第十九章「家族」
どうも、アフロ月です。
割り箸に付いてくる爪楊枝は取っておく人です。
……あ。ついに全編合わせて五十章まで来たぞ!
黒い雪原編
第十九章「家族」
垣間見ることが出来た、過去の物語。
残念ながら今回はここまでのようです。
もし、また力を取り戻すことが出来たのなら。
それは誰かの過去を視なければならないときです。
それでは戻りましょうか。
現代へ。
・・・・・・・・・
「そろそろ休むか。」
「……はい。……はぁ、今日も疲れました。」
……汽車から投げ出されて5日が経った。
緑髪で中性的な顔立ちの男・霧雨イツキ、そして、黒髪少女・神崎まぐろは桃の国へと向かっていた。
アクシデントにより汽車から投げ出され、徒歩で向かっているのだが……今だ隣国である緑の国を歩いている。
「……こんな町中じゃ、野宿は出来ないからな……。」
イツキが呟く。
山中なら野宿が出来るからよいものの、さすがに町中にテントを張るのは変質者だろう。
「青の人達も歩いてますからね。」
まぐろも囁くように言った。
そう。
今、緑の国は青の国と紫の国の手によって陥落している。
面が割れていないのが幸いして、町中を出歩くことは出来るのだが……見回りに見つかると少々厄介だ。
「ここから山の方に行くのは面倒だしな……。」
「そうですね……。」
イツキがチラッと横を一瞥すると、そこにはピンク色のホテルがあった。
「もうそこでよくね?」
「…………霧雨先輩。ここからは別行動にしましょう。」
「じょ、冗談だって。」
「女の子にそういう冗談を言ったら、嫌われますよ。」
苦笑しながら「すまん」と謝るイツキ。
「じゃあ本気だったらいいのか?」
「………………ふぇ?」
突拍子も無いことをイツキが言った。
まぐろの表情は今、とても崩れている。
なにこれ。
「にゃ、にゃにをい、い、い、言ってるんですかかかか!!!!」
「いやだから、本気だったら入るのかなぁと。」
「からかうのもいい加減にしてください……!!」
……おっと、怒らせてしまったようだ。
ちょっと調子に乗ってしまったな。悪い癖だ。
「すまん、まぐろ。とりあえず町から出ようか。」
「…………はーい……。」
顔を見てくれなくなった。
……やっちまった。
大通りの方へ出て、先程より通行人が多くなっていく。
しかし……とてもではないが、あまり活気づいているとは言えない。
こんなところにも影響は出てるんだ……。早く、緑の国を取り返さないと。
「……霧雨先輩。」
「ん、どうした?」
「あの人……。」
「え?」
まぐろの視線の先には、マントを深々と羽織っている者がいた。
背が高いことから大人であろう。
……冷静に判断したはいいが、怪しいな。敵か味方か。
少なくとも、姿を隠す必要があるのなら関わらない方がよいかもしれない。
「目は合わせるな。……会話でやり過ごそう。」
「……はい。」
イツキとまぐろは他愛もない話をし始めた。
「母さん、今日の晩御飯は何かな?」
「そうねぇ。今晩はカレーにしようかしら。」
「おお、いいねぇカレー。ハッハッハッ!」
フッ。
突然の夫婦の演技でも、俺達なら楽々さ。
「いや、無理がありますよ……。」
「……やっぱり?あはは…………そ、それで、何か用ですか?」
気付けば、マント野郎はイツキ達の目の前で立ち止まっていた。
「……イツキ?」
「え?この声……ま、まさか……な。」
「いや、俺だよ。久しぶり。」
そう言って、マント野郎はマントを取った。マント野郎は一人の男だった。
見た目は日光より年上だ。
何処と無く、雰囲気がイツキに似ているが……。
「……どなたですか?霧雨先輩。」
誰だか分からない。少なくともまぐろには見覚えが無いので、まぐろがイツキと出会う前の知り合いだろう。
「覚えてるよな?俺のこと。」
「……当たり前だろ……忘れるわけないだろ、親父。」
「…………え。」
「よかったよかった、覚えていてくれて。」
「霧雨先輩の、お、お父さん……ですか!?」
まぐろは驚愕の表情を浮かべた。
「ああ……うん、まあ。」
「こっちのお嬢ちゃんは?」
「そんなこと聞く為に来たのか?目的はなんだ。」
「目的って、おいおい、そう怖い顔するなって。」
「……いいから答えろよ。」
「はぁ……相変わらず嫌われてるなぁ。じゃあ、どこかで茶でもしばきながら。奢ってやる。」
「…………分かった。」
無粋な雰囲気で、イツキは父親に付いていった。
まぐろはどうすればよいのか分からず、とりあえず二人に付いていくことにした。
・・・・・・・・・
「いただきます。」
「…………。」
イツキの父親は、マナーを守ってステーキを食べ始めた。
まぐろはご馳走になった烏龍茶を啜っている。
「……早く話してくれないか?こっちには時間が無いんだが。」
「腹が減っては戦はできぬ。だろ?」
「今からやることは戦じゃねえだろ?」
「……はぁ。焦ってもいいことねぇぞ。」
水で、口の中の物を飲み込む。
「俺が来たのは、お前が心配になったからだよ。」
「……はっ。一丁前に親父面すんなよ。」
「そんな言い方無いだろ。俺だって大変だったんだからな。」
「それは自業自得だろ!!」
イツキの怒号に、固まってしまうまぐろ。内心驚いた。
「……店では静かにしろよ。」
「…………ああ、くそ!何でここで会うかなぁ……!!」
「…………私、御手洗いに行ってきます。」
ここは二人で話し合うべきだ。部外者である私が居ていいはずない。
そう思い、まぐろは席を後にした。
「気遣ってくれたぞ。優しい女の子だな。」
「……そうだな。誰でも席を外したくなるだろうけど。」
「あいつは……夕立は元気か?」
「ああ。昨日会ってきた。ご近所さんと頑張ってたよ。」
「……よかった。仲良くやってるんだな。」
「……一応、妹だしな。腹違いでも。」
…………腹違い……?
確かに昨日、ある一人の女の子に会ったが……。
あれは霧雨先輩の腹違いの妹だったのか?
トイレに行くふりをして、まぐろはこっそりと陰から盗み聞きをしていた。
「夕立は、今年で17だったよな?」
「俺の一つ下だからな。」
「膜あんのかな。」
「おいクソ親父。いきなり下の話はやめろよ。」
「すまんすまん。」
笑いながら謝る父親に、笑えないイツキ。
……何かある。この二人には。
「親父、もう女は作ってないよな?」
「…………。」
「……てめぇな……。」
「……俺も男だし……。」
「本っ当にクソ親父だよ……てめぇは……。」
「…………。」
「……ふざけんなよ……。」
「……心配したのは本当だ。」
「別に……いいよ。心配されなくても。」
「イツキ……。」
「…………話は終わりでいいのか?」
「……ああ。そろそろ出るか。お嬢ちゃんの様子でも見に行ってやれよ。」
「いや、まぐろならそこにいる。」
…………バレていたようだ。
姿を現したまぐろに、少し度肝を抜く父親。
「鍛えられてるな。」
「……え?……あ……はい。ありがとうございます。」
何を格好つけてるのだろう。
・・・・・・・・・
ホテル代をせびり、イツキとまぐろ、そしてイツキの父親は手頃なホテルに泊まることにした。
ホテルに向かう途中、まぐろは聞いてみた。
「霧雨先輩……。その、立ち入った話なので、深くは聞きません。……ですが、お二人の関係は?」
「俺が息子で、こいつは父親。」
「……お父さんは遊び人なのですか?」
「直球だな。」
苦笑するイツキ。
答えたのは父親だった。
「根っからのな。この世にはいい女が多くてなぁ~。お嬢ちゃんは、レイを知ってるか?」
「レイ先輩なら、はい。」
「あいつにも手を出そうとしたら、軽く断られたよ。いやぁ~まいったわ。興味があるのはイツキの方だってよ。」
「あらま、大胆ですね。」
「だろ?イツキはまだくっついてないのか?」
「そうですね。霧雨先輩は奥手な部分がありますから。」
「お前ら……。」
仲良くなるのが早い。
こういうトーク術を身に付けているから、簡単に女を作ってるのか……。
「……って、親父。まさかまぐろを狙ってないよな?言っておくけど手を出したら違法だからな?」
「え?お嬢ちゃん何歳?」
「15です。今年で16になります。」
「ジーザス……。」
「ジーザスじゃねえぞ。クソ親父。」
……先行きが不安なイツキだった。
こんにちは、アフロ月です。
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
前々から出したいと思っていたイツキの親父を出しました。
皆様は、たとえクソ親父でも家族は大切にしてあげてください。いなくなって気付くことなんて沢山ありますから。
……あ、私の父親まだ元気ですよ。まだまだ長生きしてほしいです。
……話がそれましたね。
存在がほのめかされた夕立ちゃん。
イツキの腹違いの妹らしいですが……いつか出したいです。
最後に後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You。




