1章 転生したけどどうしよう ① まずは身の回りを調べてみよう
投稿するのがほんとに遅すぎてすみません。(こんな小説見る人いないと思うけど一応言っときます。)
何か、とても柔らかいものに体を包まれて揺られている感覚がする。優しい声が響いていて、時折安心するような甘い香りが漂う。
心が安らぎ、再び眠ってしまいたくなるが、ここはどこでどう言う状況なのかわからないので、そう言う訳にもいかない。
まずは、この歌声の主が誰なのかを確かめようとして、その時気がついた。
(目が開けられない...!)
何故かわからないが、目が開かないのだ。金縛か何かにかかったのだろうか。
とりあえず、目を開けることは後回しにして、他にも色々と確かめようとしてみる。
まず、耳を澄ましてみたが歌声以外には、鳥のさえずりや木の葉の触れ合う音が聞こえてきた。
(ここはどこかの森の中にある家とかなのかな?)
そんな考えに至った。何しろ、都会に住んでいたために、そういう自然の音を聞いたことがあまりなかったのだ。
ここは森の中の家と仮定して、次は体を動かそうとしてみる。
しかし、何かに包まれているからかあまり思うように動かせない。なんとか動かせないかと思いジタバタしていると声がかかってきた。
「あら、起きたのかしら?おはよう。」
思わずビクッとしてしまったが、敵意はないらしい優しい声なので、緊張を解く。
意思疎通ができそうなので話しかけることにした。
(あの、ここはどこですか?どうして私はここに?)
そう言ったつもりだった。が、出てきた声は
「あぅ〜あぇぅ〜!」
というなんとも間の抜けた声だった。
(えぇ?なんでこんな声しか出ないの?起きたばかりだから?)
そう思いもう一度言ってみる。しかし、
「あうぅ〜!おぇぁ〜!」
やはりそんな声しか出てこない。
何故。何故こんな声しか出ないの?少なくとも心当たりなどないのは明らかだ。
情報が少ない中での追加のわからない要素が来たせいで若干、いや大分混乱して来た。
私がうんうん唸っていると先程の声がもう一度話掛けてきた。
「どうしたの?お腹空いちゃった?」
こっちが唸っているのに随分と呑気な声だ。だが、朝だからか、それとも頭をフル回転しているからかお腹は空いている。とりあえず頷いてみた。
「私の言葉を理解しているのかしら?
わかったわ。ちょっと待ってて!」
声の主はそう言ってどこかに歩いて行った。
食事を用意してくれるのだろうか?
しかし、言葉を理解しているから頷いているのに随分と失礼なセリフだ。
目が開けられなかったり、体を自由に動かせないのに気づいて見下しているのだろうか。
でもどうやって気づいた?それに、普通見下していたら歌を歌ったり食事を用意してくれるのか?
どんどんと疑問が増えていく。
もう頭がパンクしそうなので、思考は一旦放棄しておく。
こんなに心地よいし、どうせなら食事をとったらもう一度寝てもいいのでは?
いや、そうしたらカロリーが…
そんなどうしようもないことを考えていると、ドアを開ける音が聞こえた。
「おまたせー!どれくらいの温度かわかんなくて結構経っちゃったー。」
普通温度にまでこだわるのだろうか?正直、熱すぎたり冷めすぎてなければどうでもいいのだが…。
まぁ、作った人に任せているので関係ない話か。
そんな風に考えて、何気なく食べようとしてまた気づいた。これ、食べられなくない?
もしや、この人は食事を出すだけ出して、私が食べられずに悶えるところを楽しもうとしているのだろうか?
いや...でも、温度にまでこだわるのに食べさせないなんてーー、はっ!この人は自分の食事しか持って来ていなくて、飯テロ(匂いと音で)でも起こそうとしているのか!?
思考がどんどん幼児退行して、さらにネガティブな考えになってくる。
私の悪い癖だ。被害妄想過ぎるのだ。
悶々としていると、声が
「入れ終わったわよー。飲ませてあげるわー。」
と言ってきた。
(どんなプレイだよ!!)
ついツッコミを入れてしまった。…声は出ないが。入れ終わったとは何を?何に?飲ませてあげるって、赤ちゃんか!
心の中で思う存分ツッコんでゼェゼェしていると、頭が急に冷静になってきた。
(…あ、体が動かせないからか。さっき考えてたばかりなのに、記憶力低下したのかな?)
そう考えると色々と納得がいく。
わざわざ私の為にコップに水でも入れてくれたのだろう。そして、動けない人に飲ませてあげるのは普通だろう。
(あああああ!それなのに、わ、私、プレイって、プレイって、それこそなんなのさー!)
凄い恥ずかしくなってきた。きっと今の顔はとても赤いだろう。
だが、そんなことは御構い無しに(もしかしたら気づいているかもしれないが)
「はい、あーん!」
と声がかかる。
やはり気恥ずかしいが我慢して口を開く。
「ゆっくりたくさん飲んでね!」
沢山?水ではなくてスープだろうか。
それなら、温度にまでこだわる理由に納得いく。どんな味なのか少し期待していると、口の中に何かが入る。液体ではない。なにかぐにぐにとしたものが入ってきた。
何コレ?おしゃぶりみたいだけど…おしゃぶり?なんで「たくさん飲んでね!」とか言ってたのにおしゃぶりなんて入れるのか。
「飲めないの?吸って飲むのよ。思いっきり吸っちゃって!」
吸う?訳がわからない。吸って飲む、おしゃぶりみたいな入れ物…哺乳瓶?
え、何?馬鹿にしていると言うのか。もうこれは疑いようの無いぐらいに馬鹿にしているのでは。
いや…体を動かせないから、哺乳瓶の方が飲みやすいとか、考慮してくれたと考えよう。無理矢理だが仕方ない。
哺乳瓶ってことはミルクが入ってそう…流石にそれはないよね?そう思い、思い切って吸ってみる。
はい。結論から言います。ミルクでした。ミルク味の〜〜、とかじゃなくて完璧にミルクでした。
もうそろそろ疲れてきた…何か言ってよ声の人〜。
すると、テレパシーか何かで伝わったのか話しかけてくれた。
「頭の良い子で良かったわ〜。ありがとう。無事に産まれて来てくれて。沢山食べて、沢山遊んで、沢山眠って大きく育ってね。」
と。
え〜っと、それって赤ちゃんとか我が子に言う言葉じゃない?見ず知らずの人、しかも大人に言うことではない気がするんだけどなー…。
……ん?赤..ちゃん?
私は、これまでの声の人の話し方、そして自分の体のおかしいところを思い返してみる。
動かない体。開かない目。哺乳瓶のミルク。温度。我が子への言葉。
……もしかして。もしかしての話、だけど、私…転生、しちゃった?
私の言葉を肯定するかのように、小鳥の高いさえずりが聞こえた。
この次も亀ペースだと思われます…
暇過ぎて何もする事ないときの暇つぶし程度の小説として気長にお待ちください。