第百話 side話を合わせると百話なんて普通に超えてますが!!
どうもナカノムラです!
みんな、今回は嬉しい情報があるからあとがきもしっかり読んでくれよな!
王都に戻った俺たちは、その翌日に傭兵組合へと赴いた。一日を空けたのは、なんだかんだで疲れが溜まっていたからだ。
復興作業に参加した傭兵の報酬は個別に支払われるが、総括した報告は一番階級が高いミカゲから組合にしなければならなかった。
階級としてはミカゲの方が上だが、実際に作業を仕切っていたのはアイナであるし、そもそもこの依頼を受けると言い出したのは俺だ。なので当然、俺もアイナも同行している。キュネイは診療所で仕事なので今はいなかった。
報告する相手は、組合の幹部であるカランだ。厄獣暴走の一件があってから何かと顔を合わせるようになった。こちらとしても知った顔が相手だと気が楽で良い。
もっとも、カランとしてはいささか印象が違うかもしれない。
「――――というのが、事の経緯です」
「…………」
ミカゲが一通りの説明を終えると、カランは腕を組んだままじっと目を瞑る。不機嫌というわけではないが、浮かべている表情には険しさが混じっていた。
やがて深い溜息をつくと、険しさは和らぐも顔には困りはてたような色が含まれていた。
「はぁ……とりあえずおおよその事情は把握した。まずは復興作業の方はお疲れ様。後ほど窓口で報酬を受け取ってくれ」
そう言ってから、カランは眉を潜めて俺を見た。
「それにしても、君はつくづく面倒事に首を突っ込むな」
「いや、俺に言われても……偶然だからいやほんとうに」
こういうのは、どちらかというと勇者の役割だろう。行く先々で困難に直面し、見事乗り越えて仲間との絆を育み、人の輪を広げ、力を研鑽していく。実に素晴らしい躍進物語だ。
『行く先々で面倒に巻き込まれ、そいつを叩き潰して女の子と仲良くなり、いろんな所に伝手を作り、力を身に付けていく。うん、どっかで聞いた物語だな』
おかしい。内容は同じはずなのにまったく違って聞こえてくる。
「それで、組合は今の報告を受けてどのような対応を?」
「組合内だけの裁量では処理しきれないだろう。まずは状況を王城へと報告。その後に組合に改めて依頼が発行されるか、あるいは騎士団が派遣されるかだ」
ミカゲの問いかけに対するカランの回答はこちらの予想通りだった。
「礼を言う。君たちのおかげで、組合は大きな失態を招くところだった」
「余計な真似を、とは仰らないのですね」
まるで挑発するようなアイナの言葉に、俺とミカゲはぎょっとした。一方でカランはといえば肩を竦めた。
「恥を承知で言えば、その気持ちもほんのわずかだがあるにはある。だが、ことの重大性を理解できないほど、私も馬鹿じゃない。多少のお咎めは受けるだろうが、それも最小限に留まったと考えるべきだろう」
俺たちがあの洞窟を調査しなければ、新たな事実は判明することはなかった。言い換えれば、以前に調査を行った傭兵のミスも明るみになることはなかった。
しかし、事は魔族絡み。後にあの洞窟に関わる新たな問題が浮上したとき、傭兵組合は間違いなく責を受ける。それを考えれば、最初の調査からまだ日も浅い現段階で発見できたことはむしろ僥倖だったに違いない。
「そうですか。でしたらこちらとしては何も言うことはありません」
「それは良かった。……そういえば、君は最近になって傭兵になった新人だったか。確か名前はアイナだと」
「はい。今回の復興作業が初依頼です」
カランは己の顎に手を当てて、記憶を探るようにアイナの顔をしげしげと見据える。
「以前、どっかで会わなかったか?」
「さぁ……どこにでもあるようなありふれた顔ですから」
にこりと笑うアイナに(こんな別嬪さんがありふれてたまるか!)と俺は心の中でツッコミをいれる。
「…………いや、ナンパ男みたいな台詞を聞かせて悪かった。ちょっと君の顔に見覚えがあったような気がしてな。そんなはずがあるわけないか」
はっはっは、とカランは頭を掻きながら笑った。
それからぼそりと。
「さすがに王女様がこんな場所にいるはずがない。名前も同じだが他人の空似だよな、うん」
己に言い聞かせるように呟き、しきりに頷く。
凄いなアイナ。あまりにも堂々としすぎて、逆に元王女だと思われてないぞ。
「ところで、仮に件の洞窟に関する追加調査の依頼が組合に回ってきた場合だが、それを君たちが行う気はあるかい? もしその気があれば、私が手を回して優先的に君たちに回すように計らうが」
「いえ、結構です」
「迷う素振りすらないとは……」
バッサリと切り捨てる俺に、カランが顔を引きつらせながらもまだ食い下がる。
「……おそらくこの件は、難易度は別問題としても実績を重ねる上では相当なものになる。もしかすれば、依頼主である国や政府との繋がりを得られるチャンスにもなるぞ。それこそ今後の昇格に関しても間違いなく有利に働く」
「そいつは四級に任せて良い仕事じゃねぇだろ」
たまに忘れられているかもしれないが、俺の傭兵としての階級は下から二番目の四級だ。新人から一歩脱却したような位置にいる。少なくとも、国からの依頼を任されるような階級ではない。
国や政府との繋がりを得られるという話だが、もう現時点で今さらなのだ。何せ彼女の一人が元王族であるし、元王家御用達の凄腕鍛冶職人もいる。
あと、ミカゲたちにも話したとおりに面倒なのだ。俺としては積極的に国家規模の問題に関わりたくはない。
俺から快い返事をもらえずに、カランが救いを求めるようにミカゲとアイナに視線を投げかけるが、彼女たちは苦笑するか首を横に振るかだけだ。
「……了解した。こちらとしても、将来有望な傭兵に無理強いをして関係を悪くはしたくないからな。さて、この件に関してはここまでだ」
カランは居住まいを正すと、少し真面目な顔つきになる。何だか話が続きそうな雰囲気だが、こちらから報告することはないぞ。
「……まさか、何か問題でもありましたか?」
ミカゲが先んじてカランに聞くが、彼は首を横に振った。「いや、別にそういった話があるわけではない。むしろ君たち――特にユキナ君にとっては益のある話だ」
カランは一呼吸を入れてから、ズバリ切り出した。
「ユキナ君。君に三級への昇格の話が組合内で持ち上がっている。まぁ、私から上に進言したんだがね」
――前にも似たような事があったな。
お待たせしました。
ナカノムラアヤスケです。
いよいよ『王道殺しの英雄譚』の発売日が近づいてきました。
さぁ皆さんお待ちかね。
諸々の許可を頂きついに公開。
イラストレーター『をん』さん作のキャラクターデザイン発表(前編)でございます!
まずはこちら!
我らが愛すべき主人公
ユキナ&グラムです!
ちょっと生意気な感じが素晴らしいですね。
野郎の説明はこのくらいにしましょう。
お次は、書籍の序盤に登場する謎のお嬢さん!(白々しい
ナカノムラは一目見た瞬間に惚れそうになりました(錯乱
もうね、ナカノムラの中に漠然とあった可憐なお嬢様像がそのまま具現化したと言っても過言ではないです。
さすがはをんさんです。感無量でした。
あと素晴らしいものをお持ちで。何がとはあえて言いませんが、本当にも素晴らしいものをお持ちで。
そんなわけで今回のキャラデザ公開(前編)は以上となります。
後編はまた後日のあとがきに発表する予定なのでお楽しみに。
以上、ナカノムラでした!