第一話 魔王が復活するようですが
どうも、ナカノムラアヤスケです。
今作は非常にマイペースに書いていることと、今度こそ完結を目指していきたいので以下の更新ペースにしていきます。
1:ある程度書きだめしてから更新
2:書きだめが続く限りは毎日更新
3:書きだめがなくなった場合は書きだめ期間に以降
おそらく、書きだめがなくなった時点でまた一ヶ月近くは書きだめ作業に入ると思います
──どうやら、そろそろ魔王さんが復活するらしい。
そんな話を聞かされたのはいつだっただろうか。多分まだ年齢が一桁の頃だったかな。
なんでも、魔王とやらは数百年に一度復活しては、世界に災厄を振りまく大悪党なんだそうだ。
俺にとっては、丹精込めて育てた農作物を食い荒らす厄獣の方がよっぽど大悪党に思える。
でもって、その魔王に対抗するために産まれるのが『勇者』という、神様に選ばれた代行者。弱きを助けて悪を挫く正義の体現者だとか。
とりあえず、勇者さんには悪戯ばかりする村長の馬鹿息子をどうにかして欲しい。我が家の壁に落書きしたのを発見したので、とりあえず裸に剥いた後に全身に落ちにくい塗料で落書きして木の上から逆さに吊しておいたが。
まぁ、本音を言ってしまうと理解の埒外にあるお話だ。こんな片田舎に住まう俺にとって、世界の危機と言われてもいまいちピンとこない。それよりも、のんびり農作物を育てながら嫁さんもらってのんびりと暮らすほうが大事だ。
と、そんな事を漠然と考えていたのだが。
「僕が──勇者ですって?」
「そうでございます。貴方こそが神に選ばれし者。我々が待ち望んだ人類の希望──勇者なのです」
──目の前で繰り広げられる光景にはさすがに唖然としていた。
「人類の希望……」
呆然と呟いているのは、レリクスという村の青年だ。歳の頃は俺と同世代で村一番のイケメンだ。ただのイケメンにあらず、頭も良ければ性格も良い。なんでこんな片田舎に産まれてきたんだこいつ、と疑問に思わずにはいられないほどのイケメン。
村の若い衆のリーダー的存在であり、次期村長の座も夢では無いとされている。この村の長は代々世襲制だが、村長の一人息子が馬鹿すぎるのとレリクスがイケメンで優秀すぎるので仕方が無い。あんな人様に迷惑を掛けてばかりの阿呆が村長になったら、村が壊滅する。だったら、レリクスのような将来有望な若者に村を任せた方がよっぽどいいだろう。
そんな次期村長候補であるレリクスは、村の中央部にある広場で、とある一団と対面している。
王都からやって来た『教会』の者たちだ。
教会というのは勇者を──正確には勇者を選定する立場にある『神様』を信仰する宗教団体らしい。らしいというのは、神様とかにはあんまり興味なく、教会の正式名称も全く覚えていないからである。
この村にも教会はあるが、神父様はもう棺桶に膝裏近くまで埋めたようなよぼよぼの爺。一方で王都から来た教会の面々はどれもが精悍な顔つきの若者ばかり。先頭に立ってレリクスと喋っているのは、集団の中で一番装飾が成された衣を纏う男。
自己紹介が遅れたが、俺はユキナ。おそらく肩書きを言葉にすれば『村人その一』といったところか。レリクスと教会の一団が対面している光景を、それを囲う野次馬の中から眺めている所存である。
教会の男が更に続けた。
「貴方の右手には産まれながらにして痣があるはずです」
男の言葉に、レリクスはハッとなって己の右手──その甲を見た。俺も以前に見たことがあったが、確かに痣があったな。 レリクスの甲を見て、男は笑みを浮かべながら言った。
「それこそが、神に選ばれし者に刻まれる聖痕。貴方が紛れもなく勇者である証明です」
「僕が……神に選ばれし者」
あー、なんだかこれって歴史的瞬間に立ち会ってる?
……とりあえず、後でレリクスの奴にはサインもらっておこう。
暫くしたら『勇者様直筆! 勇者として見定められた記念サイン!』といった謳い文句で売り払うのもありだ。〝ぷれみあ〟が付けば良い値段で売れるかも知れない。
と、完全に他人事に思っていたのはそれから四日後までのお話であった。
その日も汗水垂らして農作業をしていたら、突然村長の家に呼び出された。
……まさかあの悪戯小僧を裸で吊した件を咎められるのか?
もし咎められたら村長も裸に剥いて吊してやると心に決め、村長宅を訪れた。
「おじゃまっしまぁす」
「来たか、待っていたぞ」
扉を開けて最初に出迎えたのは村長。当初の予想に反し、怒っている様子は無いんだが何やら深刻な表情を浮かべている。
中に促されて居間へ向かうと、見覚えのある男性。確か、四日前に、何かしらの用事で王都からこんな片田舎の辺鄙な村に来た、教会の人だっけか。
「……え、どゆこと?」
状況が飲み込めずに思わず村長の方を向くが、彼は黙って男の対面にある椅子を指さすだけだった。
訳も分からずにとりあえず教会の男の対面に座る。
教会の男が口を開いた。
「初めまして──とは言うが、私の顔は昨日の時点で見覚えがあるだろう。改めて自己紹介だが、私はペイン。教会より司教の位を拝命されている者だ」
司教がどれだけエラいか不明だが、とりあえず腰を低くして対応しておくのが吉だろう。
「えっと……俺はユキナです」
「知っているとも。今日君をここに呼び出したのは他ならぬ私であるからな」
「はぁ…………それで、教会の司教様が『村人その一』である俺に何のご用でしょうか。あいにくと、教会の人の説教されるような事は身に覚えが無いんですけど」
あ、村長の顔が引きつった。心の中では多分『うちの息子に大恥かかせておいて!』とか考えてんだろう。
あの一件に対して俺は後ろめたい気持ちは一切持っていない。現に、悪戯の被害に遭っていた村民からは賞賛されたからな。農作物を駄目にされて怒り心頭に来ていた人ばかりだったのだ。木に吊すだけで済んだと考えて欲しいな。
馬鹿息子のお話は今度にしておくとして、今は司教様だ。
「私がここにいる時点で、これからする話にある程度の察しは付いているだろう」
「いえさっぱり。皆目見当も付きません」
間髪入れずに素直に答えると、司教様が固まった。だって、本当に思い至らないんだもん。仕方が無い。
相変わらず、主人公に男っぽい名前をつけないナカノムラです。