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1-016)片っ端からへし折りたい!フラグの事だよ!

 ――神の木、および精霊と召喚獣についての検索結果です。


 神の木とは、この世界の成り立ちの始まり。


 この世界を支える全能の神の御力あり、全ての大国、小国、集落もこの木の枝の元に作られています。


 神の木に力を注ぐ全知全能の神はこの世界には降りられません。 そこで、生きとし生けるもののために自らの力を七つに分けて、七人の精霊神を地上におろしました。


 七つの神たる精霊、すなわち、日の女神サンワン、月の神ムーツーン、火の女神ファスイリン、水の男神ウォフォーター、木の男神ツファイリーフブ、金の男神ゴシークスルド、土の男神アセーブスンです。


 ちなみに名前がとてもややこしいと思われるので、日神、月神…とその冠名を皆に呼ばれて親しまれています。


 この七つの精霊神が降臨する場所こそが神の木であり、この世界を成り立たせる七つの力を共存させ、共鳴させ、この世界を護る神の御力の代行者でもあります。


 精霊神たちはこの世の均衡を保つことに尽力されているため、我々のもとに姿を現すことはありませんが、配下となる精霊や召喚獣を我々にお貸しくださいます。


 精霊や召喚獣との契約は、その者たちが主導で行われ、人の思惑や希望は関係ありません。


 その力は相手から借りるものではなく、与えられるものなのです。


 契約すれば契約が破棄されるまで力を貸し続けてくれますが、気に入られなければ契約することもできません。


 契約できたものは、その精霊や召喚獣たちの力を借りて、魔導士は魔法を扱い、聖職者は傷をいやし、錬金薬師は調薬を行い、戦士は戦っているのです。






「……いや、長い! 長すぎる! そういう神話的なものは夜の寝物語に聞くから、今はもっと簡潔明瞭に! 必要事項だけ!」


 ――神と、この世界に生きるすべての物をつなぐ唯一、この世界の命の源です! 愛すればその愛の深さに見合った恩恵が、害をなしたものはそのすべてに死という天罰が下ります!


「わかりやすい! ありがとう!」


 あの水晶の神様の唯一の地上への連絡手段があの木ってことね。 だけどどんだけデカいのよ。この王都の木も本当は枝とか言われてるんでしょう? 人間たちの勝手な憶測だけど。


 で、その神様は愛を伝えればつたえるほど、愛を返してくれるってことらしいから、この人生最大の推しとして考えて、わが身にできる精いっぱいで推せばいいってことですよね!


「そんなの楽勝じゃない? オタクの愛を舐めるなよ!」


 ぐっと握りこぶしを握り、神の木に向けててくてく歩く私、えぇ、この時の私はまだ『神を推す』という重要性と大変さなんか全然知らなかったわけですがそんなことは関係ない!


 神様は推し!


 人生最大の推し!


 推し活最高!


 そう勇んで目指す先は二階層二区画目にある騎士団駐屯地。


 二階層である庶民層から三階層の貴族層にあるギルドに行くための転移門は、私の住んでいる区画では、神の木の近くの騎士団の駐在所にある。


 とりあえず明日から一週間分くらいの生活費を……予想では大銀貨1枚くらいだと思うのでその額を下ろしてみてまずは生活をしてみる。で、そこから自分が本当に生活するのにどれくらいお金がいるかを考えよう。


 家計簿付けるの無理でどんぶり勘定だけどね。


 それから明日はおうちのリフォームのために家にいてくださいって言われてるから、職人さんの休憩の時に出すお茶とお茶菓子、私が庭仕事するために必要な一般的な薬草の種を一通り買って帰ろう~。


 まずはポーションとか、風邪薬とか、よくある一般売れ筋市販薬の材料だよね……なんて考えていたら、神の木に到着した!


「やっぱりでっかい!」


 目の前にそびえる神の木は、見上げても見渡してもその全貌は見えない。


 二階層だから見上げれば上の階層がある、という理由もあるのだが、それだけではなくとにかく太くて大きい。


 これ、本当にひと枝なのかなぁ…?


 木の隙間には小さな鳥や、大きな栗鼠のような生き物が走り回ったりしていて、鳥人の人は己の翼でそこまで近づいてその子達にご飯を上げたりしている。


 その太さと表現しようのない神々しさに感動しながら、まるで吸い寄せられるように神の木に一番近づける場所まで行って初めてわかった事。


「階層の土台って、神の木にくっついているわけじゃないんだ……。」


 神の木からに階層の一番端、私の肩くらいの高さだから……一メートルくらい? の高さのある石の塀と神の木の間は、おおよそ二メートルくらいの幅の隙間があって、下をのぞくと一階層の交易層と、二階層をしたから支えるように伸びる太い枝が見えている……が、半端ない高さはかなり怖い。


 落ちる人とかいないんかな…


 そんな不安に下を見るのをやめて、改めて大きな木を見上げる。


 あぁ、なんて。


「綺麗だなぁ」


 何が? と聞かれても、はっきりとその綺麗さを伝えることはできないのだけれども。


 しっかりと張りのあるように見える木の幹も、ところどころに出た新しい木の枝から芽を出す新緑も、太陽の光を浴びてきらきらと色を変える深緑の葉も。


 どれもが綺麗でずっと見ていたい、と思わせる。


 前の世界で、大きな杉の木の密林ドキュメントを見た事がある。あの島自体が神々しいと思って、一度行ってみたいと感じていたが、あの島に行っていたら、同じ感動を味わえただろうか。


 何もかも、その周りの空気さえもとても美しい。


 清廉潔白ってこんな感じかな?と思う。


「本当に神様の木、なんだなぁ……」


『そんなに見つめちゃうほど珍しい?』


「わぁ!」


 木を眺めていた私の目の前、息もかかるほどの間近に、真っ青な瞳の男の子の顔がにょっきりと出てきて驚いて声を上げた。


『わぁ! だって! か~わいい!!』


 くるくるくるっと、私の目の前で踊るように宙を滑る男の子は全体的に青。 時折髪の毛が小さな水しぶきを落としたりしていて、にこにこと笑っている。


 明らかに人とは違う生命体。


 そうか、これが!


「精霊?」


『物分かりがいい! おもしろい! さすが落ちてきた子!』


 にゅっと、鼻と鼻がくっつくくらいに近づいてきて破顔した青い子は、私の額にキスをすると、しゅるっと音が聞こえるような動きで神の木のほうによって行く。


『みんな、来たよー! あの子が言ってたお気に入り!』


『本当に?』


『意外と早かったな。』


『早い? 昨日のうちに来てくれると思ったのに!』


 目の前で、信じられないようなことが起きてる。


 目をしぱしぱさせる。


 だって、誰もいなかった神の木の枝や木漏れ日から、何色もの光の粒が滴るように落ちて、それが私の目の前にシュルシュルと集まるのだ。


 そうしておのおの違う色をまとった可愛い子供の姿で私に近づいて来る。


 どうなってるの?


 呆気に取られてる私に、子供の姿をとった光はクスクスと笑いながら話しかけてくる。


『可愛くて賢い、私たちの小鳥。』


 お日様のように輝く黄金の少女が、す~っと近づいて私の右の頬にキスをして逃げていく。


『ふふ、今回は()()()ご執心のかわいい子。』


 緑色のやんちゃそうな男の子が、尻もちついたままの私を優しく立たせてくれて、左の頬にキスをする。


『あのラージュだってご執心。 こんな可愛い祝福しちゃってる!』


 真っ赤な女の子が嬉しそうに両手を握って左手の指輪をつついてから、そのまま甲にキスをすると、ずるいなぁ!と虹色の男の子が左の手の甲にキスをした。


()()()()可愛い名前をプレゼントされてる。』


 私のおさげの右側に、鋼色の男の子がキスをすれば。


『じゃあ私たちも祝福を!』


 左のおさげにキスをした茶金色の男の子。


「……やられたぁ……神様めぇ……」


 七つの光、この世界の七つの精霊のお話は無駄じゃなかったけど、あぁぁぁぁ、身の程に合わないものがまた来ちゃったよ……と、ため息しか出ない。


 これはあれですね、精霊たちの祝福ってやつですね、私押し付けられ……もとい、受け取っちゃったんですね、こんな大仰な感じで!


 恐る恐る周りを見れば、通りかかった人たちが、珍しいなぁとか、初々しいなぁと温かな目で見守ってくれているので、そんなに大仰なのじゃないかと一瞬はホッとしたのだが……


「召喚スキル持ちの精霊との絆むすびか、珍しい。 七色の御加護を頂けるなんてなぁ。 あれが人型だったら神の祝福っていうんだぞ~。」


 と、一緒に歩く子供に教えている父親の言葉に自分の周りに集まる光の子供たちを二度見した。


 え? あれ、立派な人の形をしてませんか?


 一般の方には光の粒にしか見えないみたいですが、そもそも一般的には違うの? こんな事にはならないの?


 あぁ…嫌な予感しかしないけど、憶測だけで考えても良くないし、一応確認していましょう!


 もしかしたら逢いに来てくれただけで、実際に契約結ぶのはもっと違う子たちかもしれないし!


「……えっと、これから別の子が来……」


『これからよろしくね、フィラン。 僕たちの可愛い小鳥。』


 言わせてもらえなかった―――!


 神様! 大仰な祝福とか、愛とか、そんなのはいらないって言ったのに!


 もっと小さくてかわいい小動物的な精霊さんか召喚獣を授けてほしかったです!


 人型とか最大級の祝福なんですよね? いやそれはもう勘弁!


 わたしは本当に! 心から! 溺愛とか、総愛されとか要らないんです!


 ただ静かに暮らしたいだけなんですよー!


 と、頭を抱え込んだのは、言うまでもないです。


 ちなみに知識の泉は


 ――御安心を。精霊は神から使わされたものですが、人型に近いほどその力は強くなります。 貴方は魔力と運が飛びぬけていましたし、意図して魔法を使わなくても生活補助として大変に心強く、また魔力の消耗を抑えられます、よかったですね。


 と言いましたよ。


 あれ? 随分と感情が入り混じるような、主観的な物の言い方してる……知識の泉も成長しちゃうの?


 へい! 知識の泉! っていえばいいのかな……


 目の前でニコニコととてもいい笑顔で私を見つめている精霊たち……ぅ……キラキラした視線が痛い……


 なに求められてるんだろうなぁ、わたし……。




 ……うん、もう何でもいいや……早く片付けてお金おろしにいこう……

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