第五章「どこか寂しげで」
どうも、アフロ月です。
この第五章は、一度消滅したものを復活させた章です。
全く同じというわけにはいきませんでしたが、書き直したおかげで良い展開を思いつくというファインプレー。
ありがとう、旧第五章。
キミの犠牲は無駄ではなかったよ。
黒い雪原編
第五章「どこか寂しげで」
「はっ……はっ……。」
白い吐息。
体を動かしていないと、体温が徐々に奪われていきそうだ。
怪我人を背負い、雪の中を歩く霧雨一行。
青との交戦で負傷者が続出したのだが、仲間内に医者がいない霧雨一行にとって、それはとても致命的なものだった。
特にイツキが背負っているレイは、最も危険な状態である。
一刻も早く治療したいのだが……。
「こっちで合ってるのか?」
仲間の一人である日光に問われる。
「線路が見えてきました。合ってます。」
イツキが答えると、日光は安堵の息を吐いた。
線路上に着くと、イツキは辺りを見回した。
「…………まだ通ってなさそうだな。」
「本当にやるんですか?」
まぐろが息を切らしつつ聞く。
「やる。じゃないと、間に合わないだろ?」
「それはそうですけど……それなら、やれるんですか?」
「茶々猫さんなら出来るから、大丈夫。ねっ、茶々猫さん。」
「勿論だ。」
白猫とともに、ハツガを運ぶ茶々猫。
茶々猫はこう続ける。
「皆が仲間の為にここまで来たのだ。背負うのも疲れただろうし、一発で決めてやろう。」
そう。今イツキ達は仲間を背負っている。
イツキはレイ、日光はツユ、茶々猫と白猫はハツガ、まぐろとミノリはヒラメを。
「霧雨先輩!!来ました!!」
まぐろが叫んだ。
「よし、茶々猫さん以外退避!!」
イツキの掛け声で、茶々猫以外は線路を下りた横に待機した。
残った茶々猫は、堂々と線路上に立つ。
見えてくるは汽車。
茶々猫に気付いたのか、汽車はゆっくりとスピードを落としていった。
しかし……間に合わない。
茶々猫に当たると思ったのだが……。
「ほっ。」
茶々猫は空を舞うように、汽車に飛び乗ったのだ。
イツキ達も汽車内に潜入する。
・・・・・・・・・
同時刻、汽車内。
「今の、人だったよな!?」
「ああ……でも、衝突の衝撃が無かったが……。」
運転士2人は混乱していた。
先程の汽車のスピードで、目視してからのブレーキは間に合わない。
……はずなのだが。
「ここで運転するのかの?」
「!?」
後方で声がして振り返ると、そこには背の低い赤髪の女がいた。
それは先程、線路上で目視した女だった。
「悪いが、この汽車は乗っ取らせてもらった。手荒な真似はするな。こっちには人質がおるのだからのう。」
女は顎をクイッと、自身の後ろへやる。
そこには、女性と、首元にナイフを突き付けられている乗客がいた。
「ぐっ……!!」
「戦って勝てると思うなよ?汽車に飛び乗った妾にのう。」
女の言う通りだ。
どんなトリックを使ったかは分からないが、彼女は今確かに目の前にいるのだ。
「はよ動かせ!!!」
女の怒号に、運転士達は従わざるをえなかった。
やがてスピードにのっていく汽車。
「…………動いてるってことは、成功したんだな。」
「うう……すみません。」
列車では、イツキとまぐろが待機していた。
無論、人質を取って。
「とりあえず、このままあっちに向かおう。」
「はい……。」
「まぐろ。それにしても、少しは付いて来れるようになったんだな。」
「え?」
「1ヶ月前はまだ普通の女の子だったのに……白の国で相当鍛えられたんだな。」
「確かに、お世話になった方々はいますよ。レイ先輩には体術。ハツガさんには短剣。ツユ先生には射撃。ヒラメさんには剣術を教えてもらいました。」
当たり前のように言うまぐろに対し、イツキは軽く顔がひきつった。
「……ま、まさか全部会得したのか……?」
「とんでもないですよ!一通り触れただけです。それでも、体術と剣術は才能あるかもと言われました。」
「嬉しいけど……何か複雑だなぁ……。」
「どうしてですか?」
「俺、お前のタッグだし。」
「……これからです。これから。霧雨先輩にも色々なことを教えてもらって、認めてもらわないと。」
「認めるねぇ……。」
「も、もう……!一応レイ先輩にはセンス、ハツガさんには料理を認めてもらってます!」
「料理?」
「白の国のレジスタンスギルドにいた時、副リーダーであるモチさんと料理を振る舞っていたんです。」
「あ、俺も食ってみたい。」
「では、次の機会に腕をふるいます!!」
一頻り談笑する2人。
汽車を乗っ取っているなんて忘れてしまう程だった。
……まあ、日光とミノリが見張りはしてくれているから、大丈夫だろう。
「…………霧雨先輩。」
突如、呼ばれるイツキ。
「ん?」
「……ぐすっ……霧雨……先輩……。」
まぐろは泣いていた。
大粒の涙を落としている。
「まぐろ……?」
「すみません……。」
ガバッと、まぐろはイツキの胸に抱きついた。
その小さな体はすっぽりと入ってしまった。
「ホワイ!?」
「ずっと……ずっと会いたかったです…………!霧雨……先輩……!!」
ど、どうすればいいんだ。
こういうことは慣れてないんだけどなぁぁぁぁぁ…………!!!!
男なら、抱きしめてあげるべきだよな。頭撫でたり……?
そうしよう。俺は漢なんだから!漢なんだから!!!
「えっと……漢……じゃなくて、心配かけてごめん……な?」
右手を腰にまわして、左手で頭を撫でる。
これでいいのだろうか?……いや、これでいい!!
これでいいのだ!!
「盛り上がっているところ、申し訳ありません。」
……ミノリがいつの間にかそこまで来ていた。
「きゃっ、ミノリさん!!」
「ど、どうしたんですか!?」
「……いえ、イツキ様にお伺いしたいことが。」
「はい。」
2人は急いで身体を離すと、何故か正座になった。
「……正座?」
「あ、いや、これは、ミノリさん!お伺いしたいこととは!?」
「あと20分程で緑の国ですが、停まらずに素通りということで宜しいのですか?」
「そうですね。停まっている時間なんてありません。」
「かしこまりました。それでは、茶々猫様にそう伝えます。」
トコトコとミノリは歩いていった。
数歩、歩いたところで、停止しクルリと振り返る。
「先程の続きをやってもらっても結構ですよ。キスの次の段階にいってもらっても有り難いです。」
「早く伝えてください!」
「このことを?」
「素通りを!!」
しょんぼりとした面持ちで、ミノリは前の列車へ移動していった。
こんにちは、アフロ月です。
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
皆様は、汽車を乗っ取ったことはありますか?
……ほうほう……それはそれは……。
はい。犯罪ですのでお止めください。
…………って、あれ?ということは、イツキはやっちゃった感じ……?
最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に、感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You。




