理解が追いつかない!?
その後、俺達は「かわせみずな」の漢字の訪問顔が得た。苗字の「かわせ」は 川瀬 でいいとして、下の名前の方は――
みずなの「みず」は安直だが「水」でいいとして、「な」の方は……
どうするかな? 俺はそう思い、水那の方を見る。
見た目も相まってだが、髪も本当に綺麗だな。そう言えば、漢字の「那」には「美しい」とか「美しく育って欲しい」という意味合いもあったはず。
なら――俺はスマホを取り出し、「かわせみずな」を漢字変換した。
「漢字はこれでどうだ」
川瀬水那――俺のスマホの画面でその漢字を水那に見せた。
「かわせみずな、て読むのね! 漢字はよくわからないけど、いいと思う!」
水那もそう言って嬉しそうな顔をしている。それを見た俺は――
よし、これで決まりだ、と内心思った。
「聞きたいんだが、水那はいつから存在……で言えばいいのか? いつからあの場所にいるんだよ?」
俺は疑問を投げかけた。正直、神様かは置いといて、人間では無いことは明確だったしな。
「そうね、人間の言葉で言う『生まれてから』て事なら……。貴方達が『除夜の鐘』て呼んでる鐘の音を180回は聞いたわ。だから180年前って事かしら」
つまり180歳ってこと? 180年前って言えば、やっぱり江戸時代だな。
「昔は貴方を助けた付近にも人がそれなりにいたわ。そこで子供達に混ざって水切りや魚を捕まえたりしたもの。でも少し経ってから、私を創った……。いいえ、人間に例えるなら『生んだ』って言った方が正しいのかしら? まぁ私を生んだ、貴方達で言う母親に、人間とは極力触れ合うことを禁止されたの」
彼女は途中から、寂しそうに語っていた。
え? ちょっと待てよ。触れ合うこと禁止? 俺達のこれは大丈夫なのか?
「え? 今は大丈夫なの?」
「知らないわ。そのことを言った神は、この数十年見てないもの。ただ、私は私を生んだもう一人の神には毎日心配されるから、帰ってるの」
もう一人? 神にも見た目的にも性別があるのだろうか?
でもどうやって作るの? 確かにとある宗教の神は人間との間に子供作ってるって話を聞いたことあるけど!
てか神が子の心配なんて……神も親バカになるの?
「ねぇ、何かいやらしいこと考えてない? 神を創るって言っても、人間が子供を作るのとは訳が違うの。お互いの神力を合わせて創るの」
うーん? 要は神の力を分け合って創るってことか? 理解が追いつかないなぁ……。
「なんで、その言った方の神は最近見てないんだ?」
「それはね。この国――日本の神々の長が私の父親みたいな神なんだけど、長が言うには、この地域に昔信仰されてた山があったの。で、その山に住んでた神が私の母親に当たる神なんだけど、数十年前からその山を削り始めたのよ。人間がね。その行為に怒って、山にいた神はどっかに消えたの」
日本の神の長……。確か神の住んでる所にも、地球の国々みたいに国境線みたいなのがあるだけ。
それに削れてる山? あ……あの山か。確かに削れてるよな。俺は地元にある、この辺で一番大きな山を思い浮かべていた。
そう言えば、じいちゃんも昔言ってたよな、あれ本当だったんだ。
しかし神がどっかに消えるものなのか? 別の山に行ったのかな?
「神が怒るって、天罰とか下さないの? そもそもその長の神に居場所聞けばわかるんじゃないのか?」
「神の天罰なんて、相当やばい事を人間がやらない限り起こせないわよ。例えば地球そのものを壊そうとかしない限り。それと神の奇跡もそうよ。本当に人間全員がそう思わない限り無理ね。個人の小さい願いで、それに見合う強い信念に応えられるけど!」
なるほど。要は過剰な干渉はしないって事か。
俺の熊に襲われた時に発した「助けて」は、小さい願いって事なのだろう。
「それと、居場所は長でもわからないらしいの」
長でも知らないのかぁ。
「それでね、貴方の場合は近くに私が居て良かったわね! 私が近くに居なかったら、貴方の願いは届かなかったわよ! 今は周辺に居る神は私くらいだし!」
水那は胸を張って言った。
水那が居なかったら死んでたのかぁ。そうなら水那には感謝してもしきれないなぁ。命の恩人だし。
それから色々な話をした。神にも人間の会社みたいに階級がある事。水那は一番下の階級に当たるらしい。一番上が創造神なんだとか。え? ゼウス?
あと、この宇宙はその創造神が1人なのが寂しくて、別の神を創った時に生まれたとか……いきなり話が飛躍しすぎ。
簡単に言うと、この地球には各宗教ごとにそれぞれの神の長がおり、その長達の上が創造神らしい。
はぁ~、よくわからんけど……。
あと、地球以外の惑星にも知的生命体が存在する惑星があって、それぞれに神がいるとか?
よし、考えるのを放棄しよう。理解がほんとに追いつかないし。
俺からは現代人の暮らし方や文化、昔と違う事などを教えた。特に水那は学校の話をすると、「私も通いたい」「もっと人間と接したいわ」など、学校の話題には何かと興味津々だった。
創造神と一緒で、水那も寂しがり屋なのか?
と、そう思ってると――
「あ! そろそろ帰らないと。じゃあまたね、潤!」
「あぁ、またな、水那」
俺がそう返すと、水那は嬉しそうな顔をしたあと、例の如く光を発し、その後消えた。
うーん……夢みたいなのに、最後は自然に対応できたなぁ。
俺は水那が消えたあと、そう感じていた。




