第一章「そこに集うは緑の意志」
どうも、アフロ月です。
今回から新編に突入いたしました。
1ヶ月、違えた道の先に、彼らは何を見出だすのか。
黒い雪原編
第一章「そこに集うは緑の意志」
猛る吹雪。
5月14日。
雪が降ることすら無いであろう季節に、季節外れの雪が吹く。
白の国はそういった国なのだ。
世界一渡ることが難しい国と知られて、それは歴然とした事実だ。
ただ…………痛感したことはない。
何故なら私は痛感する前にここ、地下街へと招かれたからだ。
地上に住むことが難しい白の国は、この地下街が人々の住み処となっている。
デパート等の地下街というイメージではなく、街そのものが地下にあるのだ。
……それでも…………とても寒いが。
「ここにいましたのね。」
後方で声がした。
見やると、そこには金髪の少女がいた。
アホ毛が一本、頭から出ており可愛らしい。
妃懦莉 ヒラメ。
今は無き、緑の国巨大都市の一つ「二重薔薇ノ園」の王女である。
「レイとモチが呼んでましたわよ。恐らく脱国の件でしょう。」
白の国は現在、青の国に襲撃されている。
…………否。正確には残党狩りの途中だった。襲撃は1ヶ月程前に終わりを告げたのだが、レジスタンスが行われているのだ。白の国の特性が功を奏して、今のところは反抗できているのだが……。
「難しいのでしょうね。かなり追い詰められている状況だと聞きましたわ。」
「…………。」
「とりあえず立ってくださいまし。行きますわよ、まぐろ。」
「はい、ヒラメさん。」
ヒラメに促されて、箱庭生徒であり黒髪の少女、神崎まぐろは笑顔を返した。
・・・・・・・・・
「おかえり。」
「ただいまです、ツユ先生。」
地下街の東部には、レジスタンスギルドがあった。
白の国傭兵育成機関「雪原の洞穴」が解体され、行き場を無くした者達もここにいる。
灰髪の女性、ツユは、緑の国傭兵育成機関「深淵の箱庭」の新米教諭だ。
「レイさん、モチさん。お待たせしました。」
ギルド内の一角に、目的の人物はいた。
ギルドの副リーダー・モチ。そして、箱庭の先輩である海岐華 レイ。
モチは笑顔を絶やさない女性で、レイは桃色の髪を一つに束ね、魔法使いのような三角帽子を被った女性である。
クリーム色のロングコートが暖かそうだ。
「待っていたのだよ、まぐろちゃん。」
レイが呼び、まぐろは近くの椅子に座った。
「何ですか?」
「うむ。私達の脱国が決まったのだよ。」
「……やはりですか……。それで、どこに行くんですか?」
「黒の国だねぇ。今、一番安全な国はあそこだし。」
黒の国。
世界で一番の面積を持つ巨大な国だ。
「あそこなら、青の追っ手も中々苦労するだろうからね。」
「そうだね~。」
緑の国襲撃を皮切りに、紫と同盟を組んだ青は赤、桃を手中へと収めた。
大義名分として、緑・赤・桃・白を戦争国家として粛清しようと目論んだ。
勿論、戦争を起こそうとした証拠なんてない。
それでも目の前の現実を受け止めなければならないのだ。
「起こそうとしていない証拠も無いですからね……。」
「ん?何か言ったかい?まぐろちゃん。」
「い、いえ!何でもありません!」
そして、まぐろはレイ達と脱国の作戦をまとめていった。
作戦はこうだ。
地下街の出入口。そこでは、レジスタンスギルドのリーダー・真白井率いる精鋭部隊が銃撃戦を繰り広げている。
そこで青を引き付けている間に、輸入用のエレベーターに乗って外に出るのだ。
エレベーターは出入口の比較的近くにあるものの、リスクは段違いだ。
「ただ……。」
笑顔のまま、モチは言う。
「エレベーターの発着音が大きいんだよね~……。気付かれる可能性大なんだよね~。」
「わー……それは大変ですね……。」
「うむ……アレしかなさそうだね。」
「え。アレですか……!?」
「まぐろちゃんはまだ慣れてないから、私が抱っこしてあげるのだよ。」
「わー……それも大変ですね……。」
どうやらレイには、策があるようだ。
レイが腰を上げて、身なりを整える。
整え終わると、口を開いた。
「それでは先に行っててくれたまえ。私はハツガさんを呼んでくるのだよ。」
「はい。気を付けてください。」
・・・・・・・・・
地上では銃撃戦が繰り広げられている。
そんな中、唯、一人。
ナイフで戦う盗賊がいた。
銃弾は避けるかナイフで落とす。異質と言っても過言ではない彼女は、灰髪と口元を隠すスカーフを靡かせていた。
灰色の死神と恐れられる女性、名はハツガ。
レジスタンスギルドのリーダー・真白井にも引けをとらない実力を持っている。
1ヶ月以上地下街を維持することが出来たのも、彼女の活躍あってこそだろう。
「…………?」
戦いの途中、鳩が飛んできた。
白い伝書鳩は雪で見えにくいため、連絡用に非常に有効な手段だ。
「…………了解。」
小さく口ずさみ、ハツガは鳩を連れてエレベーター前に駆けた。
・・・・・・・・・
「おかえりなさい、レイさん。」
まぐろが言うと、レイは親指をグッと立てた。
荷物を持ってエレベーターに乗った、まぐろ、ヒラメ、ツユ、レイ。
元々緑の国からやって来た彼女達は、レジスタンスギルドの力を借りて白の国脱出を目指す。
「霧雨先輩……。お父さん……。」
まぐろが、首からかけたお守りを握り、呟いた。
このお守りは行方不明の父親から貰った物で、小さい頃からとても大事にしている。
そして霧雨先輩というのは……。
「イツキは今頃、何をしているのでしょうね……。」
ヒラメが聞いていたようだ。
そう。
霧雨 イツキ。
まぐろの命の恩人であり、青の脅威に立ち向かう霧雨一行のリーダーである。
彼がいなかったら、まぐろはここにいない。
当の本人とは、数人の仲間とともに、アクシデントで離ればなれになってしまったのだが。
「きっと今頃、イツキ君達は…………まあ、うん。頑張ってるはずさぁ。」
「レイさん、あやふやですね……。」
苦笑するまぐろ。
すると、エレベーターの入口にモチが来た。
「みんな、準備はいい?」
首肯する4人。
「うーん……寂しくなるね~。元気でね、みんな。」
「すみません……私達だけ。」
「いいんだよ~。また会おうね。」
「はい……!また、美味しいご飯を食べさせてください……!」
「うん~。それじゃあ閉めるからね~。」
ガコンと音を立て、扉は閉まった。
4人は最後まで手を振って、モチも最後まで手を振っていた。
暫くして、エレベーター独特の浮遊感に身体が包まれる。
レイが何かを呟くと、小さな炎が自身の。そしてヒラメ、ツユの背中に漂う。
「さあ、始めるのだよ。」
・・・・・・・・・
「今までありがとな、ハツガ。」
低い声で真白井はそう言った。
首を横に振るハツガ。
伝書鳩を手渡し、美味しそうだったと言うと、ハツガはエレベーター前に駆け出した。
勿論その間も銃弾は流れてくる。
その中を駆けるハツガがエレベーター前に着く数秒前、エレベーターから大きな音が聞こえた。
ガコンという発着音に続き、扉が開く。
青の軍勢も、そちらに銃口を向ける。
………………扉が開く。
「撃て!!!」
エレベーターに向かって一斉射撃。
普通ではひとたまりも無い。
……そう、普通では。
扉から勢いよく飛び出したのは、三つの赤い炎。
炎が滑るように飛んでいく。
「あれは……。」
ハツガはその炎を何度も目にしたことがある。
すると、ゆっくりとさらに一つの炎が近付いてきた。
ハツガの背中に向かう小さな炎は、大きな羽へと姿を変えた。
動揺する青。
内一人が、ハツガに発砲した。
しかし……。
ハツガは滑るように銃弾をかわして、もの凄い速さで三つの炎に近付いた。
その炎の正体は、同じように羽を形成させたレイ、ヒラメ、ツユだった。
「ちょうどいいね、ハツガさん。」
レイが言って、ハツガが頷く。
こうして、レイの策「魔法」で彼女達は白の国脱出を図ったのだった。
こんにちは、アフロ月です。
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?稚拙な文章で読みにくくありませんでしたか?
さてさて、黒い雪原編へと突入した萌葱色変奏曲。
第一章は白の国から始まりましたね。
1ヶ月前に分かれた仲間達の姿を書くことが出来て良かったです。
そうそう、深淵の箱庭編に、国の概要を書いた小説(?)を出しています。
よかったらそちらもどうぞ。
最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You。




