かかわってはいけない
ブリジットはすっ飛んできてアメリアの首に着けていたペンダントで首を締めあげた。
慌ててキャロルがブリジットを羽交い絞めにして引き離そうとする。
「どうしてフレッドにほかのヒロインが近づくのよ」
ブリジットの目が血走っている。
言い訳をしたいのだが、首を締められて声が出ない。
「ちょっと、ちがうからちがうからおちついてええええっ!!」
キャロルが誤解を解こうとするが既に十分ヒートアップしているブリジットには通じない。
さすがに放っておけなかったのかフレッドが割って入った。
「僕の知人の婚約者だよ」
そう言われてブリジットはアメリアを放す。そして羽交い絞めにしているキャロルに振り返ろうとした。
とっさにキャロルはブリジットの腕を押さえる手を強めた。
次は自分が首を絞められる。
「お願いだから話を聞いてええ」
「なら放しなさいよ」
「放したら首を絞めるつもりでしょう」
首を押さえて咳き込んでいたアメリアが、今度は前からブリジットの手を押さえる。
「今のうちに離れて」
即座に反応したキャロルが手を放し飛びのく勢いで離れた。
「私達は参戦するつもりはないから」
スティーブンが酒以外の飲み物を持ってきたのでそれで喉を潤しながら続ける。
「だから心配無用よ」
ブリジットはようやく周囲を見回す余裕ができたらしい。
周囲の冷たい視線、それにいたたまれない空気を感じて喉を鳴らす。
「いや、もう遅いと思うよ」
キャロルが離れた場所からそう言った。ブリジットは少しだけ正気に返って二人に話を聞こうとした。
そしてまだ正気に返っていない人間もいた。
ワンダはよそ見をするなとブリジットのドレスを掴んで引き寄せた。
「いつまで無駄話をしているんですの」
そしてブリジットの髪を掴んだ。
「いったいわね何すんのよ」
その場でワンダを張り倒した。そして我に返ったが、張り倒されたワンダがそれを許さない、ブリジットに倍返しの往復びんたを食らわせた。
「あ、ついに手が出た」
「いやさっきから隠しながら出てたでしょ」
アメリアはちょっと悲しそうにつぶやく。二人はそのままつかみ合いの大喧嘩を始める。
「あれ、典型的な三角関係の罠に入っちゃってるな」
キャロルがしみじみと観察しつつ言った。
フレッドは我関せずを貫いている。
まったく碌な男がいない。
「アガサ菓子店のパウンドケーキをよろしく」
アメリアがそう言って、スティーブンに巻き込まれないようにと離れるように促した。
アメリア、キャロル、スティーブンの三人は結局そのパーティをそのまま後にした。




