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萌葱色の変奏曲  作者: アフロペンギン
深淵の箱庭編
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第五章「潜入」

どうも。

最近料理に凝っています、アフロ月です。

ブックマークしてくれるって嬉しいですね。

 第五章「潜入」




「どうだった?」

「青。大勢。」

「ああ……やっぱり。」


 イツキ、まぐろ、ハツガはシンリン村のはずれにやってきていた。

 無事に下水道を出た三人は、日が落ちそうになっていたため、そしてこれからのことを考えるために一度村へ寄ることにしたのだが……。

 村の出入口は青の国に封鎖されていたのだ。


「お母さん……。」


 ぽつりとまぐろが呟く。

 それを見かねたイツキはこう言った。


「大丈夫だって。ただ封鎖されてるだけだろ?」

「で、でも……!箱庭ではあんなことがっ、あって……!!」

「だから。今から見に行くんだろ?」

「……はい。」


 納得した表情ではなかったが……言えば何とかなる問題ではない。我慢するしかないのだ。下を向き、まぐろは渋々引き下がった。


「ハツガ、いけそうか?」

「盗賊の私には朝飯前。朝飯前はお腹空く。」

「…………と、とりあえずいけるんだな。立てるか?まぐろ。」

「は、はい。」


 青の視線を掻い潜り村へ入る、イツキ達の潜入作戦が開始された。


「先頭はハツガで、先導してくれ。真ん中をまぐろ、後ろに俺がつく。」


 ハツガとまぐろ、共に首肯すると足音を消して走り始める。ハツガは職業柄、イツキは箱庭で習ったために出来ることだが、まぐろは慣れていないためにガサガサと草や葉を踏む音を出してしまう。


「ハツガ、少し速い。」

「……。」


 イツキが言うと、ハツガは黙ってスピードを落としてくれた。これなら、まぐろも足音を消しやすくなるだろう。


「はぁ……はぁ……すみません……。」

「少しずつ慣れていけばいいんだ。な?」

「は……い……。」


 足を引っ張ってしまっている。行為は嬉しいが、イツキのそれはまぐろにそう感じさせた。


「待って。」


 急に立ち止まるハツガ。

 勢い余って背中にぶつかりそうになるまぐろ。


「……ぶつかりそうになるの、二度目なんですけど……どうしました?」

「伏せ。」

「「わん。」」


 イツキとまぐろは同時に言うと腰を屈めた。


「視認。右前方。青5人。」


 木の陰に身を潜めて、ハツガはそう言った。


「騒ぎを起こすと厄介……というか失敗のようなものだしな……。」

「えっと……やり過ごせますか?」


 まぐろが聞くと、ハツガは少しの間を置き……。


「多分。」

「………………。」


 そうして、三人は黙った。心音が聞こえる。それくらいの静けさだ。

 耳をすませてみると、いくつかの足音が聞こえた。

 間隔を変えながら歩く人なんてまずいないため、慣れた人なら足音だけで何人かを判別することが出来るそうだ(ハツガ談)。

 このとき、まぐろは目を瞑っていた。恐怖と緊張状態に陥り、開けようとしなかった。

 視界が真っ暗闇に包まれて、小刻みに震えながら足音が過ぎ去るのを待つ。


「…………。」


 短い時間のはずだったが、時が経つのがとても長く感じられた。

 やがて音が過ぎ去ると、まぐろはゆっくりと目を開けた。少し目眩がする。

 今日一日、足を酷使しすぎたのだろうか。それともまだ緊張状態にあるのか。

 しかしこれは……。

 まぐろはそのまま横になると、朦朧とする意識の中イツキを呼んだ。

 それに気付いたイツキは、まぐろの異常に気付き呼びかける。しかし、まぐろにはそれに答える余裕はなかった。体が熱い。溶けてしまいそうだ。まぐろはいつの間にか目を閉じていた。



 ・・・・・・・・・



「おい、まぐろ!まぐろ!

 !」


 いつ敵が現れるか分からない。イツキは声のボリュームを落としてまぐろに呼びかける。

 しかしまぐろは返事をしない。顔を赤くして息を乱している。


「熱いな……、風邪でもひいたのか……!?」

「腕。」


 ハツガが突然言い出す。


「腕……!?」


 腕とは……まぐろの腕のことだろうか。


「腕がどうした?まぐろの腕なら……怪我してるだけだ。」

「毒?」

「いや。この傷と同じ武器で俺もやられてる……。俺に症状が表れてないから毒じゃない。」

「下水。」

「え……?」


 下水……?下水に何の関係が…………飲んだ?


「飲んでしまった、と?」


 しかしハツガは首を横に振る。では一体……?


「傷口に菌。侵入。」

「……!!傷口から、下水の菌が侵入して、炎症や拒絶反応が出てるのか……!」


 破傷風はしょうふう?……それにしては症状が出るのが早い……他に考えられる可能性は……?

 ……何にしろ、まぐろがこうなったのは下水に突き落とした自分のせいだろう。

 イツキはゆっくりとまぐろをおぶると、ハツガにこう言った。


「まぐろを治療する。どこでもいい。とりあえず家に入ったらそこを拠点とさせてもらおう。」


 そして、とイツキは続ける。


「もし見つかったら……状況にもよるけど、出来る限り俺が青を引き付けておくから。その間にハツガはまぐろを連れて逃げてくれ。場所は任せる。」

「……了解。」


 イツキが言うと、ハツガは周囲を確認する。敵がいなかったのか、手招きでイツキを先導した。



 ・・・・・・・・・



「イツキ。あそこは?」

「ん?」


 青の視線をさけつつ、イツキ達が村の周辺を歩いていると……突然ハツガが左前方に指を指した。指先には、一軒の家。

 辺りに青は見当たらない。


「……行ける。慎重に。確実に。絶対に入れてもらおう。」


 足音を殺して玄関へと近付く。ノックをすると、怯えた声で返事が返ってきた。


「だ、誰だ!?」


 男の声だ。


「静かに。敵ではありません。」

「はあ!?信じられるわけないだろ!?」

「深淵の箱庭の者です、お願いします入れてください……。」

「で、でもよぉ……。」


 渋っているのだろう。

 沈黙が流れ、イツキは頬に汗をたらす。すると。


「さっさと入れてさしあげなさい。」


 ドアが開くとともに女の声が耳に入ってきた。


「入りなさい。五月蝿くてかなわないから。」


 そこには金髪の女の子が、少し生意気そうに待ち構えていた。


「助かる。」


 イツキは足早に家の中へ入っていく。中にいた数人の男女は釈然としない様子だったが、イツキは構うことなく聞いた。


「怪我人がいるんです。申し訳ありませんが、ベッドを貸してくれませんか?神崎まぐろなんですが……ご存知の方は?」


 室内がざわつく。


「まぐろちゃんか!?」


 男の一人が声を発した。

 と、同時に駆けてくる。

 息苦しい様子のまぐろを見て驚愕の表情を浮かべた男は、イツキをベッドのある2階の部屋へと誘導した。


「……っと。」


 イツキは慎重にまぐろをベッドに降ろすと、男に向かって頭を下げた。


「ありがとうございます。」

「いいんだ。それより、一体何が?まぐろちゃんはどうしたんだ?」

「……話したいのは山々なのですが、時間がありません。まずはまぐろを治療させてください。」

「……分かった。」


 納得のいく表情ではなかったが、了解してくれたようだ。


「ありがとうございます。ハツガ、まぐろを頼む……って、あれ?ハツガ?」


 ガタッという音がして天井の隅が開く。


「任せて。」


 天井から目線だけを出して答えたハツガ。

 ……これは職業病というやつだろうか。


「……と、とりあえず任せた。行きましょう。」

「ああ……。」


 何とも言えない空気のままイツキ達は1階へ戻っていった。


「どうだったんだ!?」


 一人の男が、誘導してくれた男に問いかける。


「まぐろちゃんは……苦しそうにしている。ここまで運んでくれたこの子は信用できる。」


 すると、各方面から安堵の息が漏れた。

 ……ある一人を除いて。


「何がありましたの?」


 それは、先程の金髪の女の子だった。

 改めて見てみると、彼女は村人らしからぬ服を着ている。どこかのお嬢様が着るような服だ。

 ……まあそれよりも、頭から一本飛び出ているアホ毛の方が目立つため、そちらに目が行きがちになるのだが。


「お前……ここの村の人じゃないのか?」

「質問してるのはこっちのはずですが。」

「……ああ、すまん。長くなるから今は駄目だ。後にしてくれ。」


 イツキがそう言うと、彼女は呆れた顔で息を吐いた。


「仕方ありませんわね……。」


 イツキは、ありがとう、と言うと。


「先程の女の子のことなんですが、この中に医者の方はいませんか?」


 そう、皆を見渡すように、目配せしながら続けた。


「……儂は医者だ。儂が診よう。」


 すると、男性の低い声が聞こえてきた。一人の老人が口を開いたのだ。杖を突き歩いてくるその老人は、名を柿山と言った。なるほど、確かに首には聴診器をかけている。


「……分かりました。それでは、柿山さん。お願いします。」

「うむ。」


 イツキは柿山を2階へと誘導した。まぐろの下につくと、柿山は座ってまぐろの脈を測り始めた。

 刻々と、時間だけが過ぎていく静寂。その間にも、柿山は手慣れた手つきでまぐろを診ていった。

 やがて柿山は杖を使って立ち上がると、こう答えた。


「風邪だね。」

「…………はい?」


 一瞬だけ理解が出来なかった。えっと……。


「風邪?」

「風邪。」

「……本当に?」

「……本当に。安静にしてれば明日にはよくなるよ。」


 すると、イツキの顔はみるみるうちに赤くなっていった。


「ハツガー……?」


 呼ぶも、返事は無かった。

 二人して菌が(キリッ)や、傷口が(キリッ)などと言っていたのだ。恥ずかしくて出てこれないのも無理はない。

 ……風邪ねぇ……うん……風邪ね。確かに少し冷え込むもんね。

 ……風邪……か。

 そりゃあ風邪で済んでよかったけど……。


「……恥ずかしがってる暇は無いな。ありがとうございます、柿山さん。」

「病人を診るのが儂の仕事だからね。お礼なんていらんよ。」


 瞳を閉じてにっこりと笑う柿山。その顔を見て安心したのか、イツキはつられて笑みがこぼれた。


「それじゃあ、そろそろ下に行きましょう。僕達が知っていることを、全て話します。」

「うむ……分かった。」


 イツキは、柿山とともに下へ下りていった。

 その夜、苦しむ者。

 その夜、見守る者。

 その夜、語る者。

 4月8日……それぞれの想いを胸に、深淵の箱庭襲撃後初の、夜を迎えた。

こんにちは。そしてはじめまして。

アフロ月です。

萌葱色変奏曲第五章を読んでいただき大変恐縮です。

いかがでしたでしょうか?

稚拙な文章で理解しがたいところがあれば、それは私の勉強不足です。申し訳ありません。

さて、第五章。

初めての夜を迎えました。思えば、襲撃から1日も経っていないんですね。そして、ハツガはボケキャラになっていってます。

まあ、数少ないツッコミ役のイツキ以外にはボケてもらわなければ困るのですが……。

そして金髪の女の子。彼女は一体どういう存在なのか。活躍の場はすぐに訪れますよ。

続く第六章では…………イツキ達は好きなのですかね、問題が。村に何かが起きています。伏線はすでに張っていますので……お楽しみに。

最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。

Thank You。

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