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田舎神の武者修行!?  作者: たぬききち
5/9

ミズナ

「しらなぁふぃ あいなに こんなたべものが――」


「食べながら喋るなよ」


ミズナギは、母さんが出前で取ってくれたピザやポテトに夢中だった。

結局、母さんにはミズナギのことを「学校から配布物を届けに来てくれた同級生」と説明した。


……まぁ最初は。


『あんた、女の子を部屋に連れ込んで何してるの!?』

『そんな子に育てた覚えはないわ!』

『おじいちゃん、ごめんなさい……育て方間違えたかも……』


――などと大変な騒ぎになったけど。いや、本当に大変だったんだ。


なんとか誤魔化し、最終的にはピザを俺たちに頼んでくれて、母さんは仕事へ。

元々午後から仕事だったけど、俺の退院に合わせてシフトを調整してくれていたらしい。


「だってこんな食べ物食べたことないんだもん! ぴざー?って言ったっけ。なんでこんなに美味しいの? それにこの芋の揚げ物! 衣がないけど……うまいわぁ〜!」


幸せそうに食べるミズナギを見て、ふと疑問が浮かんだ。


「なぁ……神様って言ってたよな? 神様も飯食わなきゃダメなのか?」


「神は別に食べなくても生きていけるわ。人間でいう“お腹が空いた”も“もう食べられない”もないの。ただ……そうね、人間の言葉で言うなら“満足”かしら。満足するまで食べられるの」


「……いや、それもう満腹と一緒じゃね?」


要は、空腹はないけど「食べたい」って気持ちはあるってことか。

つまり神様にも“欲”があると。


……まぁ、でもこんなに美味しそうに食べてるなら別にいいか。


気付けばミズナギは24センチのピザを一人で丸々平らげていた。


「ねね、まだ食べないならちょうだい」


まだいけるのかよ。


「おい、食べすぎ……まぁでも半分なら」


俺は自分のピザを半分渡した。入院してたせいか、今はあんまり食欲もないし。


「わーい!」


嬉しそうに受け取って、またかぶりつくミズナギ。……本当に神様か?


ふと気になって、俺は聞いてみた。


「なぁ、普段ミズナギはどこに帰ってんだ?」


「え?」


手を止め、きょとんと俺を見る。数秒考えてから――


「あぁ、人間は知らないわよね。“天界”って言えばわかるかしら」


「天界?」


「そう。でもそこに全ての神が集まってるわけじゃないわ。人間の国と同じように“境界線”があるの。ほら、この日ノ本では神道や仏教が信仰されてるけど、南蛮じゃ違う宗教があるでしょ?」


「南蛮……って久々に聞いたな」


「私たち神々の姿や名前は、人間の文化や想像で変わるの。もし日ノ本に南蛮の宗教が広まっていたら、私の姿もきっと違ったわ」


なるほど。幽霊の姿も国によって違うしな。日本だと長髪で白い服が定番だし。


……でもお前はどう見ても“巫女服姿の女子高生”にしか見えないんだが。


「てか、今は“南蛮”とか“日ノ本”とか言わないぞ。南蛮は“外国人”だし、日ノ本は“日本”」


「そうなの? ……ふぅん。じゃあこの食べ物もそうだけど、さっきの四角い箱みたいなの(スマホ)も知らなかったわ。それに“浅見潤”って名前も聞き慣れない。私が知ってる人間の名前は兵五郎とか七兵衛とか……女性ならお菊やお花とか」


……やっぱり。

この子、江戸時代くらいから交流が止まってるんじゃ……?


俺が考え込んでいると、ミズナギは俺のピザまで平らげてから、ふと思いついたように言った。


「ねぇ! 私にも“今風の名前”つけてよ!」


「は?」


きらきらした目で期待される。……いや、俺なんかが神様に名前つけていいのか?

“〜みこと”とかの方がいいんじゃ?


「私も人間みたいな名前が欲しいの!」


……あ、人間みたいなのでいいのか。


「じゃあ……」


少し考える。ミズナギ。――“みずな”。

下の名前はそのままでいいか。苗字は……川の神って言ってたし……“川”か……


そのとき、近所の川祭りを思い出した。


「“川瀬水菜”ってのはどうだ?」


「かわせ……みずな。いいわね! 川の神である私にふさわしい名前!」


よっぽど気に入ったのか、何度も口にしてはにっこり笑う。


「よかった、気に入ったみたいで」


「うん!ありがとう!これからもいろいろ潤に教えてもらうわ!」


「……これからも?」


「そうよ! 私、人間の友達できたの初めて。これからもよろしくね!」


にっこり笑う彼女に、不覚にも見惚れてしまった。こんな顔で言われたら断れねえよな。


「……まぁ、暇があればな」


「ありがとう!」


……俺は思った。

もしかして神様って、みんなこんな感じなのか?


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