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第八十五話 可愛いようですが

今回は短めです。


 ――そんなこんなの事後処理みたいなことを終え、無事に俺たち・・・・はキュネイの診療所に戻ってきた。  


「アイナです。新参者ではありますが、先輩方にご迷惑を掛けぬよう精一杯に頑張ります」


 礼儀正しく、キュネイとミカゲに頭を下げるアイナ。格好は以前に街中で遭遇した時のような外套姿に近かったが、あのときよりも丈の長いローブを羽織っている。それに傍らには宝玉が先端にはめ込まれた長い杖。


 まさに、魔法使いのスタイルだな。


「歓迎するわ、アイナ様。お姫様をお呼びするには少し手狭かもしれないですけどね」

「ありがとうございますキュネイさん。それと、私の身はもう王女ではありませんから。以降はそのように扱っていただけると嬉しいです」

「分かったわ、アイナちゃん」

「ふふ、ちゃん付けなんて幼い頃に母に呼ばれて以降ですね。ちょっと新鮮です」


 早速会話に花を咲かせるキュネイとアイナ。美女と美少女の語らいって絵になるよなぁ、という感想はともかく。


「妙に仲良くね?」


 俺はキャッキャと楽しげに会話をしているキュネイたちを見ながら、ミカゲにそっと語りかける。


「ユキナ様が王城で目が覚めるまでの間、我らだけで話をする時間が結構ありましたから。アイナ様は最初、少し緊張気味でしたがキュネイと話しているうちにすっかり打ち解けたようです」

「この中じゃキュネイが一番コミュ力高いからな」


 娼婦という商売はただ単に躯を売るだけではなく、相手をする男をいろいろな意味で楽しませなければならない。その中にはもちろん、会話も含まれている。それに、キュネイが面倒見の良い性格だからな。


「つか、お前はアイナを『様』呼びなのな」

「こればかりは性分なのでどうにも。もちろん、アイナ様には許可を頂いております」


 こいつはこいつで相変わらず真面目だ。


「ミカゲさんもよろしくね」


 キュネイとの会話を終えたアイナが、今度はミカゲに向けていった。


「はっ。我が身命を賭してお守りする所存です」


 ミカゲはキビキビとした振る舞いで返し、頭を下げた。そのさまにアイナが少し困ったように苦笑している。


『王位継承権を放棄したっつっても、アイナが王家の血筋を引いてることに変わりはねぇ。武芸者にとって、君主の一族を守護するってのは最大級に名誉なことなのさ。気合いが入るのも当然だ』


 よく見ると、狐耳や尻尾が緊張に強ばっているのが分かった。まさにグラムの言うとおりだ。


 とりあえず、狐耳をもふもふしておく。


「うひゃっ!? ゆ、ユキナ様?」


 突然耳をもふられたミカゲが顔を真っ赤にして振り向いた。その間にも俺は柔く狐耳に触る。


「守るのは良いんだが、最初からそんなに肩に力が入ってたらすぐに疲れるだろ。もうちょい気楽にいこうぜ」

「…………はい」


 少しだけ自覚はあったのか、ミカゲの纏っていた張り詰めたような空気が和らいだ。


「さすがはユキナ君。私の方からミカゲに言ってもあまり効果がなくて」

「ま、すぐには無理かもしれないが追々慣れていきゃ良いだろうよ」


 キュネイに言葉を返し、俺はミカゲの頭から手を離した。


「あっ…………」

「ん?」


 顔を赤らめたままのミカゲの口から声が漏れる。その名残惜しそうな視線は、それまで耳を揉んでいた俺の手に注がれていた。


「あ、いや……何でもないです」


 俺が見ていることに気が付いたのか、ミカゲは慌てたように目を逸らした。


 もしかして、もっと撫でて欲しかったのか?


「ほら、アイナちゃん。可愛いでしょう。普段は真面目なのに、ここぞと言うときにああいった所を見せてくるからギャップがたまらないのよ」

「ええ、分かります。もの凄く分かります。初めてお会いしたときの様子からはまるで想像も出来ませんでした、確かに可愛いですね」

「はっ!? ちょっとお二人とも、何を言ってるのですか!」


 によによしているキュネイとアイナに気が付いたミカゲがまたも慌てた。


『どうやら、相棒のハーレムは円満な関係を築けそうだな』


 ハーレム言うなよ。でも、三人とも仲が良さそうで何よりだ。心配はあまりしていなかったが、気兼ねなく言葉を交わしている場面を見ると安心した。

  

ここから何話かはいわば『インターバル』のようなものでしょう。

大きな話と話の間にある、日常的な会話シーンです。

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