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1-011)新しい朝がきた!

 ざりり~ん、ざりり~ん……


「う、う~ん……痛い痛い……。」


 顔が大根おろしでごりごりと擦られてるような痛みが断続的に続いている。


 後、申し訳ないけど魚臭い。


「痛いよ、コタロウ。 顔の皮がなくなっちゃうよ……」


 しかも今日は範囲も広いよ……全面的に顔が痛いよ。


「みゃ~ん。」


 目を開けると、目の前には自分の顔の映ったでっかい目……いえ。


 デカすぎの、目!


「うわぁぁぁ! びっくりした!」


 飛び起きて、自分がいる場所を確認する。


 でかい三毛長毛の……えぇ、くるんっと丸まったその真ん中に私を懐にすっぽり入れてくれるほどの大きさの、かつての愛猫・コタロウの(数十倍でかくなった)顔がそこにあった。


「あぁ、そうか、異世界転生したんだっけな……」


 はぁ、とため息をつくと自分の事をまん丸い瞳で見つめる、でっかくなった愛猫のしっとり冷たい鼻先をなでる。


「おはよう、コタロウ」


 べろ~ん。


 声をかけると、心からの親愛の情! とばかりに舐められる。


 べろんべろんと舐められる。


 嬉しいのか喉まで鳴らしてる!


 わたしも嬉しい!


 しかしそこは猫の舌。


 舐められた人ならわかるが痛い、激しく痛い。


 転生前は私の腕の中で丸く抱っこできるくらいの普通サイズの時でさえ、猫の舌って結構痛いなぁって思ったのに、私よりも明らかにビックサイズだとその痛さが半端ない。 いくら愛猫でも顔面を舐めるのはちょっとご遠慮いただきたいって思っちゃうくらいの痛さ。


 なのにそんなのお構いなしで、べろんべろん舐めてきてくれる。


 うん、お猫様に逆らう方が悪いんだもん、私のお肌が、慣れて強くなるといいな。


 でもいくら私の言葉が足りなかったとはいえ、コタロウの大きさは、常識的にそうじゃない的なレベルなので、天に向かって苦情は申し立てておこう。


「神様、コタロウと一緒にこの世界に来たいって言いました、確かに言いました! が、デカすぎです、ありがとうございますっ!」


 昨晩はもしかしたら床の上で寝る羽目になるところでしたが、コタロウの天然猫毛100パーセントベッドで凍えることなく(何ならちょっと暑いくらいでした)寝ることができました!


 あと、ギルドのお兄さんたちは絶対に許さない。


 そう思いながら、顔を舐めるのを止めさせるためにコタロウの首元を抱きしめてから全身を使って全力で撫でくりたおす。


 わしゃわしゃ……わしゃわしゃわしゃわしゃ!


 大好きだったところを中心に、力いっぱいなでなでする。


 気持ちは年末の大掃除のクライマックス窓ふきなイメージ!


 全身全霊全力で!


 ご奉仕するよ!


 ひとしきり撫でられて満足したのか、飽きたのか、頑張ってる私を振り払うように大きく伸びをしてから、扉を開けてくれとせがみ、開けてあげるとのっしのっしと一階へ降りていく。


 よし、お猫様へのご奉仕、おつかれさまでした!


 ほっとして、私は朝の準備を始める。


「よ~し、お昼前には大工さんも来てくれるって言ってたし、今日こそは買い出しに行くぞ!」


 拳を握りしめ、今日の決意を口にする。


 昨夜脱いで端っこに畳んでいたワンピースとエプロンを身に付け、靴下とブーツを履いてから、まだ何にもない……違った、昨日押し付けられた荷物がいっぱい置いてある一階に降りると、コタロウが寝転がっている店舗を通り、奥の水場で顔を洗う。


 そう! 水場! 水場ですよ!


 聞いてください、この世界にはなんと水道があります! 蛇口をひねると綺麗な水が出るんですよ!


 お手洗いも水洗です、シャワーもあるけど湯船もあるの!


 完璧! 上下水道完備、万歳! たぶん転生者の先人のおかげですよね、本当にありがとう!


 で、まだ我が家にはタオルがないのですが、それは剣と魔法の世界です。


「スキル展開『風魔法――乾燥(ドライ)』!」


 濡れた顔が一瞬で適度……極上のタオルで拭いた後のように乾いた。


 タオルでごしごししなくても!


 乾く!


 お肌ストレスゼロなんて嬉しい!


 昨夜、コタロウに埋もれて知識の泉で腕輪の事、魔法の事、王都で暮らす一般知識を眠いの我慢して勉強しておいて正解だった!


「魔法便利! 最高!」


 自分でもわかるくらいご機嫌のまま、髪の毛をとりあえず手櫛で直し、みつあみおさげにしてから、昨日押し付けられた紙袋の中のリンゴみたいな赤い果物と、ショートブレッドみたいなお菓子、それから淡い黄色の液体の入った瓶を取り出した。


 さて、この少し色が明るすぎる液体は、紅茶とかの代わりになるかなぁ……。


「……鑑定スキル、もらっとけばよかったと思うよね……」


 ふぅ、っとため息をついてから、瓶を手に持つ。


「スキル展開――知識の泉。 手に持った液体の検索!」


 ――検索結果。 国営ギルドが販売している中級の体力ポーション、体力回復、傷を癒す。 金額相場は大銅貨1枚。 味は甘くてすこしすっぱい、です。


「……う~ん、レモネードっぽい味ってことでいいかな……それなら朝ごはんに飲んでもいいかも。」


 ――注意点・体力が完全回復している場合の服用は注意が必要です。


 ……え? 何その含みのある検索結果。


「完全回復してるときに飲むとどうなるか検索。」


 ――完全回復時の服用での副作用・鼻血、めまい、立ちくらみなどが報告されています。


「おっと、こんな私史上最大で最高に可愛らしいこの外見で鼻血ダメ、絶対ダメ! でもたぶんまだ疲れは残ってるから大丈夫なはず! ありがとう知識の泉!」


 なんて変な感謝をしつつ、とりあえず瓶のふたを開けて半分飲みほした。


「う、う~ん……微妙……鼻血は……よし、出てない!。」


 う~ん、この味、レモネードじゃない。


 確かに甘くて酸っぱいけど、こんな微妙にぼやけた味を想像はしてなかった……この味はあれだ、熱が出た時に飲む電解質補給水……体力ないときにはおいしく感じる奴かもしれない。


 けど今の私はちょっと味気なさ過ぎ。


 がっかりしながら、今度はショートブレッドっぽいものをかじる。


「ふお! 口の中の水分奪われるけど、おいしい! まさに見たまんまのショートブレッド!」


 バターっぽい風味にミルクの風味!


 完璧!


 これはとてもおいしい! まさにショートブレッド! ありがとう、転生者の先人よ! 私はこの世界で食で苦しむことはなさそうです!


 口の水分ぱさぱさ問題の回復には、ポーション……ショートブレッドの塩味と甘さには、ほのかな味わいは勝てなかった……ますます味気なくなった。


 も、ほんのり変な味の水にしか感じない。


「紅茶が欲しい。紅茶。 よし、紅茶とポットは絶対に買おう。 火はガスがなさそうだから……奥にあったあのかまどってことは……薪? 料理や暖房の火はどうするの? 知識の泉検索!」


 ――検索結果です。 一般的に、生活利用の火は、かまどを使用し魔法、魔力のないものは魔力石を使用します。 召喚士であれば生活使用レベルの召喚獣や精霊と契約するという方法があります。 マスターは召喚士の適性ありと知識の泉へ登録されていますので、召喚獣や精霊と契約を勧めます。 それらは契約者の魔力を継続的に対価として求めまずが、一度契約すれば契約者のために火守り_(竈や暖炉の火の番)灯守り(家の照明代わり)、畑仕事や錬金調剤の手伝いもしてくれます。 気性の穏やかな生活レベルの召喚獣や精霊でしたら『神の木』の傍におりますので、契約してみてはいかがでしょうか。


 検索するたびにAIみたいな対応になっていく知識の泉グッジョブ!


「召喚獣か精霊召喚、いいね! 生活のお手伝いをしてくれて、お仕事のお手伝いもしてくれるならぜひ召喚獣とお友達になりたい!」


 可愛い(はずの)召喚獣に生活を助けてもらうとか、何それ、何の贅沢なの?


 ちなみに魔力石とは、魔法が使えない人でも魔力を蓄積増幅して魔法を使用できる(充電池?)魔導道具らしい、が……これがなかなか、本体も魔力蓄積の代金もお高いらしい。


 ありがとう、私の魔法と召喚の才能!


 体力と素早さがない分、そっち方面に全振りしてくれてありがとう。


 とりあえず朝食分のショートブレッド(仮)と体力ポーション、リンゴ(仮)を食べ終わると、水場で瓶を洗って手をすすぎ、魔法で両方を乾燥させる。


「では、食料のリサーチ&買い出しへ行きます! 目標は可愛い食器を一揃えとコタローの食器とご飯。 食材を分けて保管する籠に、櫛や洗面道具。 それからカーテンになるような布は絶対購入して、ベッドに寝具はひとまずリサーチする! で、お昼前に大工さんが来てくれるから家具を作ってもらって……足りない家具はそれから買う! 後は畑に何が植わっているか時間でき次第確認して、畑の手入れ道具と調薬スキルの確認……う~ん、やることがいっぱいあるなぁ。」


 指折り数えながらやることを確認しながら、肩からお金の入った鞄、それから昨日の押し付けられた戦利品の中にエコバック的なものはないか探したら出てきた、かなり便利な機能を持った可愛い買い物籠を持った。


 取扱説明書様ゞである。


 よし、準備万端!


「コタロー、いってきます!」


 日の当たる店先で尻尾だけ動かして答えてくれたのを確認して、私は街に繰り出した。

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