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【超不定期更新】アラフォー女は異世界転生したのでのんびりスローライフしたい!  作者: 猫石
『ルフォート・フォーマ』編

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1-092)兄の気持ちとピアスと遺跡。

 私達は、この階の目を付けていためぼしい素材の回収が済んだのを確認してから、11階に降りるための転移ゲートに向かって歩き出した。


「この木の実も美味しいですけれど、今朝食べたベーコンエッグ乗せトーストは本当に美味しかったですわ。」


 素材回収は、しゃがんだり、背伸びしたり、掘ったり、魔法を使ったりと、地味な作業の割にかなり体力を使うため、採集中に見つけた僅かだが体力と魔力回復の力を含んだ木の実をみんなで食べながら歩いている。


 前世では深夜勤務中にはよくミックスナッツやクコの実を食べていたのもあって、それに似た赤い果実を体力回復のためにかじっているのだが、よく考えたら、魔法で清浄化し、乾煎りしただけの木の実なんかを公爵令嬢に食べ歩きさせていいんかな……と罪悪感でいっぱいになる。


 しかしご本人は気楽なもので、今朝食べた朝ごはんを思いだしたように話しはじめた。


「あんな美味しい食べ物があったなんて、知りませんでしたわ!」


 なんて言っているがそれもそのはず。それ、完全に庶民食!


 今朝の私たちの朝ごはんは、携帯していた固めの黒パンをこんがり焼き、バターをたっぷり塗ってくれるアル君の横で、私がベーコンエッグを作り、マーカス様がトキワシグレを手絞りにしてジュースにするという、野営にピッタリのワイルドご飯だったわけだが、私とマーカス様がいつもの調子で焼いたバタートーストの上にベーコンエッグを乗せて食べ始めたのを見たビオラネッタ様が真似をしたのだ。


 何度か 本当にやめてください! と求めたけれど、それでもなお果敢にチャレンジすると言って聞かない彼女に、とりあえず服が汚れないように清浄の魔法を私とアル君で多重にかけた。


 結果?


 かけといてよかったよっ!


 真っ白なワンピースが赤と黄色の斑模様になるところだったよ!


 そんな周りの心配をよそに、いたくベーコンエッグ乗せトーストがお気に召したビオラネッタ様は今もまだうっとりしているのだ。


「熱くて、とろとろで、卵が垂れてたくさん汚してしまいましたけれど、一緒にのせて食べると美味しいと初めて知りましたわ。 かぶりつくというのも初めてでしたけれど美味しかったです。」


 温かいものを温かいままで食べる、というのもあんまりないらしくて、それも楽しかったようだが、こっちは気が気じゃなかったですよ? とは言えず、うんうん、と話を聞いている。


「お気に召してなによりですけど、公爵令嬢にあんなもの食べさせて私たち怒られませんかね……ほんと、すみません……。」


「怒られるなんてとんでもない。 とっても美味しくてびっくりしましたもの。 屋敷でもやってみようかしら?」


「それだけは! 本当にやめてもらえませんか!?」


 大きな屋敷では一人でお食事をとっているとのことだが、そんなことされたら私たち公爵様に余計なことを教えるなって呼び出されて怒られるんじゃないだろうか……と心配になってお願いする。


「あら、駄目ですか?」


「はい! もう、いろんな意味でやめておいた方がいいと思います! あれは庶民とか冒険者がやる食べ方だと思ってください……。」


 ぶっちゃけると、私も最初にやった時に兄さまに野営でもないのに行儀が悪いって怒られたんだけどね……ま、今は兄さまもそうやって食べてるけどね。


 ハンバーガーとかめっちゃ教えてあげたもん。


 でもさすがに公爵家の食卓では絶対に駄目だと思うので!


「もし、やりたくなったらアカデミーでやりましょう? みんなで。」


 にこっと笑うと、まぁ!、と嬉しそうに笑ったビオラネッタ様。


「ランチの時ですわね、楽しみにしていますわ。」


「はい、ぜひ。」


 取り付けた庶民ランチの約束に、ご機嫌のビオラネッタ様。


 本当に物怖じしないし、世間知らずなんだよなぁ……とこっそり溜息をついた。


「あれ? フィラン、疲れてる?」


 こそっと聞いてくれたのはアル君。


「そんなことないけど……年の離れた妹を持った気分です……危なっかしくて心配で胃に穴が開きそう……。」


 そうだ、その気持ちだ!


 もう、見守るお姉ちゃんの気持ちだよ。同級生なのに!


 そうだそうだ、私がお姉ちゃん! と納得していた私を見ていてプッと噴出したアル君。


「フィランもあんな感じだと思うけどね。」


「え!? どこが!?」


「そんなに意外?」


「私、もっとしっかりしてると思……いや、うん……うん?。」


 反論しようと声を上げたが、言っている内にどんどん自信がなくなって……そういえば兄さま、私の相手をしながら同じようなこと言ってた気が……するような。


「ようやくお兄さんたちの気持ちがわかった?」


「認めたくはないけれど、もうちょっと聞き分けの良い、いい子にしようと思います……。」


 ちょっと状況を理解してシュン……となった私に、笑って背中をなでてくれたアル君。


「大丈夫だよ、お兄さんたちはフィランが大事すぎて、大好きすぎて、ものすごく過保護みたいだしね。」


「それはフォローになってないよぅ。」


 笑って返事をしながら、少し前で手を振る二人に気が付いて少し歩幅を広げた時、ぐんっ! と髪を引っ張られて私は立ち止まった。


「いたっ」


「あぁ、ごめん。」


 あわてて私の肩をつかみ、前に行かないように止めてくれたアル君。


「僕のボタンにフィランの髪が絡まったみたい。」


「そうなの? ごめんね。 切っちゃっていいよ?」


 アル君の素敵な衣装に引っ掛けちゃってたみたい。


 今日はみつあみにでもしようかと思ったけど、ビオラネッタ様から、ふわふわの髪がとても可愛いですわって言われて、何もせずにおろしたままだった。


 兄さまの服にも絡まったことがあるし、やっぱり結ばなきゃだめだね、採集の時も邪魔だし。


「はい、ナイフ。」


「駄目だよ、こんな綺麗な髪なのに。 少し待ってね。」


 ナイフを差し出した私に、それは駄目と笑ったアル君は、私の髪を引っ張らないように髪を丁寧にボタンから外してくれているようだ。


「ほら、とれたよ。」


「ありがとう~。 でもまた絡んだら申し訳ないから、ちょっと結んじゃうね。」


 手櫛でささっと梳いてから、おさげを作って、くるくるっと高いところでお団子にすると、少し大きめのスカーフでカチューシャをするようにきゅっとまとめた。


「ほら、これでもう引っ掛けたりしないよ。」


「うん、さっきのも可愛いけどその髪型も可愛いね。 ところでフィラン。」


「なぁに?」


「珍しいね?」


「なにが?」


「耳。」


 少し頭は重いけど、綺麗にまとまったことに満足した私を前に、とんとん、と自分の耳をつついて笑うアル君に首を傾げた。


「耳? ……ったぁい。」


 私は自分の耳に手をやり、固いものに触れたのと同時に感じた痛みにちょっと顔をしかめながら納得した。


「あぁ、忘れてた。 ピアス。」


「前からしてた?」


 不思議そうに聞くアル君に、首を振る。


「ううん、最近ね、兄さまがプレゼントしてくれたから開けてもらったの。 お守りなんだって。」


 思い出したのは、養子縁組&婚約者決定の夜に兄さまがくれた、とてもシンプルな赤と緑の石が一粒ずつはめられたピアスだ。


 耳のそれを見せると、ちょっと微妙なお顔をしたアル君。


「お兄さんはよっぽどフィランが大事なんだね。」


「え? なんで?」


「お兄さんの髪と目の色だろう?」


「……えっ!?」


 そういえば……そうかも!?


 気が付かなかったぁ!


 兄さまの色、なんて言われて、気が付かなかったことにもびっくりして両耳を押さえてしまったら、ズキッと痛みが走った。


「気が付かなかった?」


「全然……。」


 痛みと恥ずかしさで真っ赤になってしまった私に、アル君は笑いながら頭をなでてくれた。


「フィランはそういうところも、鈍いからなぁ。」


「そ、そういうところって!?」


「恋愛面?」


「そ、そんなことないよう!」


「そうかな?」


「そうだよ!」


「じゃあ、演習が終わったら僕もピアスをプレゼントするからつけてね。」


 にっこり笑ってそう言ったアル君だけど、何言ってるの!?


「え? そんな、貰えないよ、お高いもん。」


「いつものお礼だから大丈夫だよ。 青と銀がいいかな?」


 銀の台座に青い石のピアスなんてどう? なんていうアル君。


「好きな色だよ。 綺麗だよね、青と銀。 昔ねぇ、銀の台にアクアマリンっていう石をはめたお気に入りがあったんだよ。」


 前世でだけど、あれは一番のお気に入りだったなぁ。 似たようなのこっちにも売ってるといいな……あ! デザインをヒュパムさん……じゃなかった、ヒューお兄様のところに持っていくでもいいかな?


「ほらね。 僕の話を聞いてないし、意味も解ってない。」


「え? ごめんね。 なぁに?」


 別の事で考え込んでしまった私を見下ろして、ふふっと笑ったアル君。


「いいや、そんなところもフィランらしいよ。 それよりほら、二人が待ってる。 いこう。」


「あ、まって……。」


 先に行ってしまったアル君を追いかけようとして、私は首をかしげた。


「フィラン、早く。」


「フィラン様、こっちですわ。」


「い、いま行きます~。」


 意味が解ってない? 何の?


 それにピアスの色……アル君、兄さまに会ったことあったっけ?


「……ま、後で聞いてみよ。」


 いまは演習を終わらせるのが最優先だよね、と、3人が手を振る方に、私は足を速めた。







 和気あいあいと、11階層の転移ゲートに向かう私たち。


「あら?」


 ビオラネッタ様が声を上げた。


「あれは何でしょうか?」


「ん? どれですか?」


「あれですわ。」


 ビオラネッタ様の指さす先にあるのは若木の茂み。


「木ですね。」


「木だな。」


「正確には嘆きの洞窟の10階層にしか成育していないヒライギ亜種ですよ。 地上にあるヒライギはつるんとした葉っぱなんですが、亜種になる葉っぱには葉脈が変化した棘があってちょっと危険です。 できる実はお酒につけると気付け薬の代わりになるんですよ。」


 アル君、マーカス様、私の順で答える。


 が。


「いえ、そうではなくて、その奥に何か見えたような気がしたんです。 あと、他の班の方がそちらに向かったような……何かあるのでしょうか?」


「あの奥?」


 首を傾げたマーカス様があぁ、と、手を打った。


「たぶん、古代の遺跡だよ。」


「遺跡、ですか?」


 首を傾げたビオラネッタ様に、マーカス様が説明をする。


「そう、王家が管理している遺跡だったと思う。 たしかずいぶん昔から結界で、Sランク冒険者でも立ち入り禁止、王宮騎士と魔術師団で時折調査に入るくらいらしい。」


「らしい、ですか?」


「私、前回気が付かなかったなぁ。」


「俺も近くでは見たことないよ。 誰か行ったのかもしれないけど、強力な結界が張ってあって入ることは絶対にできない場所だ。 演習ポイントを貯めるのが最優先だし、行ったやつらも保安要員の職員に止められているだろ。 先を急ごう。」


「そうだね。 僕たちは次の階に向かおう。」


「「はい。」」


 ここでタイムロスするのはもったいないもんね。


 アル君の指示に従い、私達は11階転移ゲートに入った。

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