表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『人類を裏切った少年、魔族の総帥に拾われる』 ~国を毒殺して処刑されるはずが、深淵の力で魔界の英雄(?)に成り上がるようです~  作者: M—mao
グランディ帝国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/17

第3話 紅蓮の記憶

音もなく、エドが要塞の暗がり(くらがり)を疾走する。


この三ヶ月、脳髄(のうずい)に焼き付けたルートだ。迷いはない。


中庭を抜け、機関室へ。

正門の跳ね橋(はねばし)を操る、要塞の心臓部。


本来なら重装歩兵(じゅうそうほへい)が二人詰めている場所だが、今はただの鉄屑(スクラップ)のように入り口で沈黙している。


エドは巨大なウインチの前に立つと、(こな)れた手つきで安全ピンを蹴り飛ばした。


カキンッ!


乾いた金属音が響く。

ハンドルを鷲掴(わしづか)みにし、全身の筋肉を(きし)ませて押し込んだ。


ギチチチチチチッ――!


()びついた鎖が悲鳴を上げる。

地響(じヒビ)きと共に、巨大な跳ね橋がスパイクの植わった(ほり)へと架かっていく。


「ハァ……次は……」


額の汗を拭い、塔の頂を見上げる。

視線の先にあるのは、空を切り裂くような高塔(こうとう)


「これで……最後の準備だ」


エドは倒れ伏した衛兵たちの間を、音もなく駆け抜ける。


助走をつけ、壁面を蹴った。

爪先が石の突起を捉える。一瞬だけ体重を預け、次の足場へ。

その繰り返しで、十数メートルの城壁を猫のように駆け上がった。


烽火台(のろしだい)


吹き荒れる強風の中、エドは壁の松明を引っこ抜き、中央の火盆(かぼん)へと投げ入れた。


ボオォォォッ!


特殊な薬粉を混ぜた薪が、瞬時に爆ぜる。

黒い狼煙(のろし)が、天を衝くように昇った。


だが。

その熱波が顔を撫でた瞬間、エドの瞳から光が消えた。


揺らめく炎。膨張する熱。

鼻腔を突く鉄錆の臭い。焦げた木の臭い。


それが、脳裏の「何か」と重なった。


――焼け落ちる(はり)

――崩壊する屋根。

――炎。

――そして、伸ばした手。届かなかった手。


「タリア……姉さん……ッ!」


ガンッ!


拳を石壁に叩きつける。

走る激痛。


エドはハッと息を呑み、現実に引き戻された。


「ハァ、ハァ……ッ」


冷たい風が肺に突き刺さる。

拳から滴る血を見て、エドは舌打ちした。


「チッ……」


悪夢は終わりだ。

そんな感傷に浸っている暇はない。


眼下には、朝日に輝く憎き黄金の屋敷。

歯が砕けそうなほど強く噛み締める。


短剣(ダガー)を逆手に持ち直す。


「ル……グ……ナァアアアッ!!!」


咆哮(ほうこう)は風に掻き消された。


エドは迷わず、塔の縁を蹴った。


二十メートルの落下。

風を切り裂きながら、黒い影が屋根から屋根へと跳び移っていく。

【ブックマーク登録で、更新を見逃さず読めます】

少しでも「楽しめた」「ざまぁに期待」と思っていただけたら、

ページ下の【★★★★★】にして評価いただけると、泣いて喜びます!

ブックマークとあわせて、ぜひ応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ