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わたしを救った百合迫る後輩との同居生活は想像よりもずっと甘い。  作者: 藤白ぺるか


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第11話 初デート

 土曜日。


 今日は約束していた落合さんとのデート。

 どこに行くかなどは彼女任せ。


 とりあえず私はシャワーを浴びて、今はどんな服を着ていくのか悩み中だ。

 こうして外に遊びに出かけるのも久しぶり。少し前までは、平日の仕事が疲れ過ぎて家にいても寝倒すだけ……だから服装にも悩んでいるのだ。


「とりあえずこれでいっか……」


 久しぶりに身につけたこげ茶色のハイウエストスカートにミルク色のブラウス。アウターはベージュのコートに足元は黒のブーツ。耳元には赤っぽいピアス。秋らしいコーディネートになったはずだ。


 時間は午前十一時半。ランチするところからスタートする予定だ。


 私は玄関を出て鍵をかけた。


 ――ガチャリ。


 そのタイミングで隣から落合さんが顔を出した。そういえば、三つ隣の部屋だったか……。


「せせっ、せんぱいっ!!」

「な、なによ」

「どうしたんですかその格好!! めっちゃ良い! 可愛いですっ! いや、カッコいい!?」


 鍵を閉めるなり、私に気付いた落合さんがぐっと距離を詰めて目をキラキラさせた。

 下から上まで、じっくりと眺めるとその場でキャーキャー言い出す。本当にこの子は忙しない子だ。


「そりゃあ出かけるんだもの、これくらいのお洒落はするでしょう?」

「えー! 嬉しい! 私のためにお洒落ですか!? 橘先輩好きぃっ!」

「あなたって人は……っ」


 そういう落合さんも今どきの若者っぽい服装でお洒落をしている。

 黒のタートルネックに薄ピンクのアウター。私とは逆に全体的に明るい色で構成されている。


「私はどうですかー? 新品出してきたんですよー!」

「いいんじゃない? 私には着れないけど、落合さんはとっても似合ってる」

「やったー! ……今度これ着てみます?」

「何を言ってるの?」


 身長が低くて胸が大きいあなたと身長が高くて胸が小さい私。どう考えても色々合わないでしょうに。


「そういうの良いから、早く行こう」

「ですねっ! 楽しみっ!」


 そうして繁華街の駅へ向かった私たち。

 休日は人がごった返しているが、朝の満員電車ほどではない。


 向かった先は商業ビル。予約してくれていたらしく、若者に人気そうなカフェに案内してくれた。


「さぁーて、何にしますかねー!」


 テーブルにつくと、ワクワクしながらメニューを眺め始めた落合さん。私もメニューに目を落とすと、ここはハワイアン系のカフェらしく、ロコモコ、ガーリックシュリンプ、ハンバーガーなどがあった。


「先輩決まりましたー?」

「うん、大丈夫」

「すみませーん!」


 なんでも率先してくれる子だ。


「先輩からどうぞっ」

「私はロコモコとウーロン茶でお願いします」

「はい。ロコモコとウーロン茶ですね……!」

「私はアボガドハンバーガーセットとストロベリーパンケーキで! あ、飲み物はジンジャエールで!」


 店員さんがきて注文し始めると、落合さんがまだお昼だというのにランチと一緒にパンケーキを注文しだした。私はズッコケるようにガタンと椅子を揺らした。


「パンケーキはいつお持ちいたしますか?」

「ハンバーガーと一緒で大丈夫です!」

「かしこまりました」


 しかも食後じゃないだと……?

 本当によく食べるな。


 そうして約十分後、運ばれてきたメニュー。

 テーブルの前に並べられるとパンケーキがデカすぎて驚いた。一人で食べられる量じゃない。


「じゃあ、いただきまーす!」

「いただきます」


 私たちはランチをはじめた。


 もぐもぐと次々に口へ投入する落合さんは食べる時が一番幸せそうだ。私は食べるスピードはゆっくりな方なので、少し待たせてしまうかもしれない。でも彼女も私に合わせてくれているのか、思いの外ゆっくりだった。


「好き嫌いないの?」

「ないですよ! 好き嫌いなく育ててくれた親には感謝です!」

「そうなの。私も好き嫌いないから同じだね」

「嬉しいです! 何食べてもシェアできるってことですから。食の好みは交際が長続きするかどうかに関係してるみたいですよ〜」


 なんで今その話をぶっ込んだのか。

 私に向けて言っている、そうとしか思えない。

 まあ、私だって好き嫌いない人の方が良いなとは思うけど……。


「……ねえ、美味しそうに食べてるところ悪いけど……落合さんって私のこと知ってるの?」


 今日彼女とのお出かけに付き合ったこと。

 それはこの疑問も解消したかったからだ。


 彼女は私のことを知っているのか、なぜ同じマンションに住んでるのか、なぜずっと優しくしてくれるのか……。


「それ聞いちゃいますー?」

「聞きたいから聞いてるの……ここまで色々されて、何かないわけないから」

「ん〜、そうですねえ……知ってはいます」

「やっぱり! なら――」

「――でも、私が誰なのかは当ててみてくださいっ」


 答えがわかる、そう思っていた時、落合さんは私の言葉に被せるようにして遮った。そのまま当ててくださいなんて言って……こんなに近くで見ても全然わからないのに。


 でも、なんとなくどこかで見たような気がする。

 落合さんの家で目覚めて、そのまま昼過ぎまで寝て起きた時にかけていた眼鏡。あの眼鏡がどこかヒントになりそうなんだけど、それ以上は思いだせない。


「…………今はわかんないや」

「ふふ。徐々に私のこと知っていってくださいね〜」


 落合さんは私のことを知っている。でも私は彼女のことを知らない。……今は気にしてもしょうがないか。


 フライドポテト付きのハンバーガーを平らげた落合さんはパンケーキもそのまま胃袋に収め、満足した表情でお店を出た。


 すると次に向かったのは、アクセサリーショップだった。


 私の趣味と彼女の趣味は合わないと思っていたのだが、気を遣ってくれたのかそれなりに大人っぽいお店に入ってくれた。


「先輩はこういうおっきなピアスが似合いそうですよね〜」

「そう? 私が持ってるのは確かに小さいのばかりだけど……それみたいにぶらさげるタイプってぶらぶらして気にならない?」

「気にはなるかもですけど、すっごい顔が映えると思いますよ〜。ちょっとつけてみてくださいっ」


 落合さんに言われ、試着してみることになった。

 手渡されたものは、ゴールドの細いチェーンの先端につけられていた琥珀色の宝石がついたピアス。本物ではないだろうけど、デザイン的にはお洒落だ。


「……どう?」

「キャーっ! 先輩素敵ですっ!」


 ぱちぱちと手を叩きながら私のことを称賛する落合さん。

 ……似合ってるのかな。


「黄色ね……」

「あんまりお気に召しませんでした?」

「つけたことのない色だったから、不思議ってだけ。普段はシルバーや赤辺りだから」

「へえ〜! 先輩って多分イエベ秋ですよね? 似合ってると思いますよ!」

「パーソナルカラーとか全然わかんない……」

「でも今日のコーディネイトとかも先輩の色に合ってると思いますし、センスあるんですよっ」

「そうなんだ。原色よりアースカラーとかくすんだ色の方が似合うなとは思ってたけど」

「さすがは先輩ですっ」


 色々と褒められてしまった。

 なんとなく落合さんなら、何でも褒めてくれそうな気はしているが、これはこれで悪くはない。


「とりあえずこれは保留にしておいて、落合さんのも見ようよ」

「いいんですかっ!?」

「うん……お世話になったし、一個買ってあげる」

「うぎゃああっ!? プレゼントですか!?」

「お礼ね」

「嬉しいですっ!!」


 そうして落合さんのアクセサリーを選ぶことになったのだが、彼女はブルベ夏というパーソナルカラーらしい。

 選んだのはライラック色のピアス。薄紫の宝石がついたピアスだった。しかも私が試着したピアス同じ形だった。


「先輩とお揃いですね〜っ」

「狙ったでしょ……」

「もちろんっ」


 結局私も琥珀色のピアスを買ってしまい、そのために落合さんとお揃いのピアスになってしまった。

 今日は彼女へのお礼をしたかったので、嬉しそうな顔をしてくれるのは良かったけど、お揃いは少し恥ずかしい。


 と、アクセサリーショップを出て歩いている時だった。


「――あれ、ゆずっちじゃんっ!」

「あ、ほんとだ! ゆずっち〜!」


 前方から歩いてきた二人の若い女性がこちらに向かって手を振ってきたのだ。


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