魂を縫う者

「死者は語らない。だが、彼らが遺した『感情』は、生者よりも雄弁に叫び声を上げている」

常に鉛色の雲と濃霧に覆われた巨大都市、「霧の街（フォグ・シティ）」。

この街の影には、科学捜査では解明不可能な凶悪犯罪が蔓延っている。密室での変死、内臓が抜き取られたかのような衰弱死、そして鏡の中から忍び寄る影……。

人々はそれを都市伝説と笑うが、警察の一部は知っていた。それが人間の歪んだ欲望から産み落とされた怪異――『特異点（アノマリー）』の仕業であることを。

【ストーリー】

通常の警察組織が手出しできないこの超常的犯罪に対抗するため、極秘裏に設立された組織があった。

その名は「S.I.U 4（警視庁異常犯罪対策課・第四班）」。

この班に所属するチャン・フォン（陳風）は、17歳にして「特別顧問」の肩書きを持つ少年だ。

常にノイズキャンセリングヘッドホンを身につけ、大音量のロック音楽で外界を遮断する彼には、ある呪われた才能があった。

それは「死者の共鳴（ネクロ・レゾナンス）」。

彼は幽霊を見ることはできない。しかし、死の瞬間に遺された強烈な感情――恐怖、絶望、憎悪――を「色付きの煙」として視覚と嗅覚で捉え、被害者の最期の記憶を追体験（ダイブ）することができるのだ。

【事件：縫合される魂】

物語は、ある古いアパートの一室で起きた不可解な「密室笑死事件」から幕を開ける。

被害者は死の直前、テレビの画面越しに何かを見て笑っていた。

現場に踏み込んだフォンと、彼の相棒であるベテラン刑事・ラム警部は、そこで戦慄の光景を目の当たりにする。

空間を切り裂く赤い糸。鏡から這い出る、口を縫い付けられた異形の怪物。

そして、フォンの脳裏にフラッシュバックする、不気味に微笑む制服姿の少女の影。

「見つけた……」

闇の底から響く声は、5年前にフォンの家族を惨殺した犯人へと繋がるミッシングリンクなのか？