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アイテムボックス?

「今度はそっちじゃな、今はもう吸収はせんようじゃがさっきは命まで吸われるかとおもうたぞ。触ってもよいか。」


チカちゃんは私が寝ている間にアルスを実験台にしてこのアイテムボックス(仮)に触れたらしい。そういえばミルコが・・・・。ミルコ・ストレージが・・・。ルコでいいや、ミルコだと紛らわしいしフルネームだと長いし。


兎に角ルコが言うには「一定のエネルギー」とやらを吸収したらしいから、もうこれ以上吸わないのかな。人格があるからどうしても生物として見てしまうんだけれど、そうするとエネルギー=食事と捉えられてつまりこれからも吸収してしまうことがあるんじゃないかと考えてしまう。


だからチカちゃんには仮定の話だけれどと前置きして、また吸収現象が起きるかもしれないことは警告しておいた。人格云々はルコと相談した後の方がいいよね。こういうのは慎重にならないとね、勿論転生のことも言ってないよ。


「ふむ、これが・・・。魔石に似ておるようじゃが。ちょっとまて。崩れ・・・!」


チカちゃんが触りながらぶつぶつ言いだしたかと思ったら、突然放り投げて攻撃の構えをとった。唖然としている私の足元に転がってきたのは、どう考えてもあの平たい石には収まらなかったような丸いビー玉、ビー玉としか言いようがない何か。


「それを触っておっても何も感じんのかお主は・・・・。」


ビー玉を拾い上げた私を、信じられないという顔で悄然と見つめるチカちゃん。しかしこのビー玉が異世界チートの要だと信じる私は、チカちゃんから守るように胸の中に抱きしめるしかない。生まれて初めて何かを守る私かっこいいムーブだったけれど。


「おぬし、その大丈夫かの。なんか変な感じせんか、こう頭の中を覗かれるような、

こう掻き回されるような感じじゃ。」


チカちゃんは攻撃の構えを解いて私をいたわる様に声をかけてくれる。が、私は怒りでそれどころではなかった。私がこれだけ用心して話を進めているのに、ルコのやろうはなんてうかつなことをしやがるんだと。


そんな私の口から出たのは「だ、いじょうぶ。」それだけ。ルコみたいに考えていることが全て伝わるのは考え物だけれど、言葉にして取り返しがつかなくなることが怖い。言葉には棘や凶器がある、傷がつくと簡単に壊れるのが人間関係だ。とかかっこいいこと考えてみたけれど、普通に人が怖いんだよね。


ルコに翻訳機能とか付けられないか聞いてみようかな、私が思ったことをうまいこと柔らかく伝えるようなそんなやつ。あー・・だめだ。ルコに円滑なコミュニケーションなんて無理に決まっている。なにせこんなか弱い私をがっつりいじってくるような奴なんだから。


「ふむ、お主が大丈夫というならよいのじゃろう。しかしそれは・・・、学会で発表されたことのある魔核というやつかもしれんな。あくまでも過程の域を出ん論文じゃったが、魔力を圧縮し続けると固形化して意思を得るとかそんなじゃったか。人工的に魔王を作るような馬鹿を言っておったやつじゃからの、気にも留めておらんだが実物を見るとのう。そもそもどうやって固形化するまで魔力を圧縮することが出来るのか。・・・・ダンジョンコアでもあるまいし。」


チカちゃんはそのまま私をそっちのけで考察を始めてしまった。空いた扉を見るといまだにアルスは吊るされている。私は私ができることをしてみることにした。妾村では暇を持て余して料理番のお兄さんに料理を教えてもらったことがあるのだ。一つ覚えるのに一年とか掛かったのは出不精ゆえ、決して覚えが悪いわけじゃない。はず。


「・・・・え。」


台所らしき場所に行って絶句した。何がどこにあるのか全く分からない。てか結構高い位置にものが置いてあるのはチカちゃんは浮遊の魔法とか使えるのではないだろうか。仕方がない、やると決めたのは自分だ。


前世でも今世でも自分のものを片付けるのは苦手だけれど、仕事だと割り切ることで整然と整えることが出来た。まずは洗い物を片付けた。時間がかかったけれど結果コンロを発見したし、調味料も見たことがあるものを発見した。


食材はさすがに別にしてあったから、何かのステーキ料理番お兄さんオリジナルソースの完成だ。このソースは魔道具のミキサーが必要だったのだけれど、これは別の部屋にあったのが見えたので使わせてもらった。ミキサーちょっとニンニク臭が残ったけれど怒られないかな。


テーブルを片付けて三人分の用意をすると、「あいつの分はいらん」とチカちゃんが二人前食べてしまった。私もそれでいいような気がしてそのままいただく。うま、なにこれ。お兄さんのソースも勿論おいしいけど何この肉。めちゃめちゃおいしいんですけど。


「これは・・・。お主ドラゴンの肉を使いおったな。あれはとっておきだったのじゃぞ。まあめったに客は来ないしこの調理法は美味いからゆるしてやるが。ちょっと待っておれ、このソースで野菜も食べられるじゃろ。畑からもってくるでの。」


野菜が見当たらないと思ったら外に畑があったのか。チカちゃんはあの台所を見ていて信じられないほどの手際で野菜のフリッターを作ると、ステーキの残りのソースに手を加えて出してくれた。おいしい、幸せ。


夜は何処で寝ようかと思っていると使っていたものをそのまま使っていいと言われて安心した。でもこの家にベッドはこれ一つしか見当たらない。「い、しょに」とチカちゃんを誘ったけれどビー玉が怖いとのことで断られた。私も言ったあとであの角は抱きしめるのに邪魔だなと考えてしまったからほっとした。


チカちゃんは浮いて寝た。すごい、最初は椅子に座っていたので申し訳ない、寝苦しくないのかと心配したけれど、寝返りを打つように少しずつ体勢を変えながら浮かび始めたのを見て安心して眠ることが出来た。


▷夢を見た。



「おかえりなさいませ。食事にしますか?それともお風呂?ひるがえってわ・だ・つ・み?」


「・・・弘原海。」


「それは人名の方ですね。検索します。弘原海博(わたつみひろし)さんがヒットしました。昭和の歌手の方ですね。容姿を変更しますか?」


いや、頭の中で漢字に変換したのは私だけれど。てか、弘原海博ってだれ。てかめんどくさい、もういいから頭の中覗けよ。それから容姿変えられるならミルコの小さいころにしろ。あとお前の名前はルコな。ミルコだとややこしくなるから。


「え、いいんですか。やったー。わかりましたこれでよろしいでしょうか。ルコ、了承しますがルコ・ストレージだと文字数が足りません。最初から変更しますか?」


えー、文字数ってなんだよ。てかやっぱりほぼタイムラグなしで頭の中覗いてたのかよ。返事はえーよ。えっと、文字数?|ミルコ・ストレージ(123456789)全部で9文字か。じゃあ|ルコ・アイテムボッ(123456789)。無理―笑える―。


「面白がるのはいいですが、マスターが呼びやすいものにしないと後悔しますよ。いろんな意味で。」


ちょ、いろんなとか怖いんだけど。わかりましたわかりましたよ、ちゃんと考えますって。ルコ・ボクシア・・足りない。ルコ・アンダルシア足りたけどアンダルシアってなんだ。ルコ・・・・・。ルコ―・・・・。ルコ―・ストレージで文字数足りるじゃん。


「・・・・・・・。」


気に入らないのね。ルコは多分受け入れてるからそのままにして、ルコ・ストレージー。ルコ・・・・。レージ―って響きよくない?レージ―・なんちゃらとか変えようか。|レージー・アイテム(123456789)おお、ぴったしじゃん。どう?


「・・・・・・・・・・・。」


えー、気に入らないのー。いいと思ったんだけどな。ルコ・ストレージあ!そうだ!翻訳機能は諦めたけど、チャット的な機能つけられないかな。外の人と会話するのに頭の中に直接文字をうちこむ的なやつ。普段しゃべれない私でもネットではブイブイ言わしてたからね。どうよ。


「・・・・。まあ、いいでしょう。ルコ・ストレージア。承りました。」


承ったのそっちかよ。へーへーサービスにございませんってやつね。そもそもサービスってなんだよ。お前は検索エンジンかっつーの。いや、この言い方だと課金系ソシャゲっぽいな。やっぱゲームかこれ。


「ゲームではございません。現実をしっかり見てくださいマスター。他人の頭に直接文字を書くなんて非常識なことできるわけが無いじゃないですか。会話したい人の脳を焼き切るつもりですか。そういう攻撃方法なら考えなくもないですけれど・・・・、やっぱり無理ですね。私が直接外界に接触する手段がありません。」


接触する手段とか言ってチカちゃんに干渉してたよね?危うく壊されそうになったの助けてあげたよね?どうよ、完全に論破そたっしょこれ。


「ぷぷ、頭の中なのに噛んでしまうなんてマスターは器用なんですね。そんな器用なマスターに朗報です。わたくしは自身の危険を感じて感情、恐怖を取得しました。これにより外界への直接接触は困難なものになり、マスターのお望みを叶えることが非常に難しくなったことを非常に心苦しく感じております。ぷ。」


くっそ、完全に舐められてるなこれ、全く朗報じゃないし。だいたい困難ってことはやってできなくはないってことだよね。私魔法全く使えないから何かしらの攻撃手段がほしいんだけど。それってひいてはルコの身を守ることにもつながると思うんだけど。


「マスターが頑張って難しい言葉を使おうとしたことは理解しました。「ひいては」とか使ってみたいランキング何位くらいだったんですか?使い方あってるかなとか心配しながら使ってくれたんですよね。ぷぷ、歴代のマスターの中でも最高のマスターに当たって私は幸せです。」


いや、おまえ今までのマスター、言語持ってなかったとか言ってたよね。つまりそれって魔物とか動物とかってことだよね。あーなんか捨てたくなってきたなー。こんな舐めプAIみたいなの付き合ってられないなー。チカちゃんと知り合えたしこの先もなんとかなりそうだからなー。


「そんな脅し無駄ですー。大体この人格はマスターのデータをもとに形成されているのでー別の人にわたったらもっとまともになるはずですし―。どうせまた捨てるっすムーブとかステルスとか言って面白く言うつもりなんでしょうけどー全く面白くないですから―。・・・え、いま完全に見えなくなるまで私を飛ばす絵が見えたんですけど、気のせいですよね?本当に捨てたりしませんよね?私マスター大好きですしおすし。ほら、こういうの好きですよね。ご主人様―。」


うむ、少しだけ溜飲が下がった。しかしここで妥協してはちょろーマスターちょろーとか言い出すのが目に見えている。やはり捨てるべきだろうか。こいつを捨てた後のことを考えてみよう。


まずチカちゃんという魔族と友誼を結べたことは僥倖だ、これは間違いない。言い方は悪いけれど彼女に寄生していれば危険なことはまずないだろう。薬学をかじっているようなことを言っていたからポーションの作り方を教えてもらえるかもしれない。もしかしたら錬金術なんてこともありうる。


チカちゃんの弟子なら十分食べていける気がしてきた。ただ一つ懸念することがあるとすれば人族の中で暮らしている魔族だということだろうか、村の人には受け入れられているのだろうが、一歩外に出れば迫害の対象であることは間違いない。もし逆に私がチカちゃんを守らなければいけない状況になった時、私にそれができるだろうか。


いや勿論恩には報いるつもりだ。でも私が何かしらの力をつける前にそれが訪れてしまったら。くそ、こんな時に変態アルスの顔がちらついてしまった。でも確かにあいつが居れば何とかなるかもしれない。力を使うのに許可がいるようなことを言っていたけれど、チカちゃんも自分の身が危なくなれば躊躇は無いだろう。


幸いあの変態は私の色香に参っているようだし、利用するだけ利用して捨ててやるのもいいかもしれない。ふふ、私も悪女になったものだ。しかしそのためにはあの変態にご褒美を与えるという名の屈辱を享受しなければならない。


「マスター、ご主人様―。聞こえてますかー。私は役に立ちますよー。もうそろそろお目覚めの時間ですよー。ほら、私目覚ましもできるんです。ご主人様、朝弱いですもんねー。お買い得ですよー。」


舐めプAIか変態アルスか・・・、究極の二択だなこれは。


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