とんとん拍子
なぜかデートすることになっていた。
傍についていたマリーが一部始終を父親に報告した。嫁入り前に常についているメイドは、何かあった時にはアメリアの両親に報告する義務がある。
母の知人の貴婦人に絡まれ、それを助けてくれた男爵家の長男からデートを申し込まれた。
極めて簡潔な報告にアメリアの父親はお試しで付き合ってみればいいと言い出した。
「ブラウン家は結構大きな地所を持っている。地代だけで食っていけるぞ」
領地収入がいい家なら将来は安泰。実に簡潔な意見だ。
ブラウン家はほとんど領地で暮らしていて、スティーブンが侍従をしているのは嫁探しのためだろうというのが父親の言い分だ。
つまり真剣に結婚相手を吟味している。そういう相手の目に留まったというのならこれはまじめに考えたほうがいいのではないか。
アメリアとしてもその意見に反対するつもりはない。
イベントを避け、堅実な結婚相手を探しているのはアメリアも同じだ。
かくして、父親公認で付き合うことになってしまった。
「でも、相手が本当にお近づきになりたいのはお父様なんですって」
そう言うと、ちょっと胡乱な顔になる。
「パウンドケーキとクッキーの事業について話し合いたいんですって」
そうか、とあからさまにほっとした顔になる、いったい何を想像したんだろう。
「とにかく、こちらからもご挨拶しておこう」
なんとなく一人目で結婚が決まりそうな気がした。
もちろんサッサと結婚相手を見つけたい気持ちはあったのだが、いきなり一人目はどうだろうとアメリアは悩んだ。
お父様が悪い縁談ではないのでこのまま進めてはどうかという発言をしている。アメリアの考える条件とも合っている。
とにかく付き合ってからだとアメリアは待ち合わせのデート場所へと進んだ。
王宮の庭園の天使の像付きの噴水前、ここはデートの待ち合わせスポットとして有名なようで、同じように待ち合わせをしているらしい淑女たちの姿が見える。
果たして見つけてもらえるだろうか、ちょっと地味すぎただろうかとアメリアは悩んだ。
アメリアは白を基調として、後身ごろだけ紺色、スカートは紺色と白のはぎ合せというデザインのドレスを着こみ、髪はハーフアップ、薄化粧もしている。
背後にはマリーが控えている。
さすがに正式に婚約が発表される前となればデートであってもそばを離れることはない。
アメリアたちの姿を見つけた、
スティーブンがいそいそとやってきた。
そしてアメリアの手を取ってそのまま歩き始めた。
目指す先にはあずまやがあり、そこに茶器を並べている女性がいた。
王宮では事前申し込みをすればこうしたサービスが受けられる。
こういうところは結婚相談センターのような役割を果たしているらしい。
出されているお菓子は、ナッツを練りこんだ飴だった。
キャラメルのような触感のそれはちょっと歯につくのが難点だがとてもおいしい。
幸先がいいに越したことはないよね。
アメリアはそんなことを思いながら席に着く。
「パウンドケーキを売っているお家の女性に何を頼もうかちょっと悩みましたよ」
ナッツも珍しいものはそれなりに高価だ。アメリアは笑ってそれを流した。
「素敵な場所ですね」
奇麗な薔薇園が近くに見える。
このまま進んでも悪くないかなと思いつつアメリアはお茶を口にした。




