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【超不定期更新】アラフォー女は異世界転生したのでのんびりスローライフしたい!  作者: 猫石
『ルフォート・フォーマ』編

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1-108)指輪とゴールまでの不意打ちダイビング(2回目)

いつもお読みいただきありがとうございます m(_ _"m)

誤字脱字・誤変換・誤用報告、感想もありがとうございます。


少々体調を崩しておりますので、反応が遅く成りますがご容赦ください。

『フィラン! 頑張れー!』


「いや、無理無理、怖いよう!」


『大丈夫、僕たちが付いてるよぉ!』


「みんな浮いてるじゃん! 私は! 足を! 使って! 歩いてる~!」


『頑張れ頑張れー!』


「うわぁぁぁん、応援ありがとう! だけど無理無理、こわいよぉ! 頑張れないぃ!」


 壁の手触りはつるつる。 なのに無駄に凹凸が多い木の壁に両手を添えて、壁からにょきーーん! と生えたような、学校の階段くらいの横と縦の幅は一応ある階段を、3精霊に励まされながらただひたすらに降りるお仕事をしています。


 えぇ、そうなんですが……。


「ああぁぁ、怖い怖い怖い!」


『フィラン、頑張ってぇ!』


 私の膝が、恐怖と緊張で震えてしまってなかなか降りられない状態です。


「柵がないの、マジ怖い、酷い……。」


 そう、落ちたら奈落まで真っ逆さまのくせに、階段の縁にないんですよ、あるべきはず柵が!


 手すりが!


 落下防止の予防が!


 どういうこと!?


 なのに、ここに到着したときに、余裕ぶってちょっと下を覗き込んでしまったのが運のツキ。


 底の見えない真っ暗闇がそこにあって、いや、でもまぁ、灯がないだけでそんなに深くないんじゃない? ま、とりあえず深さだけでも確認しよう、と思ってそこら辺に転がっていた石を投げたんですよ。


 ほら、底に当たったら音が鳴るでしょ?


 かつーん、とかね?


 だからぽーいっと投げ込んでみたの。


 やって後悔したよね。


 底に当たった音もしなかったんだもん。


 いつまでたっても。


 ねぇ、これ、どんだけ深いの!?


 そんな高さから柵もない簡素な階段を、底のわからないほど深いゴールまで降りるなんて高所恐怖症じゃなくてもまじ怖い!


 意を決して降り始めたはいいけれど、つるっつるででこぼこの壁に両手をつけながら、1歩1歩足元を確認しつつ降りていく作業って時間かかる!


 滑っても手を引っかける場所がないから、本当に慎重に降りているわけですがこんな状況に私を放り込んだ神様とラージュ陛下、本当に許さない。


『フィラン、もっと早く! 頑張って!』


「いや、これ以上早く降りるのなんて無理ぃ!」


 私の声はむなしく、巨木の内部、ひたすら縦降り洞窟の中にこだました。







 こ、こんにちは。


 巻き込まれ人生を謳歌させられているソロビー・フィラン・コルトサニア……は、伯爵令嬢(照れ)15歳です。


 そもそも私は、前世は地球と言う星の日本という全方向に平和ボケした国で、大好きな推し本と、愛くるしい長毛三毛の愛猫コタロウと、特別な時にだけ買うお高くて美味しい紅茶とお菓子をこよなく愛する、由緒正しき医療社畜属アラフォーバツイチオタクだったわけです。


 が、ある日突然、でかい水晶の柱の姿をした神様によって愛猫と共に異世界転生させられて、錬金薬師なんてありがちな職業について、その国の王様に会って、変なギルド員さんに巻き込まれておうちを手に入れた時にいろいろ嬉しくて、ちょぉっと暴走したら精霊まで暴走しちゃって王様怒って監視人のイケメンと住むことになって……あれよこれよとお店を開いたり学校に行ったりしてたわけですが、現在学校行事真っただ中でなぜか世界の始まり? おわり? の盛大なる痴話げんかに巻き込まれ……。


 あぁ! もういい!


 まだるっこしい!


 ともかく! 激甘スローライフを望んだはずのに、いろんなことに巻き込まれて巻き込まれて巻き込まれすぎたおかげで(現在進行形)、現在わたくしは巨木の幹の内側? っぽいもの壁に張り付くようについている螺旋階段っぽいものをただひたすら降りてますよ――!


 で、なんでこんなことになっているかって話なんですが、私自身も正直誰かに説明できるほど状況把握してないです、ごめんなさい。


 なにかな~?


 この世界の人は魔術とか使えるもんだから、超能力的な力かなんかで、超能力的脳内会話(サイキックトーク)でもしてるのかな~?


 私はそんな芸当出来ないから説明しろ、説明をよぉ!!


 って、本当に日々思ってます。


 まぁとりあえず今はラージュ陛下の手によって、兄さまがアル君と一緒にどっかに魔法陣で飛ばされて、そんな陛下の体を使って神様がひょっこり出て来たと思ったら、泣き喚きながら朽ちていったマリアリアさんの体から出て来た綺麗な光と青い石の指輪を渡されて、行ってこいとこつかれて、落とし穴みたいなのに突き落とされて、ついた先が朽ちて倒れた巨木の傍。


 私の目の前の折れた巨木の残った幹には『やぁ! ここに入りなよ!』みたいな大きな穴があって……入るのをかなり渋ったものの、3精霊の激励を受けて渋々、本当に渋々中に入ったわけです……入って後悔したよね、エンドレス奈落への階段を下る修行が始まったのです。


 こんなの聞いてないからな?


 っていうか、ここまで自分で頭の中で入りしてきたけど、本当にみんな、ホウレンソウ忘れすぎだからな!?


「神様マジ絶許っ! 失礼、絶対許さない! 本当に許さない!」


 足元、手元、それから反対側が見えるくらいには明るいので、ちゃんと足元を見ながら降りるということは出来る。


 でもこれ踏み外したら死ぬんじゃないかな? と思うと、本当に慎重に慎重に一歩一歩を進めなくてはならず、ナメクジの方が早いんじゃないかと思われるくらい慎重に降りています。


 木に登って降りられなくなった猫って、こんな気持ちなんだろうな、なんて考えながらね!


「も、ちょっと疲れた……。」


 どれくらい歩いているかはわからないけれど、何処に行くのかわからない、落ちたら即死亡! みたいないろんな恐怖を抱えた中でただひたすらに降りているので疲労感が半端なく、私は集中力が切れ始めたのを感じて足を止めた。


「ちょっと休憩……する……させてください……。」


『『『いいよ~!』』』


「ありがと……。」


 休む許可を元気いっぱいの精霊にもらい、まず壁に背中と両掌をくっつけて、そこから落ち着いて静かにずるずる腰を下ろし、お尻が付いてやっと、はぁ~~っと息を吐いた。


「こわ……怖かった……座るのも一苦労……。」


『大丈夫? フィラン? お水飲む?』


「のむ!」


 ふわっと目の前を舞う水の精霊アンダインの心遣いに大きく頷き、小さな水の玉をもらうと、そのままごくごくと口を付けて飲み干した。


 イメージは宇宙飛行士さんが無重力状態で水飲む感じね!


「おいしい! 生き返った!」


 ぷはっ! と、仕事上がりに一杯ひっかけたみたいな爽快感を感じると、少しだけ気持ちに余裕が出て来たので、私は神様に手渡された二つの宝石を胸の蓋つきポケットの中から恐る恐る取り出した。


 乳白色の宝石はビオラネッタ様からもらった飾り紐にぶら下がっていた石で、私の頭に乗せられていた王冠についていたやつ。 神様がマリアリアさんから取り出した『光』のおかげか、いまは最初の頃よりも少し強く光っている。


 もう一つは青い石の指輪――マリアリアさんからだと言われアル君から手渡され、遺跡ではアル君に渡してしまった指輪。


 そういえば、この指輪あたりから意味わからなくなってきたよね、私のアカデミー生活。


「今回の事、全部この指輪のせいな気がしてきた……。」


 私の中指、アル君の小指にはまる大きさの綺麗な青い石のはまった指輪を指でつまんで毒づくと、その指輪を眺めながらう~ん、と微妙な顔をした3精霊。


「みんな、怖い顔してどうしたの?」


 あんまりにも顔を見合わせたり、考え込んだりとにらめっこをしているので、とりあえず3精霊にそう尋ねると、彼らは口々に言った。


『それはフィランの言う 『げんきょう?』 じゃないとおもうよ。 それはあの子の宝物の大事な指輪じゃないかなぁ。 ね、そうだよね、シルフィード。』


 アンダインが答えてシルフィードに聞くと。


『うんうん、あの子の大事な指輪によく似てる、と思う。 なんであの裏切者たちが持っていたんだろう……ね、サラマンドラ。』


 シルフィードがサラマンドラを見る。


『うん。たぶん、ずっと、神様が探してたやつだよね。 なんであいつが持っていたんだろうね?』


 3人は多分、と言いつつ首をかしげているのは、ちゃんと見えなくて確信が持てないのかもしれない。


「神が探してた指輪? あ、もっとちゃんと見てみる?」


 指でつまんでみんなが見やすいように持ち上げると、3精霊はかわりばんこにそれをまじまじと見て、うんうん、やっぱりね、と頷く。


『やっぱり! それはね、フィラン。 フランの大切な指輪。』


「ふらん? それって……。」


 マリアリアさんが私に言った名前だ。


 随分私と似た名前だけど、それは誰だと聞こうとして。


「あ。」


 思い当たったのは夢で見た一人の女の子だ。


「神様の傍にいた黒髪の女の子の事?」


『そうだけど、なんでフィランはフランを知ってるの?』


「え? う~ん……。 夢で見た……?」


 首をかしげながら言えば、あぁ、とみんな納得する。


『それは、神様がフィランに見せた夢かも。 ……それは、神様がフランにあげた物なの。』


 神様からのプレゼント?


 じゃあ、この汚れひとつない綺麗な指輪は、創世からのアンティーク?


 しかもそんな昔の、神様が大切にしていた人の宝物だったと言われるものなのに。


「そんな大切な物を、なんでアル君やマリアリアさんが持っていたの?」


『たぶん……いや、絶対! あの時、フランが怪我をして眠っちゃったあの日、あの裏切者(とり)がフランの欠片と一緒に持って逃げたんだ!』


 私のつぶやきに、アンダインがぎゅっと顔を顰めた。


「鳥?」


『そう、あの鳥! フランが最後に作った最初の鳥人で、友達だって、うんと仲良しだったのに。ある日突然魔人になってフランの宝物をみんな奪って、フランを傷つけて逃げたんだ! あの裏切者、絶対に許さない!』


 珍しく怒りの表情を見せる3精霊を冷静にみて、私は首を傾げた。


「裏切者……?」


 マリアリアさんが、最初に作った鳥人で、魔人になった裏切者……?


「どうしてマリアリアさんは魔人になったの?」


『『『それは……』』』


 私の問いかけに、さっきまで怒っていた3精霊は泣きそうな、困ったような顔でお互いを見合わせ、とても言いにくそうに顔をくしゃっと崩した。


 そんな時だった。


 きらきらっと、青い石が光った気がした。


「ん?」


 首を傾げて指輪の青い石の部分を覗き込むようにもう少し、持ち上げる。


 そんなタイミングで、洞窟の底から、ものすごい強い風が吹き上げた。


「わっ!」


『『『わぁ!』』』


 3精霊もびっくりするような風に、指でつまんでいた指輪を落としそうになった私は慌ててそれを握りしめた。


 と。


 今度は反対の手の中から白い石が転げ落ちた。


「まってまって!」


 座っている階段に転げるそれを、慌てて拾おうと手を伸ばした。


 右手に持っていた指輪をかばうようにしたために、少しだけバランスの悪い体勢のまま手を伸ばした時、あ、まずい と思った。


「……あっ!」


 左手で石を掴んだ瞬間に、私はバランスを崩してそのまま、ころりん、と次の段に転がってしまい、次に見えたのは、今まで降りて来た階段が上に登っていく様と、びっくりした顔の3精霊。


『『『フィラン!』』』


 私が必死に手を伸ばしても。


 3精霊が慌ててその力を使っても。


 ほんの少しだけ間に合わなかった。


「ふぁぁぁぁ-ーーっ! 落っこちるぅーーっ!」


 私はあんまりの恐怖に意識を失って……









「う~ん、びっくりした……。」


 気がつけば、そこにいた。


 黒く濁り澱んだ水の床と、細く生気のない木々の森に、真ん中には元気の無い大きな木の幹。


 大きな巨木から落ちて来たであろう枯れた葉が、ひらひらと水の上に落ちては、形を崩し、朽ちて沈んでいってしまう。


 そんな、命の音のしない、悲しくて寂しい場所。


 ここで待っていると神様に夢で告げられた、あの場所だと気が付いた。


「着いたんだ。」


 私は水の上を歩きながら、辺りを見回す。


「死ぬ思いで落ちたら着くって、もう一回異世界転生した気分だよ……。」


 いや、本当に死ぬかと思ったからね。恐怖で意識を失うとか初めてだったわ。


 なんて考えながらあたりを見回すが、誰もいない、夢で見たままの静かで寂しい場所。


 目の前の巨木が夢で見たあの木で間違いないだろう。


 だとしたら、フランと言われる彼女は一体どこにいるんだろう。


「どうやって逢いにいけばいいの?」


 途方に暮れてぽろっと口に出した時だった。


 その時、握りしめていた自分の手がほわっと光った気がして開いてみると、指輪が内側から揺れるように光った。


 その光は湧き出る水のようにあふれ、私の指の間から下へ下へと流れ落ちると、水の床の上に落ちると巨木に向かって伸びていき、か細い光の道が出来上がる。


「こっちに行けって事ね。」


 ぎゅっと指輪を握りしめて導かれるままに光の上を歩くと、巨木の目の前で人一人がすっぽり収まるような青い丸が出来ていた。


 振り返れば今来た細い光の道は消え、木の前の丸だけが弱々しく淡く青く光っている。


「これはもう、この丸の中に入れってことだよね? ……あー……今度はスカイダイビング系じゃありませんようにっ!」


 ぎゅっと両手に一個ずつ持つ宝石を指輪を落とさないようにしっかり握りしめて、私はその中に一歩、足を踏み入れた。

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