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 ユーフェミアは窮地に立たされていた。

 アメリアのことで話があるとスティーブンがやってきて、そのまま問われるままに正直に話してしまったのはなぜだろう。

 顔が笑ったまま目が笑っていない、それが一番怖い。

 スティーブンはただ淡々と話を進めているだけなのだが。無表情な圧力を感じる。

「ユーフェミア様、貴女は公爵令嬢だ、あなたに命じられれば誰でも言うことを聞かざるを得ない、それはわかっておられますね」

 丁重に、しかし真綿で首を締めるように話を持っていく。

「その件については悪いと思っているわ、でも」

「でも、何でしょう」

 背後にどす黒いオーラを感じる。

「それでも彼女が引き受けたことだわ」

「暗殺者への囮がですか」

 普通の貴族令嬢に頼むことでは決してない。しかしなんでか知らないが彼女ならできそうと思ってしまったのだ。

「彼女なら応えてくれると」

「人には向き不向きというものがあります。多少他より許容量が大きいかもしれませんが、それでも限度というものがあるかと」

 あくまで丁重に理詰めで攻めてくるのでやりにくいことこの上ない。

 ましてや非常識なことをしている自覚はある。

「でもね、彼女の命が狙われているのは事実なのよ」

 ユーフェミアは切り札を切った。

 何故かわからないが、アメリアとキャロルの命が狙われているらしいことは確かだ。本来なら狙われてしかるべきユーフェミアとエクストラを差し置いて。

「そうですね、なぜでしょう」

 そこがスティーブンにもわからない。

「ゾディークはいったい何を考えているのかしら」

 名門に生まれ、王太子妃に迎えられ順風満帆に生きてきたこの国の最高位の貴婦人、それ以外の情報は一切入ってこない。入ってくることは極めて少なくあの地位にあるなら当たり前の凡庸なことだけだ。

 相手は凡庸だとなめてかかっていたが、なぜかその彼女が動いた相手が男爵令嬢だ。もはや何を考えているのか意味不明もいいところだ。

 ましてや相手は決して野心家ではなく、それなりに聡明で度胸は据わっているが、平凡な結婚を望む一般貴族令嬢、どうしてこれを排除とか考えるのだろう。

「どうして私が無視されるのかしら?」

 ふつう狙われるのはユーフェミアのはずだ、その場合自ら囮を務めきっちり制裁を加えてやるつもりだったがまさかそんな斜め方向にずれるとは予想していなかった。


 アメリアはすでに動いていた。スティーブンが止めようとしたがすでに遅いのだ。

 腹はくくった、だがただでは死なない。

 とりあえず、自分に使えそうな武器はと考えて、皮袋に小銭を山ほど詰めてきた。もったいないが少量の銀貨も。

 銅貨ばかりでは貴族令嬢の財布としていささか怪しいからだ。

 小銭を詰めた革袋、それなりに殺傷能力はある。

 高校の授業で、護身術として柔道の型を習ったことがあるが、それを必死に思い出そうとしていた。

 それくらいしかないそのことを自嘲するが。

 目の前には例の女が立っている。今日は少しだけ地味な格好だが、それでも随分と張り込んだ服装だ。

 アメリアもそれなりに上等な服を着ているが。それよりたぶん一桁多い。

 アメリアは一歩進んだ。



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