アイスクリーム万歳
なんだかいるはずのない人間がいるような。
それが二人の感想だった。アメリアとキャロルは目を丸くしたまま顔を見合わせている。
「二人で一体何をしているんだ?」
ジョゼフは状況が理解できないでいる二人に尋ねてみた。
「ええと、お料理?」
何やらわけのわからない道具の前で息を切らしていた二人と目の前のハンドルが付いた樽のようなものを交互に見比べる。
「これが?」
「調理器具よ」
アメリアが胸を張って答えた。
「とってもゴージャスな食べ物を作っているのよ」
キャロルもそう断言する。だが、目の前の光景はあまりに意味不明すぎた。
ジョゼフも料理はしたことがないが、それでも目の前の光景が料理を作っているというのは信じられない。
「あと少しで終わるのよ」
そう言って二人は再びハンドルにとりついて、回し始める。
よほど重いのか腕まくりした腕に軽く血管が浮いた。
「代わりましょう」
そう言ってハンドルを代わりにつかむ。
額ににじむ汗をハンカチで拭っている少女たちはハンドルを回そうとしているジョゼフを黙ってみていた。
予想以上にハンドルが重かったのか歯を食いしばる。
しばらく回していた後、ようやくこれでいいだろうとアメリアが言った。
ハンドルを持ち上げて、中身を確認する。
間違いなくアイスクリームができている。
やったと二人で両手を打ち合わせて喜んでいる。ジョゼフとして箱の中身が一体何なのか意味が分からないのでそれを見ているしかない。
「味見する?」
そう言ってスプーンを渡された。
甘いミルクの味が口の中に広がった。独特のくちどけと食感が面白い。
「美味しいね」
「美味しいね」
少女達は微笑みあっている。そしてようやく本題を思い出した。
「そういえばキャロルに話があったんですが」
アメリアはそれを遮った。
「食べてからにしましょう」
暖かい暖炉の前にテーブルを持ってきて、お茶請けのクッキーとアイスクリームとお茶、すべてそろえたところで全員で小さく祈りの言葉を述べる。
「クッキーのアイスクリーム乗せ、こんな幸せの世界が」
アメリアが頬を抑える。
「美味しいよう、美味しいよう」
涙目でキャロルがアイスクリームをほおばった。
すっかり話をする雰囲気ではなくなった客間で、俺はいったい何のためにここまで来たんだろうとジョゼフは一人悩んでいた。