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居候従兄妹と株取引の青春ラブコメ  作者: まるせい


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第十七話

 ◆竜也視点◆



 朝食を終えて部屋で待っていると、茉莉花さんからメッセージが飛んできた。

 どうやらホテルに到着したらしい。


 そこで僕らはロビーに駆けつけると茉莉花さんを迎え入れた。


「やっほー。陽菜ちゃん三日ぶりだねー」


 引継ぎを兼ねて陽菜さんには一度チェックアウトしてもらう。

 そしてすぐに茉莉花さんと一緒にチェックイン。これで僕はひとり部屋になり、彼女達二人が同室だ。


「こんにちは茉莉花さん。今日はよろしくお願いしますね」


 女同士仲良く手を取り合っている。やはり子の二人は仲が良い。

 共通項といえば二人揃って美少女というぐらいしか無さそうだが、何か共通の好きな物でもあるのだろうか?


 時折こっちをみては楽しそうに話している。

 話題は昨日回った施設の事のようだ。今日は陽菜さんが張り切っているので昨日周った施設を中心に茉莉花さんを案内するのだろう。


「それじゃあ竜也君。私達は遊びに行くね」


 水着が入ったバッグを肩にぶら下げた茉莉花さん。


「うん。陽菜さんの事宜しく頼むね」


 彼女には変な客に絡まれたとだけ伝えてある。茉莉花さんもそういった手合いの対処は普段から実技で行っているので大丈夫だろう。可愛いって大変だよな。


「それにしても……折角気合入れて水着持ってきたのにさ。竜也君が来ないなんて……」


 一転して恨みがましい目つきで睨まれる。僕はあえて、自分は参加しないムネを伝えていなかった。彼女の気持ちを利用するようで気が引けるが、誘い出せる成功率を上げる為だ。


「ごめんね。時間が出来たら顔出すかもしれないから」


 一応社交辞令を述べてこう。僕の目算によると時間はギリギリなので余るどころか足りない可能性もあるのだが。


 女子連中が部屋を退室したのを確認した僕は早速スマホとホテルから借りたノートパソコンを配置するのだった。




 ◆茉莉花視点◆


 今朝早くに電話を受けた私は水着を用意すると一路スパリゾートを目指した。


 早朝のまだ皆が寝ているような時間帯。

 私はジョギングに出るべく着替えを終えたところだった。


 そんな最中に鳴る電話を見て驚く。ディスプレイに表示されている名前は私がもっとも話をしたいと願っている男の子だったから。


 そう。私は卒業式の日にこの名前の主に振られている。

 二年越しの片思いは彼の優しくもハッキリした言葉で粉々に打ち砕かれたのだ。


 私の目の前を陽菜ちゃんが歩く。

 彼女は私の目から見ても完璧な美少女だった。


 護りたくなるような華奢な体に整った顔立ち。もしも自分が男ならきっと惚れていたに違いない。


 だけど、恐らく彼女でも竜也君の心を射止めるのは無理だろう。

 私や彼女が悪いというわけではない。


 ただ、彼には明確な目標があり、恋愛ごとは邪魔と決め付けている節がある。

 その証拠に彼は私達と一緒に遊ぶのを断ってなにやら忙しそうにしている。


 私はこんな彼を二年間で何度も見てきた。

 こんな時の彼は普段の顔とは違い笑顔を浮かべるのだ。


 笑顔と言っても、他人の前ではそれ程見せない。普段から無表情で通っているし。そんな彼の笑顔を知っている人間はどれだけ居るというのだろう?


 そう……あの。「見つけた猛獣をいかに嬲り倒すか楽しみでしょうがない笑顔は」




 ◆竜也視点◆


「もしもし。アリスか?」


「私以外の誰がこの携帯に出るというのかしら? それとも竜也のスマホには私以外の連絡先が入っているとでも言うの?」


「いや。出る可能性あるだろ。例えば……」


 親とかさ。といってもこいつ一人暮らしだったな。後は……彼氏? うん。無いな。僕は想像をしてみたが、こいつに彼氏が居る姿が想像できない。

 見た目は完璧でお金もある。地位も名誉も全てを兼ね備えているのに何故か男と付き合うビジョンが見えない。


「あと、僕も普通に連絡先ぐらい登録してるからな」


「竜也。あなた疲れているのよ。だからそんなありもしないエア友達の連絡先とかエア両親の連絡先が見えてしまうのだわ」


「友達はともかく両親は実在するに決まってるだろっ!?」


「両親など居なくても子供は産まれるのよ?」


 何それ。もしかしてアリスは竹の中から生まれてきたとか……?

 こいつの美貌を考えると嘘と吐き捨てられないから恐ろしい。


「いやいや。人類の全てを否定する言葉だぞそれ」


「……そう。時間を無駄にしたわね。それで頼んでおいた調べ物は?」


「なんか物凄く納得がいかないけど、メールしたよ。思っていたよりも優良だったね」


 僕は資料を見ながら電話をする。アリスの方も同じものをみている最中だろう。


「……この程度ならそれ程崩さなくても……将来を考えるなら……15……いや25ぐらいかしら?」


 彼女の頭脳はいま高速で案件に対する処理を行っている。

 思えばこうした相談をするのは実に半年振りだ。一時期は毎日のように電話をしていたのだが、とある事情もあって控えていたからな。


「竜也決めたわ。25億で全体の35%を抑えに行きましょう」


「えっ? そんなに? そこまでしなくても、筆頭になるのに必要なのは14%だよ?」


 僕としては発言権さえあればある程度で問題ないのに……。


「それは今だけを見た場合よ。あなたが見つけてきたこの優良物件は将来必ず値上がるわ。その時に筆頭をギリギリで維持してて横槍を貰うのは得策では無いわ」


 そう自信満々に言い切る彼女だったが。


「僕それで、資金投入して一時期危なかったんだけどさ? さすがに今回は危ない橋までは渡れないよ?」


 去年の話。僕と彼女は悪巧みをしていた。今回のように大きな買い物をしようとしたのだが、世界情勢のトラブルに巻き込まれて彼女の試算が狂ったのだ。


「安心しなさい。最近は戦争の兆候も無ければ、何処かの国が破綻するような情報もないから」


 まあいいけどさ。こうなってしまった彼女を論破するのは亀がウサギに競争で勝つぐらいに難しいというのは理解している。


「今回はどういう内訳で行く?」


 事に当たる場合、僕らはよくこの手の相談を行う。


「今回は竜也が見つけてきたのだから15億と10億で構わないわよ」


「それって……僕が10億だよね?」


 構わないといいつつも自分が主導を取れるように動くんだね。


「何か問題でも? あなたこの前仕掛けた案件がまだ清算できていないでしょう? そろそろ反転に入る時期だから遊び呆けてないで張り付かないと痛い目みるわよ?」


 僕の財布事情を知っての上での発言だったか。本当にもう。頭が上がらないね。


 その後も電話でやり取りをしながらパソコンを操作していく。普段は5台体勢なので2台のロースペックノートPCでは辛い。

 だが、足りない情報はアリスから逐一教えてもらうので普段よりも頭を使わないで済むぐらいだった。


 僕らは何とか午前中ギリギリで取引を終えた。





 ◆第三者視点◆



「何でこの程度の仕事に時間をかけてやがるっ!」


 怒鳴り声がオフィスに響き渡る。


「この案件につきましては、計算が色々と複雑でどうしても時間が掛かってしまい……」


「ふざけるなっ! お前が糞して空気吸ってるだけでも賃金が発生してんだよ。いつになったら効率的に仕事できるようになるんだ?」


 男の怒鳴り声にフロア全体がしんとする。なんとも気まずい空気が流れる。


「もっ、申し訳ありません」


 怒鳴りつける男にたいして顔を青ざめて謝る青年。

 周囲の視線は冷めた目で怒鳴る男を見ていた。


「また高浜さんが怒られてる。昨日も遅くまで外回りして大変だったのに」


「それに比べて佐伯執行役員なんて日中はぶらぶらしてて机に足を乗っけて本を読んでたのよ」


「私も見た。それどころか会議室を予約してそこで昼寝してるって噂だし」


「夜は夜で接待という名のキャバクラ通いなのよね」


 本人に聞こえないように最新の注意を払う。もしこの話が本人へと伝わると次のターゲットが自分になるのが明らかだからだ。


「知ってる? 高浜さんが、無用な経費の私的利用について言及した事があるらしいけど、社長への報告は役員が優先されるから握り潰すどころか罪を押し付けられたんですって」


「いずれにせよ上がああだとこの会社も駄目かもね。業績は上向いてるのに……」


 下部の人員の能力は高い。だが、肝心の上に居座る連中は所謂団塊世代と言われており、能力があろうが無かろうが出世できた世代である。

 そんな世代だからこそ仕事の出来よりも付き合いの上手さが出世に影響を与えるのだ。


 それでは社員のやる気も段々と低下していく。そうなればこの会社に未来は無かった。


「どこか大手さんに買収でもされないかしら」


 現在、役員達がやりたい放題なのは自分達の不正がばれる事が無いからである。

 平社員達には暗黙の了解なのだが、上に話を通そうとすればその時点でばれる。そして理不尽にいびられて会社を追い出される。


 外部の人間が入ってくればこの会社にも風穴が開くのだろうが、業績が上がっているとはいえ目立つ会社ではない。

 数多ある会社の中から発見されるのは確率的に高く無いだろう。


 次第に説教が鳴り潜め、佐伯執行役員は席へと戻っていく。

 これから昼休憩までは日課のインターネットで時間を潰すつもりだろう。


 だが、おおよその予想とは別に席にもどった佐伯は暫くすると立ち上がった。そして顔を青くすると大慌てで出て行く。


「何かあったのかしらね?」


「さあ。でもあの役員があんな顔するなんて余程の事じゃないかしら?」


 話し合う社員達の元に情報が入ったのは午後の仕事が始まった頃だった。


 そう……『会社が買収された』という情報が。

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