第十章「黒と緑と日光と」
アフロ月です。
今回は後書きで、ちょっとしたお知らせを載せてまーす。
黒い雪原編
第十章「黒と緑と日光と」
「こんなところ……ですか。」
昼過ぎの時間帯。
だが、彼女のいる脇道は夜のように暗かった。
ランプを側に置き、紙の束を纏めている。
ここは青の国。
緑や赤、さらに白や桃を襲撃した国である。
そして、青の国にあるクラウドと呼ばれる街で、彼女は暗躍していた。
狙うのは情報。1ヶ月の間に情報屋へと転じた彼女は、その世界でこう呼ばれていた。
そう。「黒猫」と。
「…………まあ、本名と思う人はいないでしょう。」
黒猫は今日も、情報を集める。
「次は、あっちに行ってみましょうか。」
束を懐に入れて、本道の方へ歩いていった。
・・・・・・・・・
「ここが国境……っと。」
「ふぅ……。」
徒歩で桃の国へと向かう、イツキとまぐろ。
白の国を越え、今しがた緑の国へ足を踏み入れた。
「ここからさらに桃の国へ向かうけど……さすがに何日もかけることになる。休憩しつつ夕方頃まで歩いたら、今日は休もう。」
「はい、了解です霧雨先輩!」
霧雨先輩…………霧雨先輩…………。
うん。何度も呼ばれているが、やはりいい響きだ。
「うん、行くぞ。」
「あっ、少し待ってください。」
「ん?」
「靴紐が解けてしまって……すぐに結び直すので。」
そう言って、まぐろは屈んだ。確かに右足の方の靴紐
が解けている。
「すまん、危なかったな。」
「いえいえ。」
笑って、まぐろは紐を結び直す。
こういった風に一方が立ち、一方が屈んでいると、とても懐かしい。でもあの時向こうは泣いてたっけ。
………………?
…………まただ。
…………また……同じ感覚……。
あの時?
あの時って……?
もう少しで思い出せそうなのだが……。
「霧雨先輩?」
いつの間にかまぐろは立っていた。
「あっ……えっと、どうした?」
「結び終わりましたよ。少しボーっとしてましたけど、大丈夫ですか?」
「うん……大丈夫。行こうぜ。」
苦笑して、出発するイツキ。
まぐろはその後ろをトコトコと付いていった。
・・・・・・・・・
「…………。」
緑の国を走行している汽車。
連結された列車では、静かに戦闘が行われていた。
争離という技で、離れた場所にいる相手に斬撃を届ける日光。
対するは、影の魔法を扱い、斬撃から身を守る「海底の古城」長・オオノガン。
持久戦へと持ち込まれた戦いは、20分程経過した。
そんなおじさんとおじいさんの戦いを見守るのは、メイドであるミノリだ。
「日光様……。」
呟き、自身の後方をチラッと一瞥する。
そこには怪我人である5人の仲間が横になっている。
変に参入して、怪我を負おうものなら、迷惑をかけてしまう。
ただでさえ危険な状態なのだから、守護に徹しようと、ミノリは待ち構えていた。
「…………。」
「争離か……もっと格好いい名前にしようか……。」
オオノガンが黙って影を操っているのに対し、日光は何やら呟いている。
両者余裕といったところだ。
この持久戦、まだまだ時間がかかりそうだ。
……と、ミノリは思っていた。
「群彰、退け。」
その声に、日光は手を止めた。
「あ?」
日光の頭上を飛び越えて、オオノガンの前へ躍り出たのは……。
「茶々猫様……!」
赤髪を靡かせ接近したのは茶々猫だった。
影に邪魔されようとも、携帯していた小刀で徐々に近付いていく。
しかしあと一歩のところで、影に受け止められてしまった。
競り合いが続く。
「久しいの、オオノガン。」
「茶々猫か……ほう、腕は上がっているようだな。」
「まぁのう。だからといって、手加減はせぬぞ?」
「無用だ。」
オオノガンが手を払うように振ると、影が同じように動き、茶々猫を吹っ飛ばした。
「危ねっ!!」
日光が受けとめる。
その隙に影が二人を貫こうとした。
「またかよっ……!!」
横に緊急回避。
座席の陰に隠れるも、意味は無い。
日光の腕が影に捕まった。
「ぐっ……!!」
「群彰!!」
小刀で影を切り、解放する。
しかし右に左に、影に囲まれてしまった。
「くう……!」
「日光様、茶々猫様!」
「ミノリ!!!」
日光が叫んだ。
「絶対に加勢すんなよ!!怪我人守るのがてめぇの仕事だ!!」
「日光様…………!!」
「こっちなら大丈夫だ!!…………ぐっ……!!」
……正直、大丈夫ではなさそうだ。
どんどんどんどん周りが暗くなっていく。
黒に染まる列車内は、ミノリの視界を妨げる。
日光達が見えない……!
「こういうのは……マニュアルにはありませんでしたが……。」
ミノリは脇差しを手に持った。
「……賭けですね。」
「お止めになった方がよろしいですよ。」
「……え……?」
外から声が聞こえた。
直後、大きな音とともに、列車内の影は消え去った。
「な、何事ですか……!?」
砂煙が舞って、ミノリは目を瞑った。
腕で顔を隠すも、間に合わず口の中に少し砂が入ってしまった。
「ぺっぺっ…………ぺっ……日光様ー?茶々猫様ー?御無事ですかー!?」
呼んでみるも、返事は無い。
煙が晴れて、少しずつだが視界が良くなっていく。
「ミノリ、こっちは無事だ!茶々猫は気を失っているが………………な…………お前……。」
日光の声がした。
無事なら良いが、何かが起きている。どうやら誰かがいるようだ。
ミノリ側からも、その相貌が見えてきた。
着ているのは和服。
結った黒髪が美しいその女は、静かにオオノガンを見ていた。
「……エネルギー爆発は、止めておいた方がよろしいですよ。死ぬ気ですか。」
その言葉に、ミノリはドキッとした。
女の言う通り、ミノリは脇差しの高密度エネルギーを爆発させようとしたのだ。
自身とオオノガンを道連れに。
「……よく分かりましたね。……そういう貴女は?」
「私ですか?私は……。」
「雨燕……!?」
女が言う前に、日光が答えてしまった。
そう。彼女の名は雨燕。
深淵の箱庭で、日光やレイと戦ったことのある…………敵だ。
「何で……っていうかどうやって……!!」
日光の声に、耳を傾ける雨燕。
「……ん?もしかして日光群彰?」
「……まあ。」
「約1ヶ月ぶり……ですかね。まさか貴方が乗っているなんて思ってもみませんでした。」
「…………雨燕か。」
オオノガンが、二人の会話に割ってはいってきた。
「お久しぶりです。オオノガン様。」
「暫く見なかったが……何をしていた?」
「はい……少し入り用で。」
「…………後でゆっくり聞くとしよう。まずは、こいつらを始末してくれ。」
雨燕は、一歩、また一歩と、オオノガンのもとへ歩みを進める。
これで戦況は大きく傾く。
ミノリ達の敗北へと。
「…………ありがとうございました、オオノガン様。」
瞬間、雨燕は腰の刀を振り下ろした。
軌跡はオオノガンの右肩から左脇腹にかけて通る、袈裟斬り。
「がっ……!!」
「なっ……!?」
「何してんだ!?」
「…………。」
「ぐうぅぅぅっ!!!」
オオノガンは膝から崩れながらも、影の魔法で雨燕を払った。
雨燕も吹っ飛び、日光が受け止める。
「……あっ。思わず受け止めちまったが……お前、何をしてるんだ……?言っちゃなんだが、お前の敵は俺達だろ……?」
「はい。この前までは。」
「……何だと?」
雨燕は立ち上がり、言葉を紡ぐ。
「私は……己の正義を持つことにしました。それが、この道なのです。」
どうやら、戦況は有利へと傾きそうだ。
どうも、アフロ月です。
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
黒猫さんも出てきて、少しずつその姿が明らかになっていく霧雨一行ですが、集合出来るのはいつなんだろう。
……いつなんだよ、俺。
そして、最後ですが…………雨燕、やっちゃいましたね。まさかオオノガンへの初撃が彼女とは……。
……あ、そうそう。お知らせです。
明日の投稿ですが、まことに勝手ながら無しとさせていただきます。人生がかかっていると言っても過言ではない勝負が、明日は待っているのです。
最後に、後書きまで読んでいただきありがとうございます。
またお会いしましょう。
Thank You。




