第二十九章「レイの隠し事」
どうもアフロ月です……。
つ、辛い……この第二十九章は書いてて本当に辛かったです。
黒い雪原編
第二十九章「レイの隠し事」
「いい加減、上がったらどうですか?」
「……。」
皆が寝静まり、静寂に包まれるマキ村。
一軒の家では、イツキとレイのみが起きていた。
今だに湯から上がろうとしないレイに対し、イツキは呆れていた。
「確かにレイさんは大怪我してましたけど、そんなに入ってたら風邪ひきますよ。」
「…………。」
不機嫌そうに口を尖らせるレイ。
「……何か言ったらどうですか?」
「…………ふん。」
「…………はぁ……。」
一つ溜め息を吐くイツキ。
無理にでも上がらせるしかないか。
「力ずくでいかせてもらいますから。」
「……仕方無いのだよ。ん。」
レイは両手をイツキに伸ばした。
…………まさか……。
「上げろと?」
「正解なのだよ~。」
「…………。」
正直、面倒なのだが……上がるというならいいだろう。
イツキはレイの手を握り、引っ張った。
湯から出るレイの身体。
「壺からは出ないんですか?」
「手伝ってくれたまえ。」
「……幼稚園児ですかあんたは。」
イツキはタオルを持って、レイの身体を包みながら、お姫様抱っこの要領で壺から出してあげた。
思いの外軽く、柔らかかった。
「……降りてくれません?」
「嫌なのだよ。」
「重いっす。」
「な、な、な、イツキ君!それは女の子には言ってはいけないことなのだよ!!」
「冗談ですよ。」
降ろしたいのだが、首に腕をまわされているので、離れようとしない。
「今日はこのままがいい。」
「はい?」
「このままがいいと言ってるのさ、私は。」
「服、着ないと。バスタオルじゃ駄目でしょ。」
「むぅ……。それでは、手伝ってくれたまえ。」
「はいはい。」
断っても意味は無いと思い、イツキは観念した。
諦めよう。
「上だけでいいのだよ!」
黒いシャツに、クリーム色のロングコート。
よく目にするレイの服だ。
「……これでよし。ありがとうなのだよ、イツキ君。」
「どうも。…………あれ?下は?」
「下は遠慮しておくのだよ。」
「いやいや、本当に風邪ひきますよ。ロングコートだから少しはマシかもしれませんが……。」
本当にロングコートで良かった。……脚に目がいってしまう。
「興味あるのかい?舐めます?」
「興味ないです。舐めません。とりあえず掛け布団です、どうぞ。」
正直、内心ドキッとしてしまっていたイツキ。
それにレイの意地悪な顔なんて、久々に見たかもしれない。
「いやぁ……出来る後輩を持って幸せだね~。でもいいのかい?イツキ君が大好きなおみ足だよ?」
「人の性癖を勝手に決めないでください……突然なんですけど……。」
イツキは話を逸らすように、そして照れを隠すように話題を変えた。
「なんだい?」
「レイさんに教えてほしいことがあるんです。」
「ふむふむ……。大人のテクニックだね、いいよ!おいで!!」
「体術です。」
「大人の体術?」
「……ハツガやミノリさんみたいに連発してきますね。大丈夫ですか?」
「ばっちぐーなのだよ。」
……やはり様子がおかしい。
何かを隠している。
「……レイさん。」
「何を教えてほしいのかね?」
「何を隠してるんですか?」
「ずっと、夢を見てたんだよ。」
「話。逸らさないでください。」
「…………。」
レイの顔が、笑顔のまま固まってしまった。
「レイさん。言ってください、多分、困りますから。」
「…………さすがイツキ君。やっぱり、出来る後輩を持って幸せだね~。」
やはり……。
それにしても、隠し事とは珍しいな。
「レイさんが隠し事をするなんて……珍しいですよね。」
…………思ったことを口にしてみた。よくよく考えてみたら、これは恐ろしい事かもしれない。
普段隠し事などしない者が隠し事をするなんて……内容が軽いはずがない。
「…………言ってくれます?」
「…………うん。」
「…………。」
「………………。」
躊躇っている。
「………………私……。」
「はい。」
「私…………もう。…………戦えない。」
「………………えっ……?」
「もう…………戦えないんだ……。」
「ちょっ、ちょっと待ってください。戦えないって……それだけじゃ分からないですよ……。」
「…………怖くなっちゃった……。」
「は……?」
「それに……足手まといだから……。」
怖くなった?足手まとい?
「何言ってるんですか……。レイさんは足手まといなんかじゃないですよ!レイさんがいなかったら、今頃俺達は……!!」
「そうだね……それでもね。今は違うのだよ……。」
「今は……って、1ヶ月経って、そりゃ俺も新しい力を手にしてるしレベルアップしてるけど、みんなそうだしレイさんだってそうでしょ!?」
「勿論……でも、また……また……あんなに死にそうになって、苦しくなって……嫌……なのだよ。もう、嫌なのだよ……!!」
「……っ!!」
「みんな、強いよ。立ち向かう勇気を持ってる。私には無理なのさ。希望がみえないのさ。」
「レイさん………………やめてください。そんなレイさんを、俺は見たくないです。」
「ごめん……でも、今の私はこんなだから……。」
レイは塞ぎこんでしまった。
右脚だけを立てて、その脚に抱きつくようにしている。
「置いていってくれたまえ。私を。」
「冗談はやめてください。」
「冗談ではないよ。」
「そういうことじゃないです。…………ずっと、一緒にいたでしょ。本当かどうかはなんとなく分かります。別の理由があるでしょ?」
「えっ……!?」
「ビンゴですね。別の理由というか、そっちが本当の理由でしょ?」
「…………私の言ってることが嘘だって?」
「言っちゃうんですよね、これが。」
……少々格好つけすぎか?
……いやまあ、日光先生よりマシだろう。うん。
実際重要な事なら知っておくべきだし。
「……うん。そうだよね、イツキ君には、知ってほしくないけど……仕方無い!諦めよう!」
「はい。」
「私!………………私……。」
…………?
まさか……レイさん……泣いてる?
「ぐすっ……ぅぅ…………イヅギぐん…………!私……。」
「……はい。」
「…………左脚……動かないっ……。」
こんにちは、アフロ月です!
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか…………?
じゃないんだよ!何で俺はこんなことにしてしまったんだ…………。
レイさん……すまない。
レイさんファンの皆さんも……すみません。
最後の最後、言わせるのは辛かった。
レイさんも辛かったと思います……。
……最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You。




