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わたしを救った百合迫る後輩との同居生活は想像よりもずっと甘い。  作者: 藤白ぺるか


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第13話 ゲームしましょう

「ゲームしましょうっ」


 会社から帰宅したあと今日も落合さんの家にお邪魔して、夕食を食べさせてもらったあとのことだ。

 突然落合さんがゲームをしようと提案してきたのだ。


「ゲームって何? テレビゲームとかないみたいだけど」

「じゃじゃーんっ」


 するとどこからか取り出してきたのはトランプが入った箱だった。

 そうして落合さんが箱からトランプを取り出すとシャッフルをはじめた。


「大富豪、神経衰弱、ババ抜きの三本勝負です。先に二章した方が何でも一つだけ言うことを聞く、というのはどうでしょうか?」

「……何でも?」

「はいっ」


 目を輝かせながら話す落合さん。でも、裏がある気しかしない。


「あ、もしかして先輩負けるのが怖いとか? ああ、私ってこういうゲーム強いですからね〜」

「っ! トランプなんて運でしょ。強いとかないよ」

「その運が強いってことですよ♪ どうします?」

「…………わかった、やる」


 結局、彼女の口車に乗ってトランプ三本勝負をすることになった。


「落合さん……自分にしかわからない印とかつけてないよね?」

「まさか〜っ! 先輩も触ってわかると思いますけど、これ新品ですよー?」

「た、確かに……」


 わざわざ私とトランプするために買ったのだろうか。

 傷や汚れは全くなく、落合さんの言う通り新品に見えた。


 そして現在、大富豪に負けた私は、既にリーチがかかっていた。

 神経衰弱も落合さんがリードしている。このままでは負け確定だ。


「…………これよっ……やった!」

「先輩やりますねぇ……」


 揃った数字のカードを当てることができて、私のペアが増える。

 ただ、状況は芳しくない。


「……っ! きたっ! よっっし!!」

「ああん……あと一歩だったのにぃ〜」

「どうよ、見た? 勝負はまだこれからよっ」


 私はガッツポーズをとり、勝利を決めた。危なかったが終盤で逆転したのだ。

 つまりこれで私と落合さんの一対一となった。勝負は最後の一つに委ねられた。


「じゃあ最後はババ抜きですね〜」


 二人だけのババ抜きなんてあまり見ない。

 ただ、最初から揃いまくっていたので、手札を捨ててある程度の枚数からのスタートとなった。


 次々と引いてはペアを揃えて捨てる。

 それを繰り返していき、最終局面。私も落合さんも残り一枚を残しての取り合い。

 ジョーカーは落合さんが持っている。


 二枚あるうちのどちらかがジョーカー。

 私は落合さんの目を見ながらそれを探り、そして――


「っ!」


 ジョーカーだった。

 落合さんの顔を見るとニヤリと笑っていた。


 私は手札をシャッフル。

 落合さんの前に差し出した。


「どっちかな〜」

「…………」


 落合さんも私の様子を見ながらどちらがジョーカーなのかを探る。

 しばらく悩んでいたが、覚悟を決めてスッと一枚取った。


「ぁ…………」

「やったぁ〜〜っ! 大勝利〜っ!!」


 私は負けた。

 手元にはジョーカーだけが寂しく残っていた。


 いつの間にか熱くなっていたことにやっと気付いた私は、クールダウンするために、軽くコップの中に入った水をゴクリと喉に通した。


「あと一歩だったのになあ……」

「ふふんっ。私、運良いんですからっ」

「まあ、今回は……ね」

「じゃあまた今度リベンジ戦します?」

「…………うん」


 負けっぱなしではいられない。なぜか私は謎の闘争心が湧いていた。

 ただ、一つ忘れていたことがあった。


「先輩……トランプに勝利した人の権利、覚えてます〜?」

「お、覚えてるわよ……何をさせる気なのっ」


 そう、トランプ三本勝負の勝者には、相手に何でも言うことを聞かせられる権利があるのだ。私はそれを承知の上で勝負を受けた。


 すると目の色が変わった落合さんが、四つん這いで這い寄るように私に近づく。


「え……なに?」

「ここまでして、わかりません? 私の気持ち、知ってますよね?」

「さ、さあ……そんなこと言われても……」


 落合さんの気持ちはよくわからない。

 普通女性は男性が好きだし、私にはその気持ちはわからない。でも、落合さんはなぜか私をずっと気にかけていて、私を見る目も普通ではなくて――


「あ……ちょっ……」


 顔が近づき、吐息がかかる距離まで接近されてしまう。

 私は後ずさるも、背後にはベッドがあり、もう逃げ場はなかった。


「っ…………」


 私はぎゅっと目を閉じて、彼女からされる何かに耐えるようにして身構えた。

 しかし――


「あいたっ」


 おでこに軽い痛みが走った。

 デコピンだ。


「せんぱーい。何想像したんですかぁ?」


 そこにはニヤニヤしながらいたずらな笑みを向けていた落合さんがいた。

 何を想像してたって、それはあの、駅のホームでされたようなことを――


「そ、そんなこと……何も想像なんてしていな――んぅっ!?」


 最後まで言葉を続けさせらもらえなかった。


 しないと思っていたことをされていた。


 私の唇は落合さんの柔らかな唇で塞がれ、そして歯の隙間をこじ開けて舌まで侵入させてきた。


「んっ……んぅっ……おちっ……あいっ……んちゅっ……はぁっ……さんっ……だめっ……」


 肩を捕まれ、後方にはベッド。逃げ場のない私はただ落合さんの強引なキスを受け入れるしかなくて、ただただ蹂躙されていく。

 なぜか頭がぽわぽわしてきて、絡み合う舌の感覚だけが脳を支配する。


 いつの間に口臭ケアをしたのか、彼女の口の中はミントのような香りがして、それが私の舌に伝わってクールな味がした。

 最初からキスするつもりでゲームを提案したということだろうか。だから口臭ケアまでして……。


「先輩がいけないんです……んっ……何度も私の家に上がり込んで……それで熱くなった時には肌着になったりして……んぅ……はぁ……無防備すぎです……んちゅっ……」


 心のどこかで、駅のホームでの水の口移しはただの善意でやったものだと思い込んでいた。でも、今されているキスは、どう考えても私を恋愛対象として見ているキスだ。


 強引なのに優しくて、それでいて気持ちいい。

 いつの間にか私の舌も彼女の舌を迎え入れるように突き出し、それを咥えられる。


 あまりの気持ちよさに頭が沸騰するかのような気分になり、思考を手放す。


「ぁ……おちあいっ……さんっ……」

「え……? 先輩!? ちょっと先輩!?」


 唇が離れたと思ったら、すぐに私は床に倒れた。


「わっ……熱あるじゃないですかっ! もう、言ってくださいよ〜っ!」


 おでこに触れられた感触があった。

 すると落合さんがバタバタしながら、何かを探し回っている様子がぼんやりと感じられた。


「熱い……」


 直前までの濃厚なキスが記憶に刻まれながらも、次第に視界がぼやけていき、最後には意識を手放した。






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