第四十八章「雨燕の悩み事」
紅「米が欲しい。」
犬槇「俺もだ。」
イツキ「分かります。」
雨燕「こっちはパンばかりですものね。私もお米が欲しいです。」
ヒラメ「いや、朝はパンですわ。」
紅&犬槇&イツキ&雨燕「お前とは分かり合えない。」
ヒラメ「ええ……。」
黒い雪原編
第四十八章「雨燕の悩み事」
霧雨一行唯一の青出身、雨燕。
青の国傭兵育成機関「海底の古城」のやり方に付いていけず、機関を裏切り霧雨一行に加わった彼女。
結った紺色の髪がさらりと揺れた。
「……はぁ……。」
「なんだ、溜め息を吐いて。どうかしたのかの?」
部屋の隅で憂鬱そうな顔をする雨燕に、茶々猫が気付いた。
茶々猫は赤い髪をした少女で、獣人特有の耳をしている。
スリットがはいった着物から見える脚は、誰もが認めるほどふつくしい。
「茶々猫さん……。」
「溜め息ということは……何かあるのか。話してみるがよい。ん?」
「しかし……。」
「その……なんだ。話したくないのならよいのだ。今のは妾の気まぐれとでも捉えておけ。その代わり、気持ちが軽くなるなら遠慮無く話せ。」
「………………実は……。」
少し考えた後、雨燕は、胸中の想いを口に出すことにした。
「単刀直入に言うと、私は機関を裏切りました。でも青としてやってきたことは決して無くなりませんし、許されません。」
「そうだのう。」
「もし、私が強くなり大会に出たとして……黒の方々は受け入れてくれるのでしょうか。」
「……そんなことか。」
茶々猫は拍子抜けしたように言った。
「そんなこととは何ですか!私は真剣に考えていたのですよ!?」
「す、すまんのう……。いやなんだ。確かに雨燕がしてきたことは許されることではないな。」
「……やはりですか……。」
「だがな。過去は変えられないが、進み続ける今は変えられる。雨燕は既に変わっていると思うがの。」
「変わっている……?」
雨燕は首を傾げた。
「うむ。だからこそ、妾達は雨燕を受け入れておるではないか。」
「茶々猫さん……。」
「それでも自信が無いなら文句もつけられない力を見せつけてやれ。幸い、ここはそういう場所だ。」
「…………。」
雨燕はキュッと胸が締まった気がした。
そうだ。過去も大事だ。
忘れてはいけないことをやった。
だからと言って……未来や今を縛られるなんて……勿体無いではないか。
「ありがとうございます、茶々猫さん。」
「ただの気まぐれだ。猫だからのう。」
「……そうですね。猫は気まぐれ、ですね。」
…………だが、雨燕は気になっていた。
獣人である茶々猫は…………猫には見えないことを。
・・・・・・・・・
「みんなやってるなぁ……。」
イツキとカサは、部屋でくつろいでいた。
「狙い通りか?」
「ああ。仲間が多いぶん、競う対象だって自ずと増える。それなら、そこに火を点けてやれば……実力を高めあい、さらに絆も育つ。」
「成程な。互いに教えあうことで、自分の事も相手の事も知れる。……旅に同行して共に過ごすとはいえ、そういう機会が必要だったのかもしれないな。」
「そうそう。」
イツキは置いていた珈琲を飲んだ。
「あー……美味なり……。」
「桃の国から取り寄せたオリジナルブレンドだと言っていたな。」
「……あー……あれか。でも少し味が違う気がする……。」
「ドリップの仕方によって味が違うだろう。これは私が淹れたが、黒猫嬢が淹れたものとはまた違うということだろ?」
「おう。カサのも美味しいけど、黒猫さんのにはまだ敵わないかな。」
「こいつぅ~!」
…………。
「……ん?カサだよな、今の。」
イツキは頬に汗をたらした。
カサを見ると、頬を赤くしている。
「…………忘れてくれ。」
カサは小さく呟いた。
こんばんは、アフロ月です。
萌葱色の変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
……あ、私は朝は米派です。
雨燕は青出身ですからね、そりゃあ悩みますよ。
それで悩まないのは能天気かポジティブか……ヒナか?
短いですが、最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You。




