信じるか信じないか
あの後、俺は麓の病院の目の前に怪我をした状態で倒れていたらしい。
幸い全身打撲と軽い脳震盪で済んでいたみたいだ。
まぁ目を覚ましたのは翌日だったが。。
念の為、脳の検査をする為に数日間検査入院する事になった。
親には何があったのか聞かれたが、熊に襲われて転んでから記憶がないと説明した。
まぁ本当に記憶ないし、最後に見た女の子は幻覚だったのかもしれないしなぁー。
おと俺が帰って来ない事を心配した親が俺を探しに水源近くを捜索したら、近くの木の周辺に何か大きな物が勢いよくぶつかった跡があったらしい。
俺は夜、静まり返った病院のベットで寝ながら、あの時の事を思いだしながら考えた。
最後に見た女の子がもし幻じゃぁなかったら、その子が俺をここまで運んだのか?
いや、流石に女の子が俺を抱っこ又はおぶりながら山道を歩いて麓の病院まで来れるか?
それに確か、あの時熊は吹っ飛んで。。。
そんな事をブツブツ口に出して考えてると
「良かった、無事だったみたいね」
「うわぁー」
俺は驚いて声を出してしまった。
そう、俺の目の前にあの時の女の子が居たのだ
「ねね、もしかして私の事忘れたの?まぁ無理もないかぁ、貴方私が助けた後気を失ってたしね」
「でもお礼は欲しいは!そうね、酒が良いわね、私日本酒が好きなの」
「あとは果物ね、イチゴとかバナナとか、なんならハチミツでもいいわ!」
「それから、それから、この辺の人達が食べてる芋を衣で包んで揚げてみその…」
と一方的に話してくるが、俺の頭にその話の内容が全く入らなかった。
「いやいや、待ってくれ。君はどうしてここに居るの?」
「もう夜だし面会だとしても入れないだろ」
「それに君、あの時の。。。」
俺は正直混乱していた。幻だとほぼ思っていた|女の子が目の前に、しかも突然現れたのだから。
見た目は俺と年齢はさほど変わらない。黒く綺麗なロングヘアーで、その髪型に似合う巫女服を着てる。
女の子は俺の動揺してる姿を見ても
「あ!思い出してくれた。そう、貴方を熊から助けここに運んだのは私よ」
「思い出したのなら日本酒くれるわよね。あと食べ物も」
自分のペースでまた喋り出していた。
いや、日本酒てどう見ても俺と同じ位の歳に見えるんだが。
てかなんで日本酒?
「いやいや、助けてくれたのは感謝してるけど、お酒は20歳からでしょう。その前に君はなんなの?その姿からして巫女さん?えっと、ほら名前とか」
そんな問いかけに彼女はにやにやしながら
「まず、人の名前を聞く時は自分からて知らないの〜?まぁ私は人ではないけど、まず貴方が先に答えなさい」
俺はそう言われて少し口ごもりながら答えた。
「あ…あざみ…浅見潤」
彼女の勢いに押されてカミカミになってしまったが、俺は名前を答えた。
そう、俺は浅見潤。
てかこの子、人ではないとか言った?
俺の名前を聞いた彼女はなぜか胸を張って答えた。
「私はミズナギ。立派な神様になるためにこの周辺で修行してるの。人間の巫女とは違うわ」
言い終えても、彼女は胸をまだ張っている感じだった。
?????????
俺の頭の中がはてなで埋め尽くされた。
カミサマ……?あの神様!!!
「あの時も何時も通り綺麗な水で遊ぼうとしてたら、“神様”て近くで聞こえたから、聞こえた方に向かったら貴方が熊に襲われたの」
うん?水で遊ぼうと?どういう意味だろうとも思ったけど。
そうか、熊に襲われた時、“神様”て言ったっけ。
でもそんな大きな声で言ったつもりはないけど。
「で、私は貴方を……浅見潤だったわね!潤でいいっか。そう、私は潤を助けるために熊を川の水を使って気絶させたの!」
「気絶させたあとは山の奥に置いてきたわ!」
ドヤ、みたいな顔をしてるよ。
「ミズナギだけ?ミズナギは超能力が使えるて事?」
それを聞いた彼女は首をかしげて
「超能力てより、私が神様だからよ。私は川の神様よ」
なぜか“神様”と言ったあとは得意げになるみたいだ。
しかし神?川の?川に神様が居るの?
「いや、神様てこう威厳とか神々しさとかあるんじゃないの?」
「威厳はともかく、何よ私が神々しくないて言うの。そもそも神々しいって、もしかして体が光ってれば神々しいとでも思ってるの!そんなのホタルよ」
ホタルに謝れよと思った。
なんとか少し頭も回って来たみたいだ。
とりあえず助けてくれた事は事実だろうなので
「ごめんなさい。それと助けてくれてありがとうございます」
謝った。それを聞いた彼女も少しは機嫌を治したらしい。
「そうそう、感謝してるならよし」
「まぁ未成年だから酒は買えないけど、退院した後に果物なら買って行くから。どこに持って行けばいい?」
俺はもう彼女を神様だと信じ始めていたみたいだ。
確かに熊から助けてもらった時に、水が勢いよく飛んで来て熊を吹っ飛ばした記憶もあるし。
彼女が突然現れた事とも説明がつく。
ただ思い描いていた神様とは違うような……
「そうね!あら、今度あなたの家に行くわ」
「え?家に」
「その方が早いわよ!だからいっぱい果物を用意しといて。あと芋を衣つけて揚げるものも……」
彼女は途中で言葉を止め
「あらいけない。そろそろ帰らないと怒られちゃうわ!じゃぁまた、貴方が退院した後に」
そう言い終えると、彼女から強い光が放たれ病室の中が包まれた。
てか光るじゃん、ホタル以上に……
光が消えると彼女は消えていた。
まるで白昼夢を見ていたかのようにも感じた。
今は夜だけど。
「家にくる?」
そんな疑問は残った。




