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デレイン2

 そして、デレインはエドワードのみならず、ビビアンとも円満な関係を築いているようだ。このままなら何の問題もない。

「どういう魔法なのかしら」

 アメリアはキャロルに訊いてみた。

 以前読んだ異世界転生ものなら魔法が使えたりするが、この世界には魔法はない。魔法があれば便利だと思うが、せいぜい産業革命一歩手前の状態だ。

 冷蔵庫があればと思うが、肉や魚はすべて塩漬けの燻製のみ、それも古くなると異臭がしてくる。アメリアの家の料理人はこまめに買い出しをするが、そうでない家では相当前の燻製を食べる羽目になっている。

 そんな魔法がなくて不便なはずの世界で、魔法のような光景が展開している。

「でも、この状態なら放っておいてもよくない?」

 キャロルはそう言ってお茶をすする。

 デレインの攻略対象はエドワードなのだろう。エドワードとビビアン二人と円満なら放っておいてももう、アメリアやキャロルとは関係ない。

 ただ、どうやってビビアンを攻略したのかが気になるだけで。

 デレインがキョトンとした顔でアメリアとキャロルを見ていた。

 ギクッとしたが、慌てて表情を戻し、素知らぬ顔をしてお茶を口に含む。

 デレインはそのまま顔を正面に向けて談笑を再開する。

「何なんだかね」

 キャロルはそう言ってお茶を飲んでいる。お茶はポットでもらっているので、まだまだ十分にある。

「そういえば、そちらのお家の商売はどうなっているの?」

 アメリアがちょっと小金を稼いでいるので、キャロルはどうなのかと聞いてみた。

「そういえば、ケーキのレシピで儲けてるんだっけ、高くて食べたことないけど」

 キャロルは嫌そうにつぶやいた。

「パソコンとか機械類の知識はあるんだけどね、この世界でそんなものあってもどうしろというのよ」

 機械といっても精密機械なら、ちょっとわからないだろう、もしかしたら十九世紀あたりの簡単な機械の元祖ならこの世界でも作れるだろうが、鍛冶などお嬢様がやるわけがない。

「設計図、引けるの?」

「いや、そういうのせいぜい滑車ぐらいだよ」

「滑車?」

「いや、滑車の原理知らない? 重さが半分になるんだけど」

 そうしてテーブルクロスに爪で数式を書こうとするが、寸前で思いとどまる。

 傷をつけたらえらいことになる。

「やらなくていいよ、どうせわかんないから」

 滑車か、井戸くらいしか使い道が思いつかない。

 そんな雑談の最中いきなりアメリアは肩を掴まれた。

「楽しそうね?」

 肩を掴む腕のあたりを見上げるとそこにデレインがいた。

「そんなに、不思議?」

 デレインはにっこりと微笑む、その笑みにアメリアとキャロルは引きつった笑みを返した。

「では、明日お話ししましょう」

 デレインは豊かな胸を揺らしながら胸を張った。


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