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田舎神の武者修行!?  作者: たぬききち
4/9

訪問

神様を名乗るミズナギ――あの子と話してから数日後。


俺はついに退院した。脳の検査でも特に問題はなく、障害も残らないだろうと診断されたのだ。


「やっぱり……家が落ち着く」


そう呟きながら自室のベッドに体を埋める。

ふと病室でのやり取りを思い出す。――ミズナギ。退院したら家に来る、と言っていたけど……本当に来るのか?


もし来たら正直面倒だな。確かに命は救われたが……。


コンコン。


ノックの音と共に母さんが部屋に入ってきた。


「潤、学校は来週からでいいの?」


「うん。明日は金曜日だし、一日だけ休むよ」


別にいじめられてるとか友達がいないとかじゃない。ただ、あと一日なら休んだ方が楽だと思っただけだ。


「はいはい」


母さんはそう言ってドアを閉めて出ていった。


……そういえば入院してて忘れてたけど、もう夏休みはとっくに明けてたんだよな。


「なんか、家に帰ってきたら気が抜けたなぁ……よし、寝よう」


そう独り言を言って、そのまま眠りに落ちた。


―――


「ね、起きて。……起きてってば」


「うぅ……」


誰かに呼ばれ、体を揺すられる。まどろみの中で目を開けると――そこには。


「あ、あんた……!?」


俺は思わず叫んだ。


「ちょっと!いきなり叫ばれるとびっくりするじゃない」


「いやいや、なんでここに!?」


「貴方が退院したら家に行くって言ったでしょ? それに、こんな時間に寝ると夜眠れなくなるわよ」


「え、えっと……そもそも、どうやって俺の家を知ったんだ?」


「理由のわからないことを言うわね。神なんだから当然でしょ。……まあ種を明かすと、貴方を助けた時に“印”をつけておいたの」


「い、印!?」


なんだそれ。呪いじゃないだろうな……


「母さんに見つかったらどうするんだよ」


「大丈夫よ。部屋に来てから実体化したもの。窓の隙間から入ったの」


「実体化……窓の隙間……」


本当に神様なのか?いや、下手したら座敷わらしか貧乏神とかの可能性もあるぞ……。


とりあえず、彼女が来た理由はわかる。


「えっと、ミズナギ? 悪いけど、今は果物とか何もなくて……」


「えぇ〜残念」


しょんぼりする彼女。……なんか帰ってもらえそうにないな。


「だから今日は――」


と言いかけたところで、彼女は笑顔に切り替わった。


「じゃあ、一緒に遊びましょう! 夕刻まで少ししかないけど」


「えっ?」


「近くに川があるでしょ。そこで水切りやろうよ! 私、こう見えて得意なの」


神様が水切りって……。


「でも川遊び以外でもいいわね。そういえば昔、人間の子供達が“かごめ〜かごめ〜”って遊んでたの、見たことあるわ」


「かごめかごめ!? いや俺が小さい頃でもやってる子見なかったけど……」


「それにしても最近の人間の服装、変わったのね。前に見た時は薄い布を重ねた着物みたいなのだったけど」


……小袖のこと言ってるのか?江戸時代!?


「まぁ遊んでもいいけど、その服装だと目立つぞ。神社か寺以外じゃ」


俺は巫女服姿の彼女を見て言った。どう考えても目立つ。


「そうなの? じゃあ今はどんな服装が一般的?」


「えっとな……」


俺はスマホを取り出し、旅行の時に撮った家族写真を見せる。


「ほら、妹のこの服装が一般的」


「え、なにこれ!? 鏡じゃないのに映ってる……しかも留めておけるなんて!」


服よりスマホに興味津々かよ。


「とにかく、今はこういう格好が普通なんだ」


俺は慌ててスマホをしまった。


「なるほどね」


彼女は目を閉じ――病室で見た時と同じように光を放つ。


「ま、眩しい!」


思わず目の前に手をかざす。やがて光が収まり、彼女の姿が――


「……おぉ」


そこにいたのは、妹と同じワンピース姿のミズナギだった。


「なんか少しひらひらしてるわね。でも動きやすい」


くるっと回って見せる彼女。


長い黒髪に白いワンピース。……正直、思わず見惚れた。あとは麦わら帽子でもあれば完璧だ。


――ガチャッ


突然、自室のドアが開いた。


「さっきから何を――」


母さんだ。


……はぁ、どう説明すればいいんだよ、これ。


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