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閑話18-2)イケメンに殺される!~過保護保護者による可愛いあの娘争奪戦!~

「本日はお招きありがとう。」


 柔らかで耳に心地よい聞きなれた声。


「本日は当屋敷までお出で頂けましたこと、コルトサニア家当主として大変光栄に存じます。」


「頭を上げていただきたい。 当家から是非にと願いに来たのですから。」


 おぉ、お貴族様の会話している。雲の上の世界が目の前で行われてる~。


 私は前世テレビで見た見た、と思いながら頭を下げてるんだけど、ん~、辛い。


 あと、聞いたことある声だなぁ……。


 でも低めというか……だいぶんしゃべり方が違うんだけど、発音の感じは似てるんだよねぇ。


 あ、でも、伯爵がこんな風にお迎えするってことは爵位がうんと上の人なのかな?


 誰だろう、気になる。 でもそれ以上に気になることがある!


 足がぷるっぷる! して辛いんだけど。いい加減、誰か知らないけど挨拶終わって!


 もうこの体勢やめたいのっ!


 そんな、若くなって強くなったはずの私の足と腰がそろそろ限界よ? って時だった。


「フィランも、顔を上げて楽にして……。」


 思い違いじゃない!


 ヒュパムさんに合わせて頭を上げたけれど、もう! もう!! その名前の呼び方とかで分かったんだから!


 ガバッと顔を上げて、声の主の話にかぶせ気味に私は叫んだ。


「兄さま! ヒュパムさんのおうちでなにしてるっ……のぉ……ぉぉ。」


「うん? フィラン? どうしたんだい?  あぁ、前のドレスもよかったけど、その色も似合うね。」


「……ぁりがとぉござぃますぅぅぅ……」


「フィラン嬢?」


 叫ぶはずだったのよ、『ここで何してるの! なにかする時はまずホウレンソウじゃなかったの!?』って。


 なのにお礼を言っちゃって、尻すぼみで声がちっちゃくなってしまったのはしかたないの!


 だって!


 だって!


 だってこんなの、もう、もう、こんな不意打ちないじゃない!?


 私は顔を両手で隠してうずくまった。


「何でもないですぅぅ……。」


「え? フィラン!?」


「フィランちゃん!?」


 大人たちが慌ててる声がするけど、大丈夫です、大丈夫です、気にしないで、心配しないで下さい。


 それが声に出ない。だって……だって、心が萌え殺されそうになって変な声が出そうになってるのを抑えているだけなんです!




 まさかの兄さまに、性癖ドストライクきたぁぁぁ!




 そうなのだ。目の前にいたのは貴族然とした格好の素敵兄さま。


 サラサラの赤い髪を後ろに撫でつけて綺麗な飾りをつけ、エメラルドみたいにキラキラの綺麗な瞳の目元には珍しく! 眼鏡! 眼鏡付けてる!! 何その細くて綺麗なメガネチェーン!


 で、ヒュパムさんとは正反対に、真っ白の布地に淡い金と淡い紫の糸で刺繍された、綺麗な貴族服を着た兄さま。


 眼鏡の細マッチョイケメン、性癖ドストライクキタァァァァッ(二回目)!


 ありがとう、ありがとう剣と魔法と煩悩の世界!


 正視できない! でももう一回見たい!


 しゃがみこんだまま、真っ赤になっているであろう自分の顔を隠している指の間からチラッと兄さまを見ると、心配そうにこちらを見ておろおろしているけど素敵兄さま。


 は~、イケメン!


 兄さま本当にイケメン!


 細マッチョだからそんなお洋服もよくお似合いですよ!


 これはもう、推しの交代やむなし!


 ごめんなさい、尊き羽ケンタウロスご兄弟様!


 そんな、頭の中で激しく悶絶する私にみんなが声をかけてくれる。


「フィラン、頭が痛いのかい?」


「フィラン嬢、ベッドに横になるかな? すまない、医者を……。」


「大丈夫です、呼ばなくていいですぅ~……。」


 ただのテレカクシなんです、とは言えず、ただ立ち上がると急にしゃがんでごめんなさい、と頭を下げた。


 そこから使用人さん達にも、心配をおかけしてごめんなさいと言うと、安心したような皆さん。


 私の奇行で心配かけてごめんなさい、反省。 兄さま本当にイケメン! 細マッチョだからそんなお洋服もよくお似合いですよ!


 ここがヒュパムさんとはいえ貴族様のお屋敷だから我慢していますが、いつもの商会のプライベートなお部屋とか私のおうちだったら、力いっぱい万歳しているところです!


 流石に、ここで万歳するのはおかしいって私にもわかりますからね。


 心の中で力いっぱい歓喜のファイアーダンスを想像しながら、促された兄さまが上座のソファに座った後、私もヒュパムさんの隣のソファに座った。


 っていうか、兄さまが上座にいるってことは、ヒュパムさんにも兄さまの本当の正体(侯爵家の昼行燈)ってばれてたんですね。


 ん? でも、あれ?


「今日はなんでヒュパムさんのおうちに集まったんですか? こんな格好までして……?」


 新しく淹れなおされた紅茶とお菓子も気になるけど、まず最初に聞くこと聞かなきゃ! と聞くと、きょとんとしている兄さまとヒュパムさんとトーマさんと……いや、ここにいる全員。


「え? なんか変なこと言いました?」


 きょろきょろしながら聞いてみると、頭を押さえた兄さまとヒュパムさんに、笑いをこらえているトーマさん。


「フィラン嬢、イトラ卿よりお話を伺われてないのですか?」


「話ですか?」


「昨夜話したじゃないか。」


 何の話してたっけ?


 う~ん、と、腕を組んで考えてみる。


 確かロギイ様の婚約者と勘違いされて兄さまに説明してもらって……それからロギイ様が50年も一人の女性を追い掛けまわしているって話になったんだったな。


 で、そしたら私のお貴族様的クラスメイトにはみんな婚約者がいるとかいないとかの話になったはずで……あ、そうそう。


「トーマさんのお嬢さんにも、婚約者がいるんですか?」


「えぇ。 侯爵家の三男の方ですね。 娘は一人娘ですので婿入りしていただく予定で話が進んでおります。」


「おぉ、本当だったんだぁ。」


 あの話は兄さまが話を盛ったものじゃなくって本当だったんだな、と納得していると、その兄さまがため息をついた。


「フィラン、その先の話を思い出してごらん?」


「え? ……何だっけ?」


 なんかあんまり思い出したくないっていうか、その後なんか色々言ってた兄さまにびっくりしたら腰ひねっちゃってめちゃくちゃ痛い! ってなって、兄さまのせいなんだからっ! と激おこの上、なんか言ってる兄さま無視して骨格筋系回復ポーション飲んでさっさとお部屋に行って宿題をしたような……。


 腰治ってよかったなぁ、若いって素敵。いや私のポーション効きすぎ。


 で、何の話してたんだっけ?


「あぁ、兄さまの虫よけに婚約者作れって言ったんだっけ?」


 おおー、よくできました~と、イケメン三人が拍手してくれる。


 なんだろう、馬鹿にされてるみたいで嬉しくないけど、素敵なイケメン三人の笑顔の拍手は嬉しい。


「その話なのだけどね、フィラン嬢。」


 私の横にいるヒュパムさんが、トーマさんから渡された紙を私に渡す。


「なんですか?」


「養子縁組の書類だよ。」


「……は?」


 誰と誰がよ!? なんて聞かなくてもまぁ、私と兄さまかヒュパムさんなんだろうけど、気づきたくない、聞きたくない!


「本日は耳がおかしくなっていますので、おうちに帰らせていただきたいと……。」


「現実逃避しないで、ちゃんとお話しようか、フィラン嬢。」


 ぽん、と肩を叩かれて見て見れば、いろいろ書いてある養子縁組にあたっての必要事項?


「えっと、家格を汚す行動をしない事っていうのがまず無理なので、ご遠慮します。」


「そこはちゃんとフィランに合った、褒めて伸ばしてくれるタイプの家庭教師を付けるから大丈夫だよ。」


 第一項目を指差して拒否すると、にこっと笑うヒュパムさん。


「じゃあ、コルトサニア伯爵家に対する貢献ができないので無理です。」


「こういう言い方はお好きではないかもしれませんが、フィラン嬢の希少性から、その存在そのものが貢献対象となりますし、それを差し引いても、ここ一年のフィラン嬢提案の新製品でコルトサニア商会、ひいては伯爵家へ多大なる貢献をなさっていますので大丈夫です。」


 第二項目を指差して拒否したら、にっこりとビジネス笑顔のトーマさん。


「しゃ、社交出来ないもん!」


「必要最低限と書いてあるだろう? 私も似たようなものだし大丈夫だよ。」


 第三項目を指差して拒否したら、兄さまに必要最低限でいいって言われちゃった。


「……うぅ……。」


 その後も重箱の隅をつつくみたいに、いろんなことを言ってみたけど、ぐうの音も出ないくらいに完璧に返答されてしまいました。


 ……いや、まって! 前提がおかしい!


「婚約者の話をしてて、なんで養子縁組の話をしてるんですか? このメンバーで! おかしい! 納得いく説明をしてください!」


 それに対して黙り込むイケメンたち。


 よし、勝った!


 ぐっと握りこぶしを握ってガッツポーズをしたところ、トーマさんが書類を目の前に置いた。


「どちらにするかはフィラン嬢が選んでくださってよいお話のようですが、これは関係者全員の利害関係が一致している案件ですので、不服なこともおありでしょうが、諦めてください。」


「利害関係の一致?」


 そう、と笑った兄さま。


「フィランの身を守るため、それから、わたし達も早く結婚しろとか跡取りを考えろとか周りがうるさくてねぇ……フィランが選ぶのはこの二つ。」


「選択肢すくなっ!」 


「まぁまぁ、そう言わずに。」


 私の横でニコニコ笑ったヒュパムさんが指を立てて私に示す。


「一つ、イトラ侯爵家の当主代理ミスルート・イトラ嬢と養子縁組の上、わたし、コルトサニア伯爵家当主ヒュパムと婚約をする。

 一つ、コルトサニア伯爵家当主ヒュパムと養子縁組の上、イトラ侯爵家のセンダントディ様と婚約をする。」


 頭の中にちっちゃい自分たちの姿を想像し、その上でこれがこうで……と矢印をつけて考える……。


「……な……」


「「「な?」」」


 私の顔を覗き込んだ大人の男たち。


 そこに、私の絶叫が轟いた。







「何その究極の選択みたいなの、やだぁ!」

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