第五十一話 威圧感を感じるようですが──あと、状況説明
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本日の労働を終え、居候先に帰ってみればなんと診療所にはレリクスがいた。
その隣には、いかにも『魔法使い!』と躰全体で表現しているような格好の少女。愛くるしい顔達の美少女ちゃんではあるのだが、残念なのは緩やかな服装をほんのわずかにも押し上げていない胸部の平原だ。
魔法使いちゃんは俺の顔を一瞥してから、続けて診療所に入ってきたミカゲに目を向けて、その胸元に視線が集中した。
魔法使いちゃんはペタペタと己の胸を触る。そしてもう一度、ミカゲの胸を見る。キュネイに負けず劣らず見事なまでの豊満な双丘を目にして──椅子から崩れ落ちた。
「おっぱいが……憎い」
((((怖っ!))))
可愛い少女の口から発せられたとは到底思えない地獄の底から搾り出したような呻きに、言葉を向けられたミカゲだけじゃなく診療所にいた全員が恐怖を覚えた。
『…………………………』
ふと、背負っているグラムから妙な雰囲気を感じた。念話でも喋っていないのだが、その無言の中に威圧感に近いものを覚える。
そんな中で、俺の目がレリクスの腰に下げられている『聖剣』に目が止まる。
──そういえば、こいつが『聖剣』の納められた神殿に向かってから、まともに顔を合わせていなかった。
最後に会ったのは、俺がコボルトキングとの戦いで重傷を負い、キュネイの診療所に運ばれたきり。その時でさえ会話らしい会話はなかった。
なので、聖剣を間近で見たのはこれが初めてだった。
所有者の邪魔にならずそれでいて一流の職人が手掛けたと素人でも分かるような、美麗な装飾が施された鞘。そして、刃は見えなくとも柄だけで『神々しさ』を感じさせるようなその様相。まさしく『聖剣』と呼ぶに違わぬ代物だ。
『…………………………』
ただどうしてだろうか。
その『聖剣』から、ただならぬ気配が漂ってくる──ような気がする。それこそ、俺の背中から発せられる妙な威圧感に似ているように思えた。
まるで、無言で睨みつけられているような気分になった。
──それからレリクスは俺に軽く挨拶をすると、
『……お話はわかりました。このお話はなかった事に致します。お邪魔しました』
と、キュネイに告げて早々に帰ってしまった。
もちろん魔法使いちゃんも一緒だ。別れ際は非常に礼儀正しく笑みを浮かべていたのだが、キュネイとミカゲの揺れる胸元に目を向ける瞬間だけは、親の仇でも見るようなエグい顔になっていたのが印象的だった。
「で、なぜにレリクスが。あいつ怪我でもしたのか?」
「……ユキナ君は気にしなくても良いわ」
「──まさかキュネイさん」
要領を得ない俺だったが、隣のミカゲは何かに気がついたのかハッと息を飲んだ。
けれども、ミカゲが何かを言う前に、キュネイは悪戯っぽく笑い、ウインクをしながら己の口元に人差し指を立てた。ミカゲは少し考えたそぶりを見せてから首を小さく縦に振った。
「え、なにさ。なんか通じ合ってるっぽいけど」
「ふふふ、女の秘密ってやつよ」
結局、キュネイとミカゲにはぐらかされたままその日は終わってしまった。
改めてここしばらくについての話をしよう。
まず、ミカゲについてだ。
ミカゲの想いを受け止めたあの夜から、彼女は俺と同じでキュネイの診療所に居候することとなった。そのため、朝の出発から夜の帰宅まで常にミカゲと行動するようになった。
おかげで、俺とミカゲの仲が『ただならぬ関係』であるのは隠しようがなく、傭兵組合の中で以前にも増して注目を集めるようになってしまった。
それに伴い、俺とミカゲが同じ居候先であり、その家主がキュネイということもあって、男の傭兵から殺意と嫉妬の眼を向けられることが多くなった。
ともあれ、この辺りはある種の有名税として甘んじて受け入れるしかない。いろいろな意味で素晴らしすぎる美女二人と恋仲になれたのだから、この程度で済んで良しとしておく。
後、俺と深い関係になるということは、当然キュネイとも強い関わり合いになるということ。あの夜に、キュネイは己が『淫魔』であることをミカゲに打ち明けた。実際に『角』を彼女の眼の前に露わにもした。
ミカゲは最初こそ驚いたものの、それ以降はこちらが驚くほどあっさりとキュネイの本性を受け入れた。
当人曰く。
『さすがはユキナ様! 人ならざるものさえも我が物にするその器の大きさ! このミカゲ、感服いたしました!』
と、全力で肯定してきた。その順応の早さに俺も感服したよ。とりあえず、余計な問題が起こらなくてホッとした次第。
キュネイとミカゲ、二人の関係も良好だ。もともと、キュネイから言い出したことであるし、こちらはそれほど心配はしていなかった。
夜の生活については──あえて語るまい。強いて言えば、ミカゲがキュネイから英才教育を受けてなんだか凄まじいことになりそうな予感──とだけは言っておこう。
「そんな二人を相手に、正面からしっかりと受け止めちまうあたり、相棒が本当に末恐ろしいですよ、俺は」
俺も成長してるということだ、グラムよ。
さて、後は傭兵活動についてだな。
こちらはこれといって特筆するようなことはない。前述にある通り、周囲からの視線を集めている以外は問題なく、ミカゲとともに傭兵として依頼をこなす日々だ。
変化したのは、俺の内面。
ミカゲの想いを受け止めた以上は、今のままでは駄目だ。『英雄』云々はともかくとして、彼女が『主』と仰ぐのならばそれに見合った男にならなければならない。というか、恋人よりも弱い男とか恥ずかしい。
「相棒は自分自身に見栄を張るためには、本気になるよな」
基本的に、やりたくないことに対しては全力拒否の姿勢を取るが、逆を言うと自分に正直に生きるためには全力を尽くす男なのだ、俺は。俺が自身を『格好悪い』と思っているならば、それを覆すために本気になるのは当然のことだ。
まずは当初の通り『三級傭兵』を目指す。ただ、最終的な目標はミカゲと同等の『二級傭兵』だ。
「一級傭兵は目指さないのか?」
「槍を本格的に扱い始めてまだ一年も経ってねぇのに、さすがに無茶が過ぎるだろ」
一対一であればコボルトキングを余裕で倒せるミカゲが二級止まりなのだ。聞けば、一級傭兵の実力は国の将軍とかそんな猛者中の猛者レベルの超人だとか。
『グラム』という相棒を手にいれたとはいえ、俺は単なる村人出身。一級傭兵など、レリクスのように類い稀なる才能を有した者でなければ到達できない領域だ。それこそ、人生の全てを『傭兵』という職に捧げなければ到底辿り着けないだろう。
二級でさえ、傭兵の中ではほんの一握りの実力者しか至れないのだ。目標としては十分すぎるほどだ。
そんなわけで、新たな目標を得た俺はさらなる躍進のために頑張るのであった。
どうも久々にあとがきに登場するナカノムラです。
前書きにも書きましたが、『勇者伝説の裏側で俺は英雄伝説を作ります 〜王道殺しの英雄譚〜』の総合評価がついに50000ptに到達しました。これもひとえに読者様方の応援があってこそです。返信こそ最近サボっていますが、感想文をいただくたびに励みになっております。
本当に、ありがとうございます。
引き続き頑張って連載していくのでよろしくお願いします。




