思うんだよなぁ。

 うちペットNGのマンションだったから猫とか犬も飼えなかったし。


「…ダメ、ですか?」

「う~ん……すこし、待ってくれるかい?」

「え、あ、はい」


 神様はそういうとスーっと姿を消して、そしてすぐに金髪の美少女をお姫様抱っこして戻ってきた。


「おまたせ!君の相棒を連れてきたよ!」

「────え?」


 モンスターの相棒をお願いしたら神様が美少女を連れてきたでござる。なんで??

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