プロローグ
「あちぃー」
そう呟きながら、一人の高校生の少年が歩きながらガリガリするアイスを食べている。
年々、夏の平均気温が平年より高く、そして長くなってると感じる今日この頃。
もう9月になるのに、全く昼間も夜も涼しくならないことに、その少年はイライラしてる様に感じる。
「小学くらいの時は、こんなにも暑さ感じたか〜」
少年は片手に、母親にお使いを頼まれ買った、エコバッグに入ったおかずを見ながら――
(今晩はさんまかー)
と思いながら、もう片方の手に持ったガリガリするアイスを食べながら家に帰っていた。
(今年、さんまこっちの方でもスーパーで売り出すの早いな〜)
少年の住む県には海が無く、さんまが売り出されるのはいつも9月の中旬。
北海道とかはもっと早いのだろうか? と恐らく少年は思っている。
ふと目線を下にやる。今、少年は自宅近くの橋まで帰ってきた。
その橋の下の川を覗き込むようにして川を見た。
少年は2ヶ月前に行われた祭りのことを思い出していた。
少年の地域では、夏に神輿を担ぎながら川を渡るお祭りがある。
(そういえば、小さい頃に何で神輿を担ぎながら川を渡るのか分からなくて、じいちゃんに聞いたっけ。)
小さい頃は「祭り=大勢で楽しむこと」くらいにしか思ってなかった。
実際、大きくなっても祭りは大勢で集まって楽しむ物だと思ってる。
ただ、大人になると、祭りは昔の人が神様に一年の豊作を願ったり、神様にお礼をするなど、昔の人達が行ってきた伝統だと知り、ただ楽しむ目的で始まったのではないと知ることになる。
だけど――
まぁ、祭りは楽しむのが一番だと思う。
(神っているのかなぁ。)
もう神様など信じない少年だが、小さい頃は祖父に祭りの伝承などを聞いて信じていた時期も少年にはあった。
(まぁ、もしいたら、この暑さをどうにかしてくれ〜。)
少年は、今一番思う願いを思った。
「ただいまー」
少年は家に帰宅し、エコバッグをリビングにいた母親に手渡した。
「おかえりー やっぱり今年はニュースでやってた通り、さんま売るの早いねー」
母は少年から受け渡されたエコバッグの中身を見ると、そう言った。
「さんま、そんなに食べたかったの? いつも高いって言って買わなかったくせに」
少年はそう母に言い、リビングのソファーに寝転んだ。
「あんたが生まれて少しくらいの時は、さんまは一匹100円くらいだったのよ。今じゃあ一匹300円とか、高いやつだと1000円近くするのよ」
母は昔を惜しむように言った後に――
「でも、今年はさんまが一匹200円。まぁ、まだ昔より高いんだけど、こっちは海がないから仕方ないわねー」
少し嬉しそうにそう言った。
「えぇー」
ソファーでスマホをいじりながら、少年は適当に返事を返した。
「そうそう、明日はじいちゃんの墓参りだって忘れないでよ」
母はさんまをさっそく調理しながら言ってきた。
「わかってるよ」
少年はそう返しながら祖父のことを思い出し、続けていった。
「なぁ〜、神様って居ると思う?」
少年はスマホの画面を見ながら、そう呟いた。
「はぁ〜? 何言ってるの? 暑さにやられた?」
母は自分の息子の発言が面白かったのか、少し笑い声で言った。
「なんだよ…… もう」
少年は少し顔を赤らめながら、なぜその様な事を口走ったのか考えた。
「ごめんごめん。まぁ、ただおじいちゃんは信じてたと思うよ」
母は少し懐かしそうな声で言った。
祖父は母からしたら、自身の父親だ。
子供の頃のことでも母は思い出していたのだろう。顔も少し、懐かしそうなものを見る顔になっていたから。
「ただいまー 今帰ったよ」
ふと、そんなやり取りをしてると、少年の父親が帰ってきた。




