第十七章「遅めの切り札」
アフロ月です。
RPGは十分にレベルを上げていく派です。
白桃編
第十七章「遅めの切り札」
桃の国にある街・ヨザクラでは、青が蔓延っていた……そして。
「……ハァ……ハァ……何だこれ……?」
イツキが息を切らしながら言った。
それに答えることは少なくともイツキ達には無理だった。
道の真ん中にクレーターのように大きな穴が空いている。そしてその中心には……巨大なアンテナが建っていた。
「……茶々猫さん、見覚えは?」
「無い……。それにこんなもの、妾達には造れぬ。」
「…………ですね。……茶々猫さん、お話があります。」
「こんなときにか?」
「こんなときだからです。恐らく……貴女は同盟を組みたくなる。」
「……ほう?」
イツキは今一度息を整えて茶々猫にこう言った。
「不変迷彩って御存知ですか?」
「ああ、今世紀最大の科学兵器と呼ばれるあれじゃろ?確か、覆ったものを外から見たときに、覆った時点での状態から何があっても何も変わらないように見える。」
「深淵の箱庭に、それが使われてました。」
「……なに?」
「不変迷彩を作れるのは、どこですか?」
「世界一の科学大国・紫の国だ。……正確に言うならば、紫の国だけ…………待て。まさか汝は……。」
「ええ。それならこのアンテナがあることも頷ける。……青と紫は……手を組んでいる。」
「紫が堕ちたのか!?」
「無理矢理なのか意思があってのことなのか……どちらにしろ、このままでは桃の国も終わりです。」
「くぅ……!!」
「どうします?俺達と……手を組みますか?」
「……とんでもない爆弾を落としてきたのう……!まさかここで言うとはの……。」
「切り札は取っておくもんでしょ。」
「…………四の五の言ってられぬな。同盟を組ませてもらう………………まさかこのために、黒猫達を?」
「立会人は必要だと思いまして。」
イツキはふてぶてしく笑った。
「やるのう……。」
頬に一滴の汗を垂らす茶々猫。
そしてこう続けた。
「では……今からどうする?」
「とりあえず、動ける戦力を、このアンテナを壊す破壊班、連絡の仲介をする通信班、そして向こうの戦力を減らす戦闘班に分けます。」
「分かった。」
茶々猫は頷いた。
そして顎に手を当てて、何かを考えているようだ。
数秒経ち、「よし」と言うと、茶々猫はイツキにこう指示をした。
「編成はイツキが決めてくれ。妾は通信班として、街路樹の他の者達にも呼びかけてみる。」
「では、通信班は茶々猫さんと黒猫さんにお願いします。破壊班は俺とカサでやるから……あとの人は全員戦闘にまわってください。あと、戦闘班は必ず5人以上で行動。大雑把な指示は、日光先生にお願いしてください。」
「それでよいな?」
「はい。」
「では、任せたぞ!」
茶々猫と黒猫は、一目散に駆けていった。
残されたイツキとカサは、アンテナの麓へと下りてみた。
「大きい……な……。」
カサが呟いた。
全長10メートルはありそうなアンテナをイツキとカサは見上げている。
「…………。」
「…………。」
「……イツキ。」
「……どうした?」
「……何故私達は、こんなことをしている?」
「緑の国のためだろ。それ以外に何かあるのか?」
「…………いや。……そうだな、緑が青の手に堕ちたのは悔しいからな。」
イツキとカサが話していると、後方から何者かの足音が聞こえてくる。
「誰か来る……。カサ、隠れるぞ。」
「うむ。」
アンテナの裏側に隠れて、様子を伺うことにした。
近付いてくる足音は、やがて地面を滑り落ちる音に変わる。
……クレーターを下りてきたのだろう。
「にしても……でけぇな。」
「紫が作ったんだろ?さすが、世界一の科学大国だな。」
男の声が二つ。
……恐らく青だ。
それにしても、紫が作っただって……?やはり青と紫は手を組んでいるのだろうか?
「えっと……設置は出来たものの、確か起動させなきゃいけないんだろ?」
「そうだ。裏側にあったはずだが……。」
まずい。こっちに来る。
イツキは慌ててカサに囁いた。
「…………。」
「…………は!?なななななななな何をすす、する気だ!?」
「いいから。」
青が、アンテナの裏側へとやって来た。がしかし。
そこには抱き合い、キスをしている男女がいた。
「おっと、すいません……。」
謝る青の男。
「どうした?」
「いや、カップルがよ……全く、最近の若いやつは……。」
「は?…………いやおかしいだろ。」
「…………そう言われれば……。」
男が慌てて裏側に戻ると、そこには拳を振りかぶるイツキがいた。
「ふっ!!」
「がっ……!!」
見事に顔に一撃を与え、男は気絶した。
「この野郎……!!」
もう一人の男が剣を構えて振り下ろす。
しかしイツキは咄嗟にレイピアで受け流した。
イツキの得意技「三葉崩し」だ。
体勢を崩した男に、突きをお見舞いする。
そして、一言。
「甘いんだよ。」
「ぐっ……!」
男はそのまま前に倒れた。
ふぅ……と。一息吐くイツキ。
突然で驚いたが、とりあえずは凌げたようだ。
「カサ。さっきこいつらが言ってた、起動源を破壊すれば、これは使い物にならなくなるはずだ。探してみよう。」
「…………。」
カサの返事が無い。
口を開けて呆けている。
「……カサ?」
「っは!!な、なななななんだ!?」
「……いや……起動源を探して壊そうぜ。」
「そ、そうだな!!はは!はははは!!」
「そこまで動揺するのか……。」
顔を近付けて、「そう」見せただけなのだが……。
やはりこういった作戦は、カサにはまずかったか。
苦笑して、イツキはアンテナを探り始めた。
・・・・・・・・・
「これは…………?」
夜街の街路樹へと帰ってきた茶々猫と黒猫。
しかし……。
「もぬけの殻……ですね。」
街路樹内は荒れていた。
スズメを捕らえていた部屋ですら、誰もいなかった。
「あの者達はどこに行ったのだ……!白猫!!群彰!!ミノリ!!」
………………。
返事は無い。
代わりに聞こえてきたのは……。
「……足音ですね。」
「……しかも、近付いてくるのう。」
慌ただしい音を立てて、その足音はすぐそこまで迫ってきていた。
「だああああ!!何で俺はまた追いかけられてるんだよ!!!」
そう言って、扉を蹴破り入ってきたのは、あるおじさんだった。
「群彰!!」
「あん?……って、茶々猫か!?何でここにいんだよ!?」
日光 群彰。中二病を患ったおじさんだ。
右手に刀を握っている。
「話は後にした方がよいのではないか?」
「そうか?」
「では、その後ろの奴等はなんなのだ……。」
「敵。」
日光の後方には、約10人の青がいた。
殺気立ち、今にも飛びかかってきそうだ。
……と、本当に一人が飛びかかってきた。
その振りかぶった斧での攻撃は、日光の横を掠めた。
否、正確にはただ日光が横に移動して避けたのだ。
しかも、後ろ向きで。
「!?」
驚愕する茶々猫や黒猫。
日光は刀を斧に向かって振ると、斧は綺麗に二つに断たれた。
まさに、一刀両断。
「今の、斜罪。」
日光は言った。
そして今度は、青に刀を振り下ろす。
左肩から斬られて、倒れる一人の青。
「これ、斬下。」
またもや日光が言うと、残る青は後ずさりをした。
「逃げるのか?」
その言葉を皮切りに、青は次々に逃げていった。
静けさを取り戻した部屋で、日光は溜め息を吐いた。
茶々猫と黒猫は、相変わらず驚愕の表情をつくっている。
「…………で、何でここにいるんだ?」
「…………あ、ああ……かくかくしかじかでな……。青が攻めてきているのは分かっておるだろう?日光には戦闘を任せる。今から仲間を集めてくるから、5人以上で行動。そして、その他の指示は日光に任せると、イツキが言っていた。」
「霧雨が?ったく、面倒なこと任せやがるな……。」
・・・・・・・・・
「……なあ。イツキ。」
「……んー……?」
アンテナを探る二人。
ふと、カサはイツキに問う。
「何故指示を日光に任せたのだ?大人ならミノリがいるし、確かに同じ箱庭所属なら、信頼出来るかもしれないが……。それにミノリはああ見えて大したものだぞ。」
「まあ。でも、日光先生は箱庭一だから。」
「箱庭一と呼ばれているからか?」
「いや、箱庭一と呼べる実力を持ってるから。」
「……。」
「正直、あの人は指示しなくていいんだ。戦うだけで士気は上がる。そんな人だから。」
こんにちは、そしてはじめまして。
アフロ月です。
萌葱色変奏曲を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたか?
稚拙な文章で理解しがたいところがあれば、私の勉強不足です。申し訳ありません。
正式に同盟を組み、緑の国は戦力アップをしました。
今後この同盟がどう影響していくのか……お楽しみに。
最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に、感謝を込めまして……またお会いしましょう。
Thank You。




