第二十話 デートするようですが
短めの代わりに二本仕立てです(一本目)
間男をぶっ飛ばした翌日。
俺は王都で二度目の〝でぇと〟と洒落込んでいた。
お相手はご存じ、路地裏で最高級娼婦と名高いキュネイ。
──昨日『銀閃』の話をした少し後、キュネイが切り出したのだ。『助けてくれたお礼がしたい』と。
常日頃から差し入れを持ってきたり話し相手になってくれた事もあり、ここで少し位は〝お返し〟をしておきたいと言いだした。もちろん、娼婦としての本分に関わる事以外という条件付きでだが。
俺としては──仲良くなりたいという下心はあったが──特に具体的に何かを求めていたわけではない。ただ、折角の好意を無下にするのも悪いと思い、どうせならと言う気持ちでデートの約束を取り付けたのだ。
「君も物好きね。日陰で働いているような女をわざわざお天道様の下に連れ出すなんて」
「ま、たまには日光を浴びないとどんなに綺麗な花も枯れちまうからな」
俺の隣にいる今のキュネイは、医者の時に着る羽織に加え少し露出を控えた服装だ。路地裏ならいざ知らず、表を歩くには普段の格好は目に刺激的すぎる。ただでさえ今でもすれ違う通行人の視線を引っ張ってしまうほどだ。
「それで行く当てはあるのかしら?」
「生憎とまだ王都に来て日が経ってないもんでね。今日はデートがてらに散策しようと思ってさ」
嘘ではない。デートの口実には丁度良かったが、王都に来て早々に傭兵稼業に専念してしまったため、こうしてゆっくりと王都を巡る時間が無かったのだ。
──初日に指輪のお嬢さんと観光したが、歩けたのはごく一部分だけだしな。
「こら」
キュネイが身を乗り出してきて俺の顔を覗き込んできた。
「また他の女の子のこと考えてる。しかも今度は銀閃じゃ無くて別の子でしょ」
──だから、なんで分かるの?
「私くらいになれば、男の顔を見れば考えてることは一目で分かるものよ」
得意げなキュネイに俺は降参とばかりに両手を挙げた。
「失礼した。こんな極上の美人さんが隣にいて他の女のことを考えるのは礼儀知らずだったな」
「ふふふ、分かればよろしい」
言葉だけは咎めていたキュネイだったが、気を悪くした様子も無い。明らかにからかわれているが、美女にされると不思議と悪い気はしなかった。
と、キュネイはいきなり俺の腕を摑むと、抱きしめるように寄り添ってきた。腕が豊かな胸の間に挟み込まれ、素晴らしいたわわな感触が腕に伝わってくる。その他、密着度も上がり彼女の体温も感じられた。
「って、さすがにこれはちょっと!?」
「だーめ。他の女の事を考えていた罰よ。しばらくはこのままエスコートして頂戴」
未だ『漢』に至っていない俺にとって、この密着距離は刺激が強すぎる。だが、俺の悲鳴(?)を完全に受け流し、キュネイは悪戯っ子のように微笑む。
もしかしてこのお姉さん、ちょっとSッ気無いですかね! こんな美女に攻められるのもまた一興ではあるかも知れないが初心者の俺にはやっぱり辛いよ!
──などと心の中で絶叫しつつも、本日のデートはスタートしたのである。
前話で野郎を逆さ吊りにしたことに対して
『逆さ吊りにしすぎると頭パーンするぜよ』な感想が多く寄せられました。
ぶっちゃけ、そこまで深く考えてないよ!!
という感じです。
要は、これ以降に『頭パーン』な感想は控えてもらえると助かります。
どうせなら『ここが面白いよ』とかそんな感想の方が作者としては大歓迎です。
では以上、ナカノムラでした




