第六十三章「お前の傘に」
レイのリハビリ奮闘記~1~
レイ「き、君はもしや……夕立ちゃん!?」
夕立「はい!お久しぶりです海岐華さん!」
レイ「なんでここに?」
夕立「とりあえずコーヒー牛乳をどうぞ!」
レイ「あ、ありがとうなのだよ……。」
黒い雪原編
第六十三章「お前の傘に」
『カサが倒れたああぁぁぁぁぁぁ!!!』
実況のムサシが叫んだ。
……正直、耳が痛い。
黒の闘技大会、二回戦第八試合。
ステージの上には二人の少女。
倒れた少女、カサはうつ伏せでピクリとも動かない。
もう一人の立っている少女、まぐろは今にも倒れそうに肩で息をしている。
観客の声なんて聞こえない。それくらい意識が飛びそうで、辛い。
もうすぐで……10カウント終わる?
…………終わる?終わるなら、早く終わって……よ……。
「……はは……まぐろ……。」
「……?」
倒れた少女カサが、消え入りそうな声で話しかけてきた……。
何故だろう、観客の声は聞こえないのに……何故、カサの声は聞こえるんだろう。
「強いな……お前は。」
「………………そうですか?」
「ああ。私は……。」
『10!!試合終了!!勝ったのは神崎まぐろ!!』
……いつの間にか10カウントが終わっていたようだ。
観客が歓声をあげる。
……五月蝿い。
カサの声が聞きたい。
何か喋っているだろう。
煩わしくて仕方が無い。
まぐろは大きく息を吸った。
「うるさい!!!!!」
まぐろが叫んだ。
呆気をとられて会場は瞬く間に静かになった。
「…………まぐろ……?」
「カサさん、何ですか?」
「えっ…………あ、ああ。私はお前の事を見くびっていたよ。勝てる。そう思っていた。」
「……はい。」
「……馬鹿か私は。まぐろ、お前のその不屈の精神……認めざるをえないな。」
「……ありがとうございます。そして、ありがとうございました。」
「ああ。こちらこそ、ありがとう。」
・・・・・・・・・
「お疲れ様、カサ。」
「……お疲れ様だ、イツキ。」
その日の夜……部屋へと戻ったカサを待っていたのは、イツキだった。
「怪我の方はどうだった?」
「大したことはない。3日程安静にしておけば問題無いと言われた。」
「そっか……。」
「イツキ。」
「ん?どうし……。」
いつになく真剣なその瞳に、イツキは引き込まれそうだった。
「……?どうした、イツキ?」
「……え……?ああ、いや、何でもない。それで?」
……言葉を失ってしまった。
「ああ。……イツキに、話があるんだ。」
「何でも話していいぞ。」
「……試合の事だ。私はあの時、お前に見てもらいたいと言った。横で戦いたいと言った。」
「うん。」
「……恥ずかしいから忘れてくれ。」
「…………え?」
カサはうつむいた。
……心なしか顔が赤い。
「あれは……私の本音だ。だが…………今日負けて分かった。私はまだ実力不足なんだ。」
「……。」
「イツキにはイツキの隣で戦うべき人物がいる。そう思った。」
「……そうか。なら、早く追いついてこい。」
「え?」
イツキはカサの頭に触れて、そっと抱き寄せた。
「ひゃっ!?なんだ、イツキ!?」
「隣で戦えると思えるように。早く追いついてこい。……今日はお疲れ様、ゆっくり休んでくれ。」
カサは、イツキの胸で少し震えていた。
「………………ああ。……ごめんイツキ…………負けちゃった…………。」
「まだ俺がいる。優勝してくるから……待っててくれ。」
「ああ……ああ……!!」
カサの瞳から、一粒の涙がこぼれた。
「涙って…………なあ、カサ。今日はお前の傘になってやるから。だから……思う存分泣いてくれ。」
「は?」
「え?」
「は?」
神崎まぐろ二回戦突破。
カサ二回戦敗退。
こんにちは、アフロ月です。
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
終了!カサVSまぐろ!
勝利したのはまぐろでした。…………カサも悔しかっただろうな。
そして前書きには、レイのリハビリ奮闘記が始まりました!どうにか戻ってきてほしいですね!
最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You。




