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1-025)ご飯休息と精霊の話。

 右から出来上がった順にポーションを一本ずつ並べていく。


「えーっと。 体力ポーション、魔力ポーション、解毒ポーション、解石ポーション、解麻痺ポーション、解眠ポーション、外傷特化ポーションに、骨筋特化ポーション……で、下級ポーションは全部出来上がり。」


 ギルドでもらった魔力ポーションと、私が作った魔力ポーションを一本ずつ手に取って、比べてみる。


「やっぱり私が作った方がきらきらしてるんだよなぁ……」


『フィランの魔力ポーションには私の加護が与えられている、当然のことだよ。』


 虹色の精霊、月のヴィゾウニルは当たり前だというように微笑んでいる。


「え? でも作った時にヴィゾウニルの加護―! ってやつ、やらなかったよね?」


『アルフヘイムが『七精霊のお気に入り』を付与しただろう? これ以降はフィランが僕たちに嫌われたりしない限りはこの加護はフィランが作るポーションには付与され続ける。』


 最初の時点でとんでもないスキルや、ステータスへの付与をもらってるみたいだし、後付けの付与が入ってきたし、今の私のステータス一覧が見てみたい!


 これは後でステータスを見る方法を探そう。


「よし、じゃあ次は塗り薬と飲み薬を作ろうかな?」


 ふん、と気合を入れるとまってまって~と、突っ込みが入る。


『フィラン、外はもう真っ暗だから、先にご飯食べたほうがいいかも!』


「え?」


 慌てて外を見ると、なんと外は真っ暗でびっくりする。


 店舗改修してくれた親方たちが帰っていったのが4時頃だった、で、今は……


 恐る恐る設置してもらっていた店舗内に設置してある大きくてかわいい時計を見る。


「く……九時……」


 完全に集中しすぎていたみたい。


 いや、思いのほか理科の実験みたいにポーションつくりが楽しくてはまってしまった。


 スキルとか魔法使うのが楽しすぎるのだ。


 だって前世から憧れてた魔法やスキルを使えてることが本当にうれしいくって止まらなかったんだもんなぁ。


「よし、ひとまずご飯かな?」


 魔力切れになっても困るしね。


『お手伝いする―!』


 ポンポン、とエプロンについた小さな素材の粉を払ってからエプロンを脱ぐと、わーい、と両手を上げてついてきたサラマンドラとアンダインと一緒にキッチンに入った。


 床下の保冷庫を開けて卵と塩漬け肉を取り出すと、ナイフで肉を切り、竈に火を入れてもらってからフライパンを乗せる。


 フライパンが適度に温まったら切った肉を投入して表面をしっかりカリカリに焼く。


 お肉を一番大きなお皿に取り出してから卵を二つ溶いてそのまま投入して……ポンポン、と形を整えたら、お肉の油でしっかり焼きあがったオムレツの出来上がり!


 後ろではアンダインが出したお水をサラマンドラが熱くしてくれてポットに注いでくれたので、そこに茶葉を入れる。


 ぐううぅぅぅ~。


 ふわっといい香りがしてきたら、盛大にお腹がなった。


「お腹減ってたんだなあ……。 そういえば、精霊はご飯食べる?」


 お皿にオムレツとお肉、買ってあったパンと果物を乗せながら聞くと、サラマンドラとアンダインは首を振った。


『フィランの魔力と、神の木からの力がご飯だよ。』


「なるほど。」


 晩御飯の乗ったお皿とカトラリーをもってテーブルと椅子のある店舗の窓際に移動すると、サラマンドラとアンダインは店舗内ににょっきり生えてる神の木の傍にいく。


 そこにはほかの精霊たちもいて、ふわふわとその周りに漂っている。


「なんでみんなそこにいるの? お店そんなに狭い?」


『違うよ~』


 眠そうに眼をこすりながら、グノームが笑っている。


『ここが一番気持ちいいの~』


「気持ちいい?」


 首を傾げた時には、グノームは木の根元でうとうとしているように見えた。


 先ほどまで元気だった子達も同様で、あれ? 精霊もねるの? と思っているとアルフヘイムが嘆息をつくようなしぐさをした。


『それより早く食べないと冷めてしまいますわよ? わたくしが話してあげますから、食べながら聞いてくださいまし。』


「あ、うん。 じゃあ、いただきます!」


 ポン、と手を合わせてからオムレツを一口。


 うん、卵の味が濃いのかな?


 すごくしっかりした味でいいけど、ケチャップがほしいと思いつつ、今度はパンをちぎって一口。


 これは! まさに転生者の先人の恩恵!


 柔らかくて甘くておいしいパン! あったかかったらもっとおいしいのかな? 今度どうにかして電子レンジの代わりを手に入れたいなぁ。


 これに何か乗せたらもっと美味しいよね……今度マルシェに行ったらジャムとかバターとかも探してみよう!


「う~ん、よし。」


 残りのパンにオムレツの残りと塩漬け肉を挟んで、バクっと食べた。


「おいしい! でも塩はあるから、コショウとケチャップほしい!」


『フィランはとてもおいしそうに食べるんですのね。』


 感心したようにそう言ったアルフヘイムは、いいことですわ、と笑った。


「なんでみんな眠そうなの?」


『今は日の精霊日の夜。 精霊たちの安息日なのですわ。 そして今日をつかさどるわたくしと、明日をつかさどるヴィゾウニルの一番力が満ちている状態。 グノームは昨日の担当だったのに今日はとても頑張りましたから、明日の朝までお休みに入るんですのよ。』


「おやすみ?」


 肉卵はさみパンをペロッと食べ終わり、ごちそうさま、と手を合わせながら聞くと行儀が悪い、と怒りながらもアルフヘイムは話してくれる。


『この世界の暦は、日・月・火・水・木・金・土で区切られていて、これが5つ回ると月が替わりますの。 月は宝石で例えられていて、金剛、白珠、紅玉、碧玉、翠玉、黄金、黄玉。 七つの精霊に七つの宝石になぞらえて、暦はできていますのよ。 今日は白珠の月、5回目の日の精霊日、となるのですわ。』


「日本の曜日と一緒だね。 あっちと連動している感じなのかな?」


『フィランの元の国ですわね。ラージュも同じことを言っていましたけれども、こちらの曜日は私たちが神様に作られた順ですわ。』


 紅茶を飲みながら考える。


「つまり、アルフヘイムが一番年上ってこと?」


『余計なことを言うのはこのお口かしら?』


「いしゃいいしゃい……。」


 ぎゅうっと上と下の唇をつままれて、はしっこから抗議すると、はぁ、っと嘆息して手を放してくれる。


「せっかく可愛く生まれたのに、唇腫れたらどうしてくれるの?」


『自分で塗り薬を作って塗っておきなさいな、私の加護でしっかり治りますわよ。』


 ふん、とそっぽを向くけれど、心配そうにこっちに視線をくれているところがアルフヘイムの可愛いところだとおもう。


 うん、かわいい! とても可愛い! ツンデレ! 悪役令嬢ツンデレ! 最高!


 自分の唇をなでなでしながらも片手でガッツポーズをとる。


 するとすごく可哀想な子、みたいな憐れんだ目で見てくるから本当にもう、好き。


 あ、わたし、Mじゃないですよ、推しが尊い! それだけ!


『フィラン、あんまりわたくしたちの外見が変わるほどの珍妙な、あちらの世界でのイメージを持たないで頂戴ね……』


「え!? なに? 外見変わるの!?」


『えぇ、まぁ。 私たち精霊はしっかりした形を持ちませんから、外見は契約者に引っ張られてしまいますから……ねっ』


 しまった、と顔をしているアルフヘイム。


『本当に! 本当に駄目ですからね!』


 慌てて私にそう言っているから、多分嫌な予感しかしてないんだろうな。


 大丈夫、もう、そっちの方に気持ちが傾いてる! 悪い顔してるんだろうな、私。


 私の召喚人生、八割勝利! いや、錬金薬術師だけど。


 よっし! 元気出た! めっちゃ出た!


「いい話聞いたらからやる気出た! もうひと仕事しよう!」


 急いで食器を片付けると、コタロウのご飯を階段下に用意して薬の作成に入る。


「今度は何を作ろうかな? 塗り薬にしようかな?」


 知識の泉を展開して塗り薬入門編を閲覧しながら薬草の準備を始める。


「なになに? 体力ポーションを油脂とよく練り合わせて作る……油脂?」


 油脂って例えばなんだ?


 まだ話は終わってないとか、本当にやめて頂戴とか言って慌てているアルフヘイムと、それをなだめているヴィゾウニルににやにやしながら、塗るタイプの傷薬を作るべくまた検索するところからやり直し! である。


 そう、そして。


 ファンタジー大好き!


 剣と魔法大好き!


 そして推しが!


 安全な推しが目の前に自分で作れると分かったアラフォーヲタク女の心をわしづかみして出てしまったやる気は、翌朝、とんでもないことになるのである。


 前もって言っておきます。


 張り切りすぎたことを、心から反省しています。

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