第五十七章「ハツガリズム」
ヒラメ「私達の出番がありませんわ!」
ガウラ「……うん。」
雨燕「大会出場者や隠密部隊はまだしも、観客である私達は本当に出番が無いですよね。」
サゴ「ちょっと待つッス!そんなこと言ってたら俺なんて絶対忘れられてるッスよ!」
スズメ「私もよ!」
オナガ「ん。それは私だと思うよ。」
エト「俺もだなぁ。」
ヒナ「ヒナもだよ!」
大鷲「いや、マジで俺だな。」
親父「あ、うん。誰だてめぇ。」
黒い雪原編
第五十七章「ハツガリズム」
戦いは激化していた。
イツキは十六夜という名のレイピアを振り、細かい動きで立ち回るハツガに苦戦を強いられている。
「ったく、速いな……!」
「……。」
それでも手は休まない。
斬りつけ、刺突、ありとあらゆる手段をもってダメージを与えようと…………いや、正確に言えばダメージではない。
「オオオオ!!!!」
「ふっ……!!!」
金属音とともに、火花が散った。
ハツガが右手のナイフでレイピアを退けると、左手の光線銃で発砲。
至近距離ならば片手光線銃は脅威だ。射速は関係無い、その連射性での連続攻撃はまず防げない。
「くっ……!!」
イツキが咄嗟に避け、レイピアでちょいと銃口をずらす。
すかさず突き。
ハツガがナイフで威力を殺し、またもや退ける。
そして発砲。……二発。
一発は避け、一発はレイピアで受ける。そのまま攻撃に転じる。
しめた。ハツガが銃を落としたのだ。
チャンスだと思ったのだが……ハツガがイツキの懐まではいり、ナイフを振り上げてきた。
銃を落としたのはわざと。
狙いはこっちだったらしい……が。
「まだまだ!!」
イツキはレイピアをハツガに向かって投げた。
意表を突かれたハツガは、振り上げつつも距離をとる。
そのせいで、攻撃が甘くなってしまった。
イツキの左肩を掠めた。
「……ちっ。」
「舌打ちかよ……当たってるけど。」
「致命傷じゃない。」
「……成程。」
……先程も言ったが、この二人はダメージを与える攻撃をしようとはしていない。
隙をみせることが少ない二人、まずはダメージへと繋げる隙を作ろうとしているのだ。
小さなものでは対処される。
大きな……大きな隙を。
「……キツくない?」
「何が?」
「レイピア無いけど。」
ハツガの言う通り、先程投げてしまったので、イツキの手元にはレイピアが無い。取りに行こうものなら……やられる。
「でも、ハツガもだろ?さっき銃を落としたもんな。」
……そう。
ハツガも先程、ナイフでの一撃をいれるため、銃をわざと落とした。
取りに行こうものなら、イツキがレイピアを拾う時間を与えてしまう。
どうやらお互い、今、手元にある武器で戦うしかない。
「私にはまだダガーナイフがある。得意武器……だから。問題ない。」
「……俺もさ。素手だけじゃないんだよな。」
「だと思った。そのポーチにはまだ何か隠してる。でも私はその何かを出す暇を与えない。」
「……。」
本気だ。
イツキは一応構えをとった。それは素手戦闘にしてはおかしな構えだった。
「……一度だけ見た。」
「見たことあるんだな。」
レイピアを持っているときと何ら変わらない構え。
違いは、レイピアを持っているか持っていないか。
「でも、私は有利。それは変わらない。」
「さてね。」
イツキが言った瞬間、ハツガは駆けた。
二歩で間合いまで入った。
ナイフでの突き。
何度も何度も見たその攻撃を、イツキは手首を掴んで止めた。
「っ!?」
今だ。イツキはそう思って、空いた手でポーチの中からある物を取り出した。
「それ……。」
「そう。ミノリさんのを借りた。」
イツキが取り出したのは、ミノリの武器、脇差し。
高エネルギーの刃を持ったその脇差しは、鞭のように「しならせる」ことができる。
イツキが脇差しを振り下ろし、しならせるとハツガの身体に巻き付けた。
「……何をするの?〇〇〇?」
「いや、しないよ!?シチュエーションだけでそういうこと言うのやめてくれる!?」
「……投げ飛ばす?」
「当たり。それじゃあ早速……!!」
「……スカーフの中には不思議がいっぱい……♪」
……?
……突然。
……ハツガが歌い始めた。
その異様な光景、そして不意に歌われたことで、イツキの手が止まった。
「今日の不思議は光線銃……♪」
・・・・・・・・・
「歌?突然なんだよ。」
会場内に紫が侵入している……という情報を聞き、日光、ツユ、紅の三人は会場内を監視していた。
歩きながら、ツユが話してくれた話に疑問を持つ日光。
「はい。小さい頃、お姉ちゃんがよく歌ってくれた歌があるんです。」
「それはどういう歌なの?」
紅も興味を持ったようだ。
「スカーフの中には不思議がいっぱい♪今日の不思議はふんふんふーん♪という歌で、これが凄いんですよ!」
「え?凄いって……どう凄いの?普通の歌だと思うけど。」
「ふんふんふーんの所なんですけど、歌う度に歌詞が変わるんです。そしてその歌詞の通り、スカーフから色々な物が出てくるんですよ!」
意気揚々と話すツユ。
「ファンタスティック!!……って、手品みたいに最初から隠してた、みたいなもんだろ。」
「ゆ、夢を壊さないでください!でも、今回の試合でも歌ってくれると思いますよ。」
「イツキとの試合でか?」
「はい。だって試合前、私の光線銃を借りましたから。」
・・・・・・・・・
貫いた。
イツキの身体を、緑色の軌跡が。
ハツガの左手には光線銃が握られていた。
「がはっ……!!何で……もう一丁……持って……るんだ……!?」
「イツキと同じ。借りた。」
握られていた脇差しが手から離れる。
膝から崩れ落ちるイツキ。
……やばい……!!
負けるわけにはいかないのに……!!ここで、ハツガに……負ける……わけには……!!
………………!!!
「私の勝ち。」
「く……そっ……ぉぉぉぉ!!!!!」
『イツキが倒れたぁぁぁぁ!!!レフェリー!カウントにはいるぅぅぅ!!!』
『1!』
『2!』
……確か……10カウントだったっけ……。
なら、まだ時間はある……。
『3!』
「ハツガ……正直、驚いた……!」
「……うん。」
『4!』
ハツガは銃やナイフを納め始めた。
勝ちを確信したのだ。
『5!』
イツキは両手を地面へ突けた。
ハツガは油断している。
勝ちを確信した者は、油断をするのだ。
『6!』
「でもな……!!俺は!!!ここで負けるわけにはいかないんだ!!!!!」
『7!』
「レイさんに顔向け出来ない!!仲間に罪悪感を抱かせたくない!!」
「何の話……?」
『8!』
「俺はリーダーだ!この一行のリーダーだ!!背負ってるもん全部守りたいんだよ!!!!」
『9!』
準備完了……!!
「反自然!!!」
「!?」
イツキが叫ぶと、ハツガの足元にあったステージが消え去った……否、砂になった。
……反自然。
桃の国で茶々猫に教えてもらった力。
噛み砕いて説明すると、自然を分解する力だ。
ハツガは対処出来ず、その足は地面を踏んだ。
『…………!?!?!?こ、これはぁぁぁぁぁ!!!』
『どうやらハツガさんの足元が砂になったようだけど……僕にもよく分からないな。』
会場がざわめく。
それはそうだ、訳が分からないことが起こったから。
「勝敗は!!!」
イツキの叫びで、会場は静かになった。
「勝敗はどうなんだ!!レフェリー!!」
「えっ……!」
『レフェリーも混乱してるぜ!!』
『ルールによると、決着はレフェリーストップか、ステージ場外へ落ちた場合に決まる。10カウントまでいってなかった。ハツガさんの足はステージ場外の地面についている。ということは……これはイツキの勝ち、なのでは?』
『だそうだ!!二回戦第一試合!!勝者は霧雨イツキ!!!』
逆転勝ち……といったところか。
安堵するイツキは息を一つ吐いた。
「痛っ…………。」
「…………ごめん、イツキ。」
「いやいいよ。……強かった、し、最後は賭けだった。」
「……反自然?」
「うん、ハツガはまだ、見たこと……あはは、なかったはずだから……。」
「……待ってて。すぐに治しにいこう。」
「おう。」
ハツガはイツキの身体を起こしてあげた。
霧雨イツキ・二回戦突破。
ハツガ・二回戦敗退。
スカーフの中には不思議がいっぱい♪
今日の不思議はアフロ月ー♪
どうも、アフロ月です。
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
久々にこの歌が出てきましたね。
確か、深淵の箱庭編シンリン村にてお披露目が初でした。
激戦の結果、イツキの勝利で第一試合は幕を閉じました。
鍵は本当に見ていなかった期間でしたね。
反自然。…………正直私も忘れていました。
最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You。




