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1-015)マルシェにお買い物リターンズ!

 お腹もいっぱいになったところで気を取り直して!


 午後からは買い物リターンズ!


 今回はこの素敵な籠の力をフルパワーで頑張るぞ! おらぁ!


 とりみだしました、すみません。


 店舗の奥、コタロウがお日様の光を浴びてゴロンゴロンしてご機嫌さんで、そのふわふわのお日様が当たっているお腹にこの身を沈めたい……と後ろ髪をひかれながらも、私はまた籠を片手に店を出た。


 手元に残っているお金は大銅貨と銅貨がちょっと。


 まだまだ買い物できる! はず……いや、たぶん、ちょっと自信ない。


 お昼の買い物とかしただけだから、この国の物価解らない。


 いや、訂正します。


 この国の物価、予測つかない!


 なぜならば!





「あらあら、かわいいお嬢ちゃん。 今見ているそれは、うんといいお品だから、あなたにはまだ早いし、お小遣いじゃ買えないかもしれないわ。 そこにあるものはここから南にある港町の交易商が二年かけてようやく取引してもらえるようになって手に入れた品物ばっかりなの。 とっても綺麗でしょう? お嬢ちゃんが見惚れるのもわかるわ。」


「えへへ……そうですねぇ~(棒読み)」


 そんな、甘く柔らかな感じで話す、髪の部分が真っ赤な百合の花のような均整の取れた美しい男性に声を掛けられて私はとってもあいまいな笑顔を返した。


 イケメン!


 またイケメンです!


 しかも細マッチョ的なイケメン!


 もう完全に視界の暴力です! 


 その対象人物の目の前にさえいなければ、そう叫びながら目がつぶれないように目を覆いたくなるようなイケメン。


 神様は面食いですか?


 ごめんね、あの時絶世の美女、傾国的な極上品になりたいって言わなくて。


 庶民層の商業エリアの区画の中でも、日用雑貨を扱う店舗と食品を扱う店舗は基本()通りが分けられているとのことで――引用・知識の泉、万歳! ドワーフの雑貨屋さんは……モグリか、店舗に許可をもらった時間限定小売りではないかということ――先ほど歩いたマルシェとは別の通りに足を運んだわけですが、店構えとかもなんだか急におしゃれになって、ショーウインドウなんかがあったりして、きらきらしているというか……一瞬貴族層に来ちゃったかと思ったよね。


 この通りは見た目は美少女だが、中身は社畜アラフォー限界女にはかなりキツイ! いや、ただの通過点!


 と、自分を鼓舞して買いに来たのは櫛や手鏡だったんだけど……。


 コスメ売り場、といえばいいんだろうか、デパート一階、高級ブランド化粧品売り場? で、今話題に上がっている、私にはまだ早いわよと言われた商品は、目の前にある無駄にキラキラした石とかついた繊細なつくりの櫛なんですが……


「に……人魚族の櫛? ……銀貨四枚……?」


 真珠や珊瑚とかなんだろうな……この無駄にキラキラした装飾過多の装飾は。


 こっちの世界にそういうものがあるのかはまだわからないけれども。


 手に取るのもはばかられてまじまじ見てしまったわけですが、まぁ銀貨四枚、払えなくはない! しかしこんなところで無駄遣いはできぬ!


「そうですね。 私にはまだ早いと思うので、もっとお手軽なやつが欲しいです」


 えへへ、と笑いながら言うと、赤百合の花樹人の店員さんは、じゃあこれがいいわよ、と別のところから飾りのない茶色の平櫛を出してきてくれた。


「これならお小遣いで買えるわよ。 東の国の脂分の多いしっかりした木から作られているの。 お嬢ちゃんは綺麗なハニーブロンドなんだから手櫛なんかで済まさずに! 丁寧に毛先から少しずつ梳きなさいね。」


 なぜばれた!(手櫛!)


 髪は乙女の命なのよ! と、ニッコリ笑顔で鋭い突っ込みと力説をくれた店員さんに、へらっともう一度あいまいな顔をして、気を付けます~と言いながら見せてもらったのは、素朴な、でもしっかりしたつくりの平櫛。


 うん、向こうの世界であった! 桃とか、椿とか、柘植で作るやつね! 私も持ってました!


「これ、ください。 この丸い可愛いやつ」


 手のひらにコロンとはまるしっとりした平櫛に、あちらを離れて丸一日しかたっていないのにしみじみとした懐かしさを感じてしまって、購入の旨を伝えると赤百合の人はにっこり笑って手招きしてくれた。


「ちょっと髪を触ってみてもいいかしら?」


「……はい。」


 その美しいニッコリ笑顔に拒否権は与えないという力強さを感じて承諾すると丸椅子に座らされた。


 彼はするするっとおさげの先に止めていた紐をほどくと、買う予定の櫛で私の髪を梳き始めた。


「綺麗なハニーブロンドね。 癖も柔らかで艶もハリもしっかりある健康的で美しい髪の毛だわ。」


 低めの優しい声で褒めてくれて、少し骨ばったしっかりした手で丁寧に梳いてくれる。


 これは照れくさくて、少しくすぐったい。


「私にもね、あなたくらいの年の妹がいたの。 こうしているとあの子を思い出すわ……とはいっても、あの子はこんな柔らかな蜂蜜の金じゃなくて、もっと華やかな金鳳花のように燃えるような金色なのだけど。」


 妹さんを思いだしているのだろう、くすくすと笑いながら慣れた手つきで髪を編み込んでいく。


「はい、できたわ。」


 ぽん、と背中を軽くたたかれ、鏡を見せてもらうと、手櫛みつあみおさげとは違う、とっても素敵な編み込みおさげになっていた。


「うわ! 神様の手! すごい! 可愛い! 綺麗!」


「そりゃ、この仕事初めて長いもの。 さてこの櫛は大銅貨3枚よ。 品がいいから負けてあげられないわ。」


「大丈夫です。」


 お財布代わりの皮袋から大銅貨3枚を渡すと、綺麗な花びらを加工して作ったらしい袋状の物にいれて渡してくれた。


「お小遣いで買えるお手頃のアクセサリーや髪紐もたくさんあるから、またいらっしゃいね。 まってるわ。」


「ありがとうございます! また来ますね!」


 ばいばい、と手を振って別れると、赤百合の男性も優し気に目を細めて手を振ってくれた。


 本当に! この世界は素敵な人が多すぎます! ありがとうございます!


 可愛い髪型をした私がお店のショーウインドウに映りこむのが嬉しくて、にやにやウキウキしながら次の店に向かう。


 次の店はギルド員さんに教えてもらった、生活に必要な食品以外のものが何でもある良心的な価格をモットーとする(らしい)大きめの商会だった。


 バーゲン品のワゴンセールみたいになっている露店を抜けて店内に入ると、一階は衣料品、二、三階には生活雑貨があるとのことだった。


「まずは着替えを買おう!」


 一階をうろうろして、人や花樹人用のエリアでシンプルな形の着心地の良い薄紫のワンピースと、作業用の黒いワンピース、作業用の懐かしの割烹着タイプのエプロン2枚、乙女の防御壁であるしっかりした下着(この世界の下着は悲しいほどのシンプルでノスタルジックな形と色の物で……この分野では転生者は誰一人、力をふるってなかったようです残念! しかし新たな金の開拓地発見かもしれないので、覚えておこう!)、それから靴下を5足を購入し、二階に上がって肌障りの良い柔らかい織物掛け布団を一枚と、食料品や生活雑貨、お店の商品陳列に仕えそうな籠を試しに何個かを買う。


 大柄の店員のおばちゃんが「いっぱい買ってくれたから!」と、庭仕事用の手袋とか、肩掛けをつけてくれた! 嬉しい!


 で、両手いっぱいの大荷物。


 これを私のようなか弱い女の子がおうちまでどうやって持って帰るのか?


 か弱くないよ、って突っ込み不要、器はか弱い十四歳なのだ! 自分でも忘れがちだけど!


 話がそれた!


 荷物を持って帰る手段!


 それは昨日試作品だけど使ってみて、と渡されたこの腕に持った可愛い籠ですよ!


 その名も!


「異次元万能収納籠~!」


 あちらの世界のとても有名な青い生き物が持っていそうな代物です!


 ギルドの技術科のお兄さんがくれたこの籠に突っ込むとあら不思議! 重さも嵩も見た目の籠の分しかなくなりますよ、とっても便利!


 中は呼吸ができない空間なので自分や動物は入れないでくださいね! って何度も言ってたけど誰が入るかいっ!


 その前にそんな危ないもの渡すな!


 こんな便利な物、安全性が確立された量産型が出るまでは大事に使いますよっ!


 ギルドのお兄さんたち、ありがとう!


 と買ったものを詰め込んだのに、家を出た時とおんなじ重さの籠を手にかけると、相対してだいぶん軽くなったお財布の中身を考えた。


「残りが銅貨だけになっちゃった。 ギルドの銀行におろしに行かなきゃ……早くキャッシュレス決済機能実用化してほしいなぁ。」


 お金をおろすのはギルド内銀行窓口だけ。


 そしてギルドは貴族層に一戸だけ。


 それには二階層の各区画に一つずつある騎士団駐屯地に行って、そこからゲート借りて貴族層に行く、そこからギルド内の銀行部門に行ってお金をおろすという……とんでもなく面倒くさい手順を踏む。


 コンビニもATMもありません。


 まぁ、あの手の機械に金貨とか入れとくの怖いか~魔法とかで壊せそうだもん。


「ここでぼやいててもしょうがない、行くか……」


 一応、予定していた分の買い物を終えたし、私の住む区画の駐屯地は神の木の目と鼻の先なので、ついでに神様の木で可愛い召喚獣か精霊さんと契約してこよ、と、私は王都の中心にある神の木に向かって足を進めたのでした!


 あんなことになるとも知らずにね!

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