母体の核心、貪欲の盾を打ち砕け
鉤引師が示したメモを頼りに、フォンとラム警部(ラム警部)はミダス・タワーの最深部、都市の地下深くへと潜行した。エレベーターを降りると、そこは巨大な機械室だった。目の前に現れた**『母体』**は、巨大な心臓のように脈打つ、赤黒い金属の構造物だ。無数のケーブルが周囲の地下インフラへと伸び、都市全体の感情を吸い上げていた。
『警告します、フォン。残穢の濃度が異常です。これは純粋な欲望の集合体です。心臓が耐えられません』アイラ(アイラ)の声が、通信機越しに悲痛な響きを帯びた。
「これこそが、彼らが太陽の都で創り上げた恐怖か」ラムは息を飲んだ。
彼らが母体の中心核に向かって進むと、通路の突き当たりに、光沢のある鋼鉄の甲冑を纏った自律防衛機構が出現した。その甲冑は、金と銀の細工が施され、まるで完璧な投資家のように優雅だ。それが**『貪欲の盾』**だった。
『ここから先は、最も優れた者しか通れません。貴方達の欲望は、私の動力源となります』機械的な声が響いた。
盾は、ラムとフォンの最も強い願いを反射する。ラムには「平穏な引退生活」、フォンには「失われた過去の再生」という幻影を見せつけた。
「幻覚に惑わされるな!」ラムは警告したが、彼自身も一瞬、故郷の霧の街でのんびり暮らす自分を夢見てしまった。
盾は、フォンの心に直接干渉した。彼の共鳴視覚を逆手に取り、過去のトラウマを餌に、未来の権力への欲望を増幅させた。『私に協力すれば、裁縫師の集団を支配し、世界を思うがままに操れる』。
フォンの目の前で、青い決意の光が、再び燃え盛るような『欲望の赤』に塗り替えられそうになる。
「俺はもう、過去の犠牲者じゃない!」
フォンは、全ての感情を**『利他の決意』へと集束させた。それは、組織を破壊することで誰かの命を救うという、純粋な自己否定のエネルギーだ。貪欲の盾は、『満足』ではなく、『与える』**という行為、すなわち無私の決意によってのみ崩壊する。
フォンは、彼の力全てを込めたバトンを、盾の胸元の核目掛けて投擲した!
バトンが核に接触した瞬間、爆発的な青い波動が周囲に広がり、貪欲の盾は金色の破片となって四散した。その光は、母体のコアを覆っていた赤い膜を瞬時に焼き払った。
「これで終わりだ…!」ラムが叫んだ。
しかし、母体のコアは崩壊する直前、最後の力を振り絞って、空中に巨大なホログラムを投影した。それは、ユーリの解析結果にあった世界地図だったが、今回は、そのすべての都市が、たった一つの巨大なシンボルへと糸で繋がれていた。
そのシンボルは、地図のどこにも存在しない、巨大な人工島を示していた。そこが、裁縫師の集団の真の**『総本部』**だった。
『我々の最終的な**『収穫』**は、間もなく訪れる』という、教授の声のような合成音声が響き渡った。
フォンは、自分の戦いがまだ始まったばかりであることを悟った。彼はラムと目を合わせ、静かに頷いた。霧の街の絶望、太陽の都の欲望。そして次なる舞台は、そのすべての糸が集束する、世界の中心だった。フォンとラムは、**『裁縫師の集団』**を完全に終わらせるため、新たな最終決戦の地へと向かうことになる。




