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萌葱色の変奏曲  作者: アフロペンギン
深淵の箱庭編
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第三章「危惧は本望」

どうも。

今さらですが、萌葱は、「もえぎ」と読みます。

萌えるにねぎ

葱っ娘というのは可愛らしいのでしょうか。

 第三章「危惧は本望」




「ふむ、ここはまだ安全な方なようだね。」


 レイに連れられて、イツキとまぐろは保健室へとやってきていた。


「かなり荒らされていますけどね。」


 室内を見回し、イツキは口を開く。イツキの言うように保健室は荒らされていた。椅子は壊れ、ベッドは汚れてシーツが破かれており、薬品棚が倒れたりしている。


「イツキ君、まぐろちゃん。手当てをするから少し待っていてくれたまえ。」


 二人に向かい微笑むと、レイは室内を漁り始めた。

 そしてイツキはベッドに横たわり、まぐろはそのベッドに座った。


「ま、まぐろ……痛々しいな、その傷。」


 まぐろの腕を見てイツキは言った。


「霧雨先輩が一番酷いですよ。」


 と、まぐろ。

 確かに、三人の中で一番傷が深いのはイツキだ。レイに至っては無傷ときたものだ。


「いーや!どっちも酷いものさ。」


 すると、いつの間にかまぐろの前にはレイが立っていた。手には包帯や薬品が入った瓶類を持っている。


「あっ、レイ先輩。えと、よろしくお願いします。」

「ふふ、任せたまえ!」


 包帯等を手頃な位置に置くと、レイは慣れた手つきでまぐろの手当てを始めた。


「痛っ……!」

「ごめん、もう少しの辛抱だからね。我慢してくれるかい?」

「は、はい……。」

「…………よっ、これで一先ずは大丈夫だよ。」

「あ、ありがとうございます。」

「次はイツキ君だね。」


 呼吸が整ってきているもののイツキは出血が激しく、この状態を長引かせてはいけない。このままでは出血多量で死んでしまうだろう。


「私はこういったことは専門外だから、応急手当しか出来ないけど……。死なせはしないから安心したまえ。」


 ニヤリと笑い、しかし真剣な眼差しでレイはイツキの手当てに取り掛かった。



 ・・・・・・・・・



 破壊音が響き煙が巻き上がる。そんな中、深淵の箱庭内の保健室では防衛戦がはられていた。


「ほっ、よっ、はっ!」


 無駄に躍動感を出して敵を撃退していくレイ。あのあとイツキの手当てを終えたのはいいものの、いくつかの小隊に居場所がバレて保健室は小さな戦場となっていたのだ。


「がっ……!!」

「ごぶぁっ……。」


 レイから放たれる光、もとい炎の前になすすべもなく倒れていく青。

 その光景をベッドの下からまぐろは見ていた。


「……!……!!」


 いくつもの衝撃で悲鳴をあげたくなるが、手で口を押さえて声を抑えている。

 レイの機転によりまぐろとイツキはすぐさまベッドの下へ隠されたのだ。敵にもまだ見つかっていないはずだった。


「何で炎が出るんだろう……?」

「ああ……それはな。」

「霧雨先輩!?」


 声量を下げて声を出したまぐろは、寝そべって横にいるイツキに反応した。


「なんだ?」

「いえ……。えっと、それでレイさんのあの炎は……?」

海岐華みぎか レイ。箱庭内で2番目の実力を持った魔法使いだ。」

「魔法使い……!?えっじゃあレイ先輩って魔力を……?」

「持ってる。あんな感じだけど凄い人だろ?」

「はい。私、小さな頃に教えてもらったことがあるんです。確か……魔力を持つ人っていうのは、あまりいないんですよね?」

「あまりというかほとんどいないな。」


 イツキはまぐろに「魔法使い」のことを話し始めた。

 イツキも詳しく覚えてはいなかったため、簡単に話すと……。

 魔法使いというのは、血液の中にある「魔力」を使役する者のことを言うこと。

 魔力を持つ者はある血筋、もしくはその派生先の血筋のみのために、ぽっと出で魔法使いが現れるなんてことはないということ。

 魔力は血液の中にしか存在しないため、使った魔力を回復するには時間が経ち、血液の循環を待たなければいけないこと。


「魔法使いのことで覚えてるのはそんなところかな。」

「は、はあ……。」

「ちなみにレイさんが持ってる魔力は炎で、その中でも巨大な手足の造形が得意らしい。」

「フィニィィィィィッシュ!!」


 と、レイは巨大な炎の拳で敵を吹っ飛ばした。


「ほら、あんな風に。」

「あはは……。」


 その光景を見たまぐろは苦笑した。


「げ。」

「え?」


 すると。突如イツキが声を出してベッドから引きずり出されたのだ。


「霧雨先輩!?」

「気付かれたのかよ!くっそっ!」


 なりふり構わず、敵の一人はイツキに向かって剣を降り下ろす。

 まぐろがベッドの下から這い出ようとすると、叫びとともにその敵は倒れた。


「あっぶねぇ……レイさん。俺もやります。」

「ふふ、残念だったねイツキ君。もう終わっているのだよ。」

「あ、フィニッシュって言ってましたもんね。」


 そんな会話が耳に入ってきてまぐろは、怪我している左腕を庇いつつベッドの下から這い出た。


「まぐろちゃん、大丈夫かね?」

「はい。おかげさまで。」

「私がいるからね。安心していいのだよ!先程の戦闘時の騒音で、新手に気付かれた可能性がある。とりあえずここを離れようか。」

「了解です。」

「は、はい!」


 二人の返事を聞きにこりと笑うレイ。そうして、三人は来たときよりかなり荒れた保健室を後にした。



 ・・・・・・・・・



「ここなのかい?」

「はい。」


 戦いが続くなか、イツキ達はマンホールへとやってきていた。


「校門は使えない。大きな壁で囲まれている。それなら脱出口は下水道くらいしかありませんから。」


 イツキがマンホールの蓋を開けつつ言った。


「霧雨先輩、敵影はありません!」

「ありがとうまぐろ。先に行って。」

「わ、分かりました。」


 反論は無駄だと思い、まぐろは素直にイツキの指示に従って下に降りていく。


「レイさんも。」

 すぐに目で訴えかけ、レイを下へと促す。しかし。

「……私は残るよ。」

「……え?」


 くるりと半回転してイツキに背中を向ける。予想外というわけではなかったのだが、まさか本当に言うとは……。


「本気ですか?ここは危険な場所です。」

「百も承知さぁ。だけど、君達みたいな子がまだ残ってるかもしれないだろう?」

「そ、それはそうですけど……。」


 口籠るイツキ。しかしレイは言葉を紡ぐ。


「私と一緒がいいのかい?ふふ、恥ずかしいねぇ。」

「なっ……!?じゃなくて、レイさんにも生き残ってほしいからで……!」

「勿論、イツキ君らと逃げるというのもアリなのだがね。誰も守れない自分の無力さが憎いのさ。」

「それでも・・・それでも、俺達を守ってくれました!!」

「それじゃあ満足出来ないのだよ。」

「っ……!」


 イツキが何も言わなくなったのを聞き届けると、レイは「最後に」と付け加えた。


「また会えたら、そのときは、優しく、抱き締めてくれると、嬉しい所存だね。」


 ……レイは丁寧に確認するように、そして少し恥ずかしそうに言った。顔は見られていないが恐らく赤くなってるだろう。


「いたぞおぉぉぉっ!!」

「ん?」


 声に気付きその方向を見てみる。すると砂煙に紛れて遠くに青い影がいくつか見えた。


「さあ行くのだよ、イツキ君。騎士というのは姫を守らなきゃいけないのだからね。」

「じゃあこの状況だと俺が姫ってことですか。」

「ふふ、そうだね。でも次は、君が騎士の番さ。まぐろちゃんをお願いするよ。」

「はい。……っと、来ますよ。」

「うむ。では……。」

「「また後で。」」


 イツキとレイは同時に言うと、レイは敵のもとへ。

 イツキは下水道へと下りていった。


「よっ……と。」


 梯子を使わずに飛び下りたイツキ。


「霧雨先輩、無茶しないでくださいよ?」

「ああ、すまん。しなくてもいいところで、無茶する必要ないもんな。」


 苦笑してイツキは、まぐろに返事をした。

 そして辺りを見回す。

 下水道は暗く、通路を挟み中央を静かに水が流れていた。自分の息の音が聞こえるくらい静かで、あまり嗅ぎたくはない臭いが蔓延している。


「とりあえず行こう。この下水道を通って外に出るんだ。」

「え?レイ先輩はどうしたんですか?」

「レイさんは……上に残るそうだ。」

「えっ……!?」


 驚愕の表情を浮かべるまぐろ。


「残るって……いくらレイ先輩でもそれは!!!」

「信じるしかない。あの人なら……大丈夫なはずだから。」


 真っ直ぐ。イツキはまぐろの瞳を見た。その真剣な眼差しにまぐろは圧されて、一つため息をつく。


「……仕方がありませんね。私には、どうしようも出来ませんから。」

「すまん。」

「謝ることなんてありませんよ。行きましょうか。」

「ああ。」


 イツキは頷くと、まぐろとともに出口へと歩き始めた。

 視界が悪いため、あまり早く歩くことは出来ない。

 一歩ずつ、慎重に足場を確認しながら歩いていく。

 イツキとまぐろの足音のみが響く。すると。


「ぐぼあっ!!」

「うわぁ!霧雨先輩!!」


 突如イツキが足を踏み外して下水に落ちてしまった。

 急いで下水から飛び出る。


「びっくりしたし痛い……。」

「何やってるんですか……うわ、くさい。」


 と、まぐろは顔をしかめた。


「お前正直だな……。」


 イツキはショボくれた様子で顔をしかめる。そのまま着ていた服を絞りつつ歩き始めた。

 無論、それにまぐろはついていく。


「消えるかなぁ……この臭い。」

「消えてほしいです。一緒にいる側としてはたまりませんね。」

「え!?そんなに酷いの!?」

「悪臭ですから。」

「……そうか。」


 どこか遠い目をするイツキ。しかしこんなことで悄気ている場合ではない。一刻も早く外へ


「ドカン!」


 突然上から爆発音が聞こえた。


「ぐっ……!!」

「ひやあっ!!」


 下水道が揺れて、イツキ達は思わず手を突いてしまう。


「ドカン!!」


 またもや爆発音。しかも一回目より大きな音と衝撃である。イツキはよろけてしまい……。


「ぐぼあっ!!」

「霧雨先輩!?」


 ……爆発音は二回。イツキが下水に落ちるのもこれで二回目だ。

こんにちは。そしてはじめまして。

アフロ月です。

萌葱色変奏曲、第三章を読んでいただき大変恐縮です。

いかがでしたでしょうか?

稚拙な文章で理解しがたいところがあれば、それは私の勉強不足です。申し訳ありません。

さて、第三章ですが……レイさん、お強いのですよ。

箱庭ではトップ2の実力をもっていると、イツキが言っていましたね。

生き残っていることにも頷けます。

そして別れ。残らずに、イツキ達と行動をともにすれば生存率はうんと高まります。レイもそうしたかったはずです。

しかし彼女は残ることを選びました。再会を誓って。

次があれば、また会えます。生き残ることを願いましょう。

続く第四章では…………下水道からの脱出を図るイツキ達。そこには壁が立ちふさがります。

シリアスだった雰囲気も、章を刻むごとに緩和していくでしょう。勿論、シリアスなところはシリアスですが。

最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。

Thank You


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