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微妙な納得

 キャロルは内心背中に冷や汗をだらだらかきながら、それでも涼しげな表情を崩さなかった。

 幼少からの貴族令嬢としての教育の成果だ。

 しかし、これからどうしようか。キャロルはいまだによくわかっていないアメリアを横目で見ながら、出していた絵の道具を片付け始めた。

 もともと雑多な絵の道具を持ち歩くことで、いろいろとちょっとした小道具なども持ち運ぶ口実にしていたのだが。今は見られてはまずいものがたくさんある。

 アメリアを連れて元の場所に戻ることも検討しよう。

 状況がまずい方向に行ったと思ったらしいその男は逃げようとする。

 キャロルはできる限りその男の人相風体を覚えておくことにした。後で絵に起こすことは十分できる。その似顔絵をスティーブンに確認してもらえばいい。

 逃げていく男を見送っていると唐突にジョゼフが口を開いた。

「で、お嬢さん方、どういうトラブルに巻き込まれているんだ」

 唐突に聞かれてアメリアとキャロルは顔を見合わせた。

「どういうといわれても、ねえ」

「一言で説明できるようなものでもないですしねえ」

 二人で頭を抱えてしまった。

 ここでうかつに説明してしまっていいものだろかという煩悶とキャロルにとってはここで再び攻略対象にかかわっていいものだろうかという迷いがあった。

 その場で考え込んでしまった二人をジョゼフはしばらく見つめている。

「まあ、慎重なのは悪いことじゃないな、初対面のどこの誰だかにうかうかと相談事をするような女は、男のほうでも信用したくないからな」

 とても親切な言葉だ、だがだからこそ実に気が重い。

「いえ、私たちも何が何だかわからないので、説明のしようがないんです」

 前世を覚えていて乙女ゲームがどうのこうの、そんな説明をしようものなら頭がおかしいと判断されるのがおちだ。

 しかし、乙女ゲームの説明抜きでは完全に訳が分からないままだ。

 故に説明をしようがないというのが実情だ。

「もしかしたら、誰でもよかったのかもしれません」

「そう、もしかしたらたまたまだったのかもしれませんが」

 二人は意を決して説明を、唯一説明できることを口にした。

「私たち、第二、並びに第三王子の浮気相手に仕立てられたんです」

 訥々とした説明にジョゼフはしばし固まった。

「浮気相手?」

「実際は相手をしていません、私っぽい恰好をして私の名を名乗った相手と浮気してたんです」

 アメリアは自らの名誉のためにそこは譲れなかった。

「私は、書いた覚えのないラブレターを書いたことにされただけよ、まあ、必死に無実を訴えたのだけど」

 そして二人で深い深いため息をついた。

 思ったより深刻な悩みを打ち明けられたため思わずジョゼフまで途方に暮れてしまった。

「そうか、それは大変だったな」

 ジョゼフにはそれ以上何も言えなかった。

「いえ、誤解はすでに解けているのですが、やはり私たちも当事者という扱いになりまして」

「仕方のないことではあるんですが」

 とりあえずジョゼフは自分に持ち込まれた縁談の理由が薄々察しはついた。

 キャロルには罪はないし、さっさと結婚させて後顧の憂いを断ち切りたいエクストラの気持ちはとてもわかるが、やはり自分をまきこまないでほしかったと思った。



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