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第九十五話 特に危険はなかったようですが──

八月中は修羅場で本当に書く時間がなかったんですよ。

でも、そろそろいい感じに落ち着いてきたので更新ですよ!


 件の洞窟は、村から少し離れた場所にあった。


 内部は特に目立ったものは無く貴重な鉱石が取れるわけでも無い。それなりに広いという点を除けば、誰もが好んで入るような場所では無かった。


「まぁ、そういう立地だからこそ、後ろめたいことをするには十分なんだろうけどな」


 洞窟内の通路を松明で照らしながら、俺は呟いた。他の三人もそれぞれ光源を手に後から続いている。


 村を出てからここまで、ミカゲが遭遇し倒したというゴブリンの死体は確認しているものの、生きているゴブリンはおろか厄獣に遭遇することも無かった。


「少なくとも、魔法陣の機能が完全に生きているという事はなさそうですね」 


 アイナの言うとおりなのだが。


「ですが、通路の影に身を潜めている可能性も否定できません。油断されぬように」

「ええ、もちろんです」


 最後尾を歩くミカゲの言葉に、アイナは頷いた。


「……何だか私だけ、もの凄く場違い感が出てる気がするわ」


 と、自信なさげなキュネイ。確かに、白衣は纏ってはいるがそれでも段違いの色気エロスを放っているのは間違いない。いや、誰も彼もパッと見でも凄いですけどね。どこがとは言わないけども。


 どこがの事はおいておくとして、この中で傭兵でないのはキュネイだけ。本職は医者なのだし仕方が無い事であろう。


「アイナちゃんがこの手の探索に慣れているのは意外すぎるわ」

「アークス王家は現場主義ですから。護衛付きではありましたが、軍の部隊に同道して行軍訓練や野営の設置方法も一通り学ばされるのです。もちろん、洞窟探索も訓練の一つとして何度か行ってますし」

「……王族って、もっと優雅な生活をしていると思ってたんだけど」

「国の経済を回すために、ある程度の贅沢はさせて貰っていますよ。一部の老舗産業は、王家からの消費があってこそ成り立っているところもありますからね」

「あー、なんか分かる気がする」


 キュネイが感心したように頷く。理解して貰えたことでアイナも少し得意げに笑った。


 会話に花を咲かせる彼女らに、俺は少しだけ咎める視線を向ける。


「ガールズトークするのは、仕事が終わってからにしような」 

「「ごめんなさい……」」


 俺に叱られてシュンとするアイナとキュネイ。落ち込む様子もちょっと可愛いなと思ってしまうのは、惚れた弱みでもあるかもしれない。


『なんにせよ、緊張の緩んだ仲間を叱るのもリーダーの勤めだ。ハーレムパーティにありがちな、女の子可愛さでなぁなぁに済まさない当たり相棒は立派だな』


 ハーレム言うなって。妙な罪悪感が押し寄せるから。女の子が可愛いのは否定しないが、可愛さが原因で酷い目に遭ったら悲惨だしな。


「ユキナ様。村人たちから聞いた話では、そろそろ広い空間に出る頃合いです」

「分かった。みんな、いつでも戦えるように準備だけはしとけ」


 ミカゲの忠告に従い、俺は全員に戦闘準備を促した。何もいないことを祈りつつも、何があっても動ける心構えだけは作っておく。


 そうして俺たちは、洞窟内の広い空間に足を踏み入れた。


「松明だけじゃちょっと照らしきれねぇな」

『とりあえず、ヤバそうな気配が今のところないってのだけは伝えておくぜ』


 光源が手元の光だけでは見通せないほど広い。厄獣が飛び出してくると言うことはなさそうだが、ここが具体的にどのくらいの広さがあるのか判断できなかった。


「お任せ下さい。光源ライト


 アイナが杖をかざして唱えると、その先端から光の玉が現れる。杖から離れて天井近くまで上昇すると炸裂、辺り一面を光で照らした。


「おお、すげぇ」

「一度使用すれば、しばらくの間は周囲一帯を照らし続けることが出来る魔法です。光源の移動は無理ですが、限られた空間内の明かりを確保するならもってこいです」


 おかげで、空間の奥までしっかりと確保された。アイナを連れてきたのはどうやら大正解だったみたいだ。


 照らし出された空間は結構な広さを有していた。それに、至るところに獣の骨や錆びた剣や盾が転がっていた。おそらく、ゴブリンがここにいた跡だろう。


 事件の当時はここにゴブリンが溢れかえっていたようだが、今はその影も無い。俺たちと入れ替えでやってきた傭兵たちによってゴブリンは全て討たれており、死体も焼かれて残っていない。


「それで、コレが例の魔法陣ですか」


 広間の中を進むと、ちょうど中央部分の地面に見覚えのある召喚の魔法陣が残されていた。至るところが破壊されており、パッと見でも生きているようには思えなかった。


 膝をついて魔法陣の残骸に手を触れるアイナ。


「…………機能は完全に停止しているようですね。最近になって起動した様子も修復しようとした痕跡もありません」


 俺は視線を僅かに背中の黒槍に向けた。


『お姫様の見解通りだ。しっかりとぶっ壊れてる』


 二人(一人と一本?)のお墨付きが出た。最悪の事態は免れていたようだ。尤も、この魔法陣が生きていたとすれば、洞窟に入る手前の時点で多くのゴブリンを相手にしていた事だろう。


「ということは、ミカゲが遭遇したゴブリンはこの魔法陣に召喚されたわけじゃ無くて、本当に野生のゴブリンだったって事かしら」

「あるいは、召喚された時の残りがそこら辺をほっつき歩いていたかだな」


 俺はミカゲに目を向けた。


「少なくとも、私がここしばらくで見回りを行っていた範囲内で、ゴブリンが群れを作っている様子はありませんでした。見逃しが無いとは言い切れませんが……」

「復興作業に一段落付いたら、他の傭兵も駆り出して調べてみるか」

「それがよろしいかと」


 せっかく立て直した村がまたゴブリンに破壊されては堪ったものでは無いからな。


「……………………」


 ふと気が付くと、アイナが未だに膝をついたままじっと魔法陣を見据えていた。その表情は真剣そのものだ。


「…………」

「アイナ?」

「――あっ。す、すいません」


「何か気になる事でもあったのか?」

「いえ……その」

「とりあえず言うだけ言ってみろよ」


 アイナは言葉を濁すが、俺は先を促した。

 

どうも、ナカノムラアヤスケです!

前書きの通り、八月前半はコミケで、後半は別件でクッソ忙しくて本当に執筆する暇がありませんでした。

九月に入りそれもひと段落し、ようやくこっちの活動を再開できそうです。


さて、ご存知の通りこの作品はネット小説大賞金賞をいただき書籍化するわけですが、

ツイッターでもご報告いたしましたがついに発売日が決まりました。


『勇者伝説の裏側で俺は英雄伝説を作ります 〜王道殺しの英雄譚〜』

 発売日は十月三十日。

 また、今作品のイラストを担当してくださるのはあの『をん』さんです!


 知らない? 

 今すぐググって!

 あの人の描く女の子ってすごいから! 色々と! 具体的にはおっぱいとか!

 ナカノムラの手元にはすでにイラスト等が届いているのですが、もうユキナに嫉妬するレベルの出来でしたから。

 詳しくは発売日をお楽しみにしてください。


 では以上、ナカノムラでした。

 

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