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お茶請け

「理解してるわけないじゃない」

 今日も今日とてただ菓子目当てにやってきたキャロルは一刀両断だった。

 薄々そうではないかと思っていたがはっきり言われるとさすがに堪える。

「にしても、むしろあんたのほうが、達観しすぎていない?本当に女子高生?」

 そう言われてアメリアとしても事実は事実としか言えない。

「うち、父さんの浮気で離婚してるでしょう、だから浮気する男ってないの」

「ああ、そりゃねえ」

 キャロルとしてもそこは納得するしかない。

 王子様方をゲットするということは浮気男をゲットするということに他ならない。ほかに病んだシスコンに優柔不断男。

「何考えてキャラ設定したの?」

 思わずそんな疑問もわいて来ようというものだ。

「まあ、考えてもしょうがないし、もうブリジットのことは終わったことにしよう」

 キャロルはさばさばと割り切ってしまった。

「まあ、自分はヒロインって舞い上がっちゃったんだろうけど、バッドエンドは結構えぐいのあったのにねえ」

 完全に他人事として、お茶請けのおしゃべりにしてしまう。

「ああ、あった、秘密裏に消されるってのが」

 むしろ悪役令嬢のほうがましなんじゃないかと思い出す。

 最悪でもどっかの宗教施設で幽閉どまり、一族郎党皆殺しに比べればかなりぬるいと思われる。

「まあ、悪役令嬢の懐柔に成功した以上そのバッドエンドはないんだけどね」

 アメリアの長い物には巻かれろ作戦は成功したといえよう。

「ああ、そういえば嫌なことを思い出したな」

 キャロルがお茶をすすりながら呟く。

「同じ職場で、浮気がどうのこうので略奪したのがいたのよ、それでもなぜか首にならなかったんだけど、でもある日突然出社拒否するようになってね、その分の仕事がこっちに回されて、風邪ひいたって言っても休ませてもらえなくて、仕事して、仕事してたことしか覚えてないや、そのままなんかぼんやりして、多分あの後死んだんだろうなあ、肺炎でも起こしたのか」

「間接的に、その略奪に殺されたようなもんじゃない」

 アメリアは心底あきれた。

「多分、略奪したもののうまくいかなくなったんだろうねえ、それで壊れて出社拒否、それは風の噂で聞いたんだけどね」

「いや、怒れよ」

「疲れて怒る気力さえ残ってなかったね。まあ、こっちもあっちも同じ、安全な線があって、ちょっとしたことからはみ出したら地獄へ真っ逆さま、その線は本当にちょっとしたことではみ出す仕様になってます、だ」

 それはちょっと否定できなかった。もっともアメリアはそれほどはみ出した覚えはないのだが、結局死亡した。

「それで、キャロルはどうはみ出したの?」

「ブラック企業に就職した」

「救いがなさすぎる気がする」

 とりあえず、アメリアは自分のところの領民と店舗の従業員がブラックでないことを祈るだけだった。

「うちもね、急ごしらえの作業場では、給食とかその辺を考えるように父親に言っておいたの、ご飯は大事だしね」

 この世界では兼業主婦は存在しない、何しろ電化製品のない世界では掃除洗濯料理だけですべての時間を使ってしまうのだ。

 その一角の料理を任せることができれば結構な労力の節約になるだろう。

「そのために料理人を雇ったの、後家さんが割と多いらしいよ」

 専業主婦が後家になればそれで生活が詰まる、外に働きに出られるならそれに越したことはない。

「うちもそれは考えるように言おうかな」

 アメリアはそう言ってお茶を飲んだ。



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