第六章「忌避と邂逅その2」
以前、ステルスマーケティングした友人に、どのキャラクターが好きなのかを聞いてみました。
少し悩み、ヒラメと答えた友人。
理由は普通だからとか。
…………いや、昼ドラ好きならミノリさんだろ!?
黒い雪原編
第六章「忌避と邂逅その2」
トコトコと。
ミノリが歩いていた。
茶々猫に、イツキからの伝言があるからだ。
「……そうだ。それで……。」
一人の男が何かを話していた。
別に興味も無い内容なのだが、その声に、ミノリは惹きつけられた。
男は50代程の中年男性で、髭が長い。
…………戻るときに、顔を一瞥してみよう。
そう思い、ミノリは茶々猫の元へ歩んでいった。
・・・・・・・・・
5分後。
まだ少し気恥ずかしさが残っている2人。
成りゆきとはいえ、抱きしめあっていたこと変わりはない。
「霧雨先輩。」
「ん、どうした?」
「レイ先輩、治るのでしょうか?」
「治るさ。茶々猫さんの隠れ家には……。」
イツキは声のボリュームを下げて、顔を寄せる。
まぐろは聞き耳をたてた。
「大きな声では言えないけどさ、どんな大怪我でも治せる温泉があるんだ。俺も何回もお世話になってる。」
「す、凄いですね。」
「獣人族に伝わる秘伝の湯らしいぞ。」
「……獣人族?」
「まぐろは知らないか?」
「ま、まあ……。」
イツキは顔を離すと、少し考えて喋りだした。
「俺達の世界には魔物がいるだろ?そんな魔物が知性を持った者が魔族だ。獣人族は、魔族の1種で、耳や牙が特徴的だな。魔族には他にも、エルフやドワーフがいるんだ。」
「では、茶々猫さんは獣人族なんですか?」
「そういうことだな。」
「お楽しみ中に申し訳ありません。イツキ様。」
「…………あえてスルーしよう。どうしましたミノリさん?」
またもやミノリが、イツキらのもとにやって来ていた。
浮かない顔をしている……雲行きの怪しいことにならなければよいのだが。
……ミノリの後ろに男が立っている?
「その方は?」
「イツキ様にお話があるようで、お連れしました。」
「俺に……?」
誰だろう。初対面のはずだが……。
「座っていいかな?」
低い声で聞く男。
……どこかで聞いた声だ。
「あっ……どうぞ。」
イツキがそう答えると、男性はゆっくりと腰をかけた。
髭が長いなぁ……。
「霧雨イツキ君かね?」
「はい。俺が霧雨イツキです……。失礼ですが、貴方は?」
「はじめましてだな。私はオオノガン。シュトルムブルー=オオノガンだ。」
「………………え……?」
オオノガン?
聞いたことある。
どこだ?どこで聞いたのだ?
あれは…………確か、桃の国……?
「……オオノガン…………!?って……青の……頭……!?」
身の毛もよだつ感覚。
オオノガン。
彼は青の国傭兵育成機関「海底の古城」の長である。
つまり…………イツキ達の人生を狂わせた全ての元凶。
「まぐろ、離れろ!!」
立って、レイピアを抜こうと手をかける。
しかし。
「イツキ様!!」
何故か、制止したのはミノリだった。
「ミノリさん……!?」
「1ヶ月、イツキ様がどれほど強くなったのかは分かりません。ですが、彼には届かないと思われます。」
「そんなの、やってみなくちゃ分からな……!!」
と、ミノリが制する右手が目にはいった。
何か黒いものがうごめいている。
「……な、何ですかこれ……。」
「彼の魔法です。逆らうことが許されない影の魔法。」
影……?影だと反自然は使えないな……。
「すみません……イツキ様が武器を抜いた瞬間、私はイツキ様を殺してしまいます。」
「ぐっ……!」
イツキは渋々、椅子に座り直した。
「…………利口だな。」
「…………何の用だ。」
「乗っていた汽車がジャックされ、その首謀者が箱庭の者だときた。そこで、どんな人物だろうと見にきたのだ。」
「それだけか?」
「拍子抜けか。」
「いや……それだけなら、むしろ有り難いが。」
顔が強張るのは仕方無いとはいえ、体まで硬直してしまっている。
威圧でここまで?
……攻撃はできないのか?
ミノリが影に捕まっている。もし、本当にイツキを殺すというのなら、その前にオオノガンを……。
「ひっ……!」
「……!?まぐろ……!?」
視線をずらして、まぐろを見てみる。
すると首に、いつの間にか黒い影が……。
「オオノガンてめぇ……!!」
「保険だ、保険。」
「…………それ以上何かしたら許さないからな。」
今すぐにでも斬りかかりたい衝動を抑えるイツキ。
「目的はなんだ?」
「怪我人の手当てのため、至急桃の国へ向かっている。」
「ほう。」
「お前の目的は?」
「……ん……?」
「答えてやったんだ。そっちも答えないと、フェアじゃないだろ。」
「敵に平等を語るのか?」
「敵の前に人間だからな。」
「…………フッ。」
オオノガンは鼻で笑った。
「……面白い。そうだな……言うなれば世界征服だ。」
「…………出来ると思ってるのか?」
「世界の半分は手にいれたからな。」
「認めてねぇ。」
「それでも事実だ。」
「……くそっ……!」
何なんだ、こいつ。
調子が狂う。
「征服して、その先何がしたい?」
「その先か?残念だが答えられないな。」
「……何故?」
「キミの言う平等だよ。さて……そろそろお喋りも飽きてきた。」
「……は?」
すると、オオノガンは右手を前にかざした。
「くっ……!」
「うぅ……!」
ミノリとまぐろが一瞬苦しんだ。
「何をした!!」
「影を解いただけだ。…………行き先は桃の国だな?」
「……それが?」
「いや、私は今、気分が良い。下りるまで、私はキミに事を起こすようなことはしないよ……。」
そのとき。
車内が暗い影に包まれた。
停電と思ったが違う。
外に何かいるのだ。
直後に来る衝撃。
窓が割れてそこから現れた巨大な機械がまぐろを掴んだ。
「えっ……えええええ!?」
「まぐろ!?くそっ……!!」
オオノガンかまぐろか……どっちをとる……!?
「……まぐろ!!」
急いで機械に飛び乗るイツキ。
さらに汽車は揺れて、ミノリはバランスを崩す。
「イツキ様!!」
「そっちは任せまし……!!」
轟音で、すぐに音はかき消された。
外へと投げ飛ばされるイツキとまぐろ。
雪がクッションになり、大きな怪我はしていないようだが……。
ガシャン。
「ガシャン?」
真っ白な雪原の中、そこには茶色の巨大ロボットがいた。
つまり、先程の機械は……このロボットの腕?
イツキとまぐろ。
タッグによる初の相手は、人でも魔物でもない、ロボットだった。
こんにちは、今日も元気なアフロ月です。
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
黒い雪原編も、早いものでもう六章まで来ました。
……あれ?黒だから黒の国に行くのでは?とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
はい。私も疑問に思っています。
黒の国に行かないの?何で桃の国に向かってるの?
…………後々行ければいいんじゃないかな!!
最後に、後書きまで読んでいただきありがとうございます!
またお会いしましょう。
Thank You。




