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1-071)入学式翌日は、壁ドン日和……!?

誤字脱字報告本当にありがとうございます。

拝見していて、あれ?これであっているのでは??と調べなおしたりと

自分の浅学を思い知る事態となっております。


こんな作者ですが、楽しんでいただける幸いです(^^

「庶民のくせにSクラスにいるからって、いい気にならない事ね!」


 ドォン!


 と、入学2日目に一階と二階の踊り場付近にて、お取り巻き? の数人の令嬢を引き連れた、ド派手なショッキングピンク色の髪をドリルのような見事な縦巻きロールにし、さらにド派手なピンク色の瞳をぎらっぎらに光らせたご令嬢から壁ドンなんてされている私は、異世界転生しちゃった庶民のくせに王立アカデミーに試験成績2位で入学してしまったソロビー・フィラン14歳(中の人はアラフォー)です、おはようございます。


 本当に怒り心頭! みたいな顔を向けて私に壁ドンしているご令嬢と取り巻き数名でできた壁の後ろを、おんなじ制服を着た人がちら見しながら通り過ぎていく。


 んだけど……誰も助けてくれないんだよねぇ。


 こちらを見てくすくす笑ったり、知っている人同士でひそひそとお話したりはしているけれど、この状況に口出ししてくる人がいない。


 いや~、貴族様って庶民にこんなに厳しいのね!


 なんて感心しながら見ていると、気に入らなかったのか一発平手打ちを食らう。


「早く謝りなさい! 私が忠告してあげているのよ!」


 まぁ痛くはないんだけど、初対面で平手打ちする貴族がいるとか、大丈夫かこの国。


 全面的にアカデミー退学したくなったなぁ。


「……。(はぁ……バカバカし。)」


 つい、ため息をついたらもう一発、今度は左の頬に平手が飛んできた。


「私が! 話しているときにため息なんて! 庶民は礼儀も知らないの!?」


 礼儀って、初対面の相手に平手打ち二発もいれるお前の方が礼儀知らないんじゃないのって思うのは間違ってないはず。


 成績だってカンニングしたんだろうとか、Sクラスの石を見せびらかしてるのかとか、ピンク令嬢と取り巻きで好き勝手を言って笑っているけれど。


 あ~あ、面倒くさいと、今度はちゃんと心の中でため息をついた。


 入学前に兄さまにも、ヒュパムさんにも気を付けろって言われてたけれど、そうかぁ、これがやっかみかぁ。


 でも、入学の次の日に来るって想像できる? 


 できないよね、そう言うの少したってからって言ってなかった? っていうか本当に面倒くさいよね。


 昔のいじめられっ子だった頃の私なら泣いちゃったり謝っちゃったりするんだろうけど、中身アラフォーだしな、叩かれても白魚の様なか弱い手(笑)じゃダメージもないし……怖くもクソもないよね。


 まぁ、すごくむかついたから殴ってやりたいんだけど、ここで手を出したら同じレベルだしなぁ。


 ほっとくか。


 そう心に決めて、無言で、表情も変えずに目の前のご令嬢を見る。


 まじまじと見て見れば、目の前のピンク令嬢、まぁまぁ綺麗って言われる方の部類のお嬢様なのだろう。


 けれど年に似合わず、しっかりこってり化粧しているせいか、吹き出物とか肌荒れ……手入れしなよ。


 あと、リボンは同じで黄色い石が付いている……てことはCクラスか。


 あぁ、いいところのご令嬢なら入学辞退するクラスっていうあのクラスね。


 しみじみと観察しているともう一発、平手が飛んできた。


「何とか言いなさい!」


 なんとかねぇ……。


「いや、Cクラスなんですね。」


「なっ!」


 聞かれた直前にじーっとそこを見ていたからだろう、ついそのまま口に出してしまった。


 とたん、火を噴くように真っ赤になる目の前の令嬢の顔。


「馬鹿にしているの!? あなたがいなければわたくしだってBクラスに!」


「いや、私がいてもいなくてもクラスは変わりませんよね?」


「なんですって! このっ!」


 ぐいっと、力いっぱい襟首をつかまれた時だった。


「おや? フィランじゃないか。」


 令嬢達の後ろから声が飛んできて、私以外の令嬢達が一斉に振り返った。


 ようやくこの茶番に救いの手が……と思ってそちらを見る。


 黄金の髪、黄金の瞳に、私とおんなじリボンに石を付けた凛々しい美少年……少年じゃないな、でも青年でもないなって感じの美丈夫が立ち止まっていて、その横に立っていた漆黒の美少女と目が合うと、ニコッと彼女は私に微笑んだ。


「フィラン、ごきげんよう。」


 助け舟じゃなくって、積極的にこの生活の元凶の人達が来たー!


 えーっと、たしかこの場合のあいさつは、おはようございます、じゃなくって……。


「ごきげんよう、カレンセン侯爵令息様、ザマーフエ公爵令嬢様。」


 私の口から出たその名前? 爵位? それともお二人のあからさまなロイヤル~な雰囲気のどれに反応したのだろうか。 しまったと顔色を変えて視線を泳がしているピンク令嬢に襟首をつかまれたまま、首の動く範囲で頭を下げて挨拶をする。


 そんな事より、昨日一杯練習したおかげで、名前噛まなかったことに私は自分を褒めたい!


「あら、フィランったら。 ジュラとルナークって呼んでってお願いしたでしょう?」


 口元に手をやってザマーフエ公爵令嬢はころころとかわいらしく笑う。


 が、昨日はお願いどころか、お話すらしてないなぁって視線を一瞬泳がしたら、黄金のカレンセン侯爵令息の視線を感じる。


 あーはいはい、話合わせとけってことですね~。


「……そうでした、大変失礼いたしました、ジュラ様、ルナーク様。」


「ふふ、よろしくてよ。 それよりもフィラン、もうじき朝礼の時間になるのだけれども、こんなところで何をなさっているの?。 そちらの方たちは……お友達というわけではありませんわよね?」


「えっと、教室に上がろうと思ったら急に……」


「こ、この子のリボンがゆがんでいたので直して差し上げようと思ったのですわ! ――あぁ!」


 苦しすぎる言い訳きたーーーーっ!


 この状況下でピンク令嬢が引きつったように笑いながら、つかんでいる手を放してゆがんでしまったリボンを治そうとしているけど、フイっと、私が一歩後ろに下がってしまったので宙をつかんでバランスを崩した。


 こけずに済んだみたいだけど、今、睨んだよね?


 この二人に言い訳しようとしてるのにその行動って、実は心臓鋼なの?


「まぁ! いじわるな方ね! このお二人の前で私に恥をかかせようとしてっ!」


「は?」


 ピンク令嬢が真っ赤になって私をまたにらみつけてきたけど、情緒不安定か? 大丈夫か?


「そんなつもりはないですけど……」


「私の善意をそんな風に返すなんてひどい! 聞いてください、ジュラ様! ルーナ様!」


 空ぶった両手を胸の前で組み、私の正面に立つ二人に泣きつこうとして振り返った彼女は、そのまま何も言わずに固まったようだ。


 ん? どうした?


 首をかしげてから、顔を上げてわかった。


 目の前には、視線だけは絶対零度の、和やかな笑顔の二人。


「ルナーク嬢は、こちらの令嬢に愛称で呼ぶことを許したのかい?」


「いいえ。 愛称どころか、名を呼ぶことも許しておりませんわ。 それどころか、わたくし、こちらのご令嬢のお名前もお顔も存じ上げませんもの、許しようがありませんわ。 ジュラ様こそ、こちらの令嬢に大切なお名前で呼ぶことをお許しになったのですか?」


「顔も名前も知らない令嬢にか? 冗談だろう?」


「お、お初お目にかかります。 私は、ツラッヨコ伯爵家のダイアナと申しますわ、仲良くしてくださいませ!」


 見つめあってニコニコと、絶対零度の声で会話しているところにピンク令嬢は私に背を向けてよろめきながら例の下半身耐久挨拶であるカーテシーをしていた。


 取り巻きの令嬢達も習ってカーテシーをしているが、お世辞にも上手とは言えないなぁ。


 よろめいてたらかっこ悪いんだね、この挨拶。勉強になったわ~と思いながら挨拶されている二人に視線をやる、と。


「……ヒェ……っ!」


 変な声が出て、慌てて口を両手で押さえた。


 絶対零度以下の視線と、笑顔の抜け落ちた顔で彼女を見ていた二人は、そのまま頭を上げた令嬢にあからさまにため息をついた。


「ジュラ様、フィラン、教室に行きましょう? 朝礼の鐘がなる時間ですわ、これ以上は時間の無駄です。」


「お待ちください!」


 そうだね、と頷いて足を進めた二人に早くおいでなさい、と、促されてその後をついていこうとすると、ピンク令嬢から腕をつかまれた。


 私の手をつかんだピンク令嬢は必至な顔で声を上げる。


「このような庶民の娘がSクラスなど……っ! このアカデミーの汚点になる前に退学にするべきです! そもそも他国はいえ、高位貴族であるお二人がお気に留める存在では……っ」


「お黙りなさいませ。」


 必死で訴える彼女の言葉を止めるように、さっと振り返った漆黒の美少女はしっかりと、


「汚点となるのはどちらでしょうか。 貴女も伯爵位の令嬢であるならば、まずはしっかりと礼儀と作法を身に着けてからおいでなさい。 身分に固執して私の大切な友人であるこのフィラン様に無礼を働いた貴女方の事はきちんと心にとめておきますわね。 それから、ひとつだけ、あなた方に御忠告申し上げます。」


 そっと私の肩に手を置いたルナーク様は、それは綺麗に微笑んだ。


「フィラン嬢は確かに庶民かもしれませんが、昨日の入学式で同席なさっていた後見人の方をご覧になりませんでしたの? ご両親にしっかり確認なさった方がよろしいですわ。 とくにドーウェイン伯爵令嬢は。 それでは、ごきげんよう。」


 いつの間にかピンク令嬢から解放されていた私の手をにぎって、にっこりと今度はかわいらしい笑顔を向けて歩きだしたその人と、やれやれといいながらも楽しそうに笑っている彼に引きずられるように、私たちは教室に向かって歩き出した。


 壁ドンから脱出成功!


 だがしかし!


 前途多難!


 アカデミー生活、完全に前途多難ですよー!


 誰か助けて―!

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