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魂を縫う者  作者: Lam123
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歓楽街のエデン、虚ろな糸を引く者

霧の街の中心部、歓楽街の薄汚れた路地裏。ネオンサインが点滅する古びたビルの地下に、バー「エデン」は存在した。その名前とは裏腹に、店内は安い酒とタバコの煙、そして濃厚な諦観の臭いに満ちていた。

ラム警部(ラム警部)は、場違いな革ジャケット姿で入口の用心棒に警察手帳を見せ、フォンと共に中へ入った。店内は薄暗く、ジャズの音が微かに流れているが、客たちの目には光がなかった。

「底の底まで腐りきった匂いがするな」ラムは耳元で囁いた。「ターゲットはどこだ、フォン?」

フォンは深く被ったフードの下で静かに息を吸い込んだ。ヘッドホンからは控えめな環境音が流れ、彼の**共鳴視覚キョウメイシカク**を研ぎ澄ます。

このバー全体が、無数の**『孤独』と『後悔』の残穢で澱んでいた。その中で、一際強く、純粋な『自己嫌悪』**の青いオーラを放つ女性がいた。カウンター席に座る、長い髪の憔悴した女性、エリだ。

しかし、フォンは同時に異常を察知した。エリの周囲の空気は、不自然なほど静謐せいひつだ。それはまるで、獲物の周囲に張られた見えない蜘蛛の糸のように、人工的な残穢が漂っているのだ。

「ラムさん、ターゲットを見つけました。カウンターです。しかし、罠が張られている。すでに奴らが接触しています。」

フォンの視線の先、エリの隣には、場末のバーには似合わない、清潔なスーツを着た細身の男が座っていた。その男の体からは、感情の残穢がほとんど検出されない――つまり、感情を持たない、あるいは完全に制御していることを意味する。

フォンとラムがエリに向かって歩みを進めると、スーツの男は彼らに気づき、静かにグラスを置いた。

「おやおや、まさかS.I.U 4の『特別顧問』さんが、こんな堕落した楽園まで足をお運びとは」男は滑らかな日本語で話した。その目つきは、冷たいガラス玉のようだ。

「『裁縫師の集団』の者か」ラムは威圧的に言った。

「私はただの**『仲介人』ですよ。佐倉ミコトの糸は、少々粗雑すぎた。次は、このエリさんの深く美しい絶望を素材に、もっと強固な『作品』**を仕上げる予定でしてね。」男はエリの背中を優しく撫でた。エリはまるで麻痺したかのように反応しない。

「素材だと?ふざけるな!」ラムは激昂し、男の襟首を掴もうと手を伸ばした。

しかし、男は素早く後ろに下がり、スーツのポケットから小さな布製の人形を取り出した。人形には赤い糸が縫い付けられている。

「残念ですが、実験には邪魔が入らない方がいい」

男が人形の糸を一本引いた瞬間、エリの頭上から、前回よりも小型で俊敏な**『追跡者チェイサー』**の残穢が、黒い霧となって現れた!それは縫合者のミニチュア版だ。

「待て!」フォンは叫び、清めの塩を仕込んだバトンを抜き放った。

「この小さな猟犬で、お相手を」男はエレガントに一礼し、店内の混乱に乗じて闇の中に姿を消した。

小型の追跡者は、エリの絶望の残穢を吸い取り、フォン目掛けて襲いかかってきた。フォンはバトンで追跡者を切り裂き、その残穢を拡散させることに成功するが、その衝撃でエリは意識を失った。

ラムがエリを抱え上げ、フォンは追跡者の残穢を睨みつけた。

「仲介人だと…奴らは組織化されている。そして、この街のどこかで、別の『素材』を探している。」

今回の遭遇は、組織の深層への最初の扉が開かれたに過ぎなかった。フォンの頭には、仲介人の冷たい目が焼き付いていた。彼は単なる手下ではなく、この悪意の設計図を知る者だ。

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