第一章「暴力」
初投稿です。
オスです。
可愛がってあげてください。
第一章「暴力」
口から心臓が出るとはよく言ったものだ。
極度の緊張からか、少女、神崎まぐろはそんなことを思いながら長い廊下を歩いていた。
新暦700年。
8つの国があるこの世界では、戦争も無く平和な世界が保たれていた。
まぐろの住む緑の国には傭兵を育成する学校がある。まあ、それは緑の国に限ったことではなく一国に一つ学校があるのが世界共通の認識だった。
魔物がはびこるなか力を付けるには最適な場所で、事実、傭兵のみならず様々な場所へと就職するために役立っている場所だった。
しかしそのような場所があるせいか、戦争が起こるのではないかとしばしば問題視されていた。
戦争を起こすことは国家間で禁じられている。無論、それは当たり前のことであり、しかもこの学校は争いを「抑制」する存在としても大きいのだ。
そんなところに入学できたのだから、もう少しシャキッとしようと背筋を伸ばすまぐろ。それから3分程歩くと、まぐろがこれから通う教室の入口へと到着した。1年3組と書かれた板が扉の横に掛かっており、軽く息を吐くと目の前のドアを横へと開けるのだった。
「よし、これでいいかな?」
部屋に置いてある立ち鏡と相対しながら、霧雨イツキは身なりを整えていた。
緑髪で、中性的な顔の青年である。
緑の国の傭兵育成学校「深淵の箱庭」の第26期生であるイツキは、先程入学式を終えた第28期生の一人、神崎まぐろの世話係を担当することとなった。
入学して2年経った者はその年の新入生とタッグを組み、一連の世話をするという方針が深淵の箱庭にはある。一昨年は勿論、2年上の第24期生の先輩に様々なことを教えてもらったものだ。それが今年はイツキが教える側になった。
準備は万端だ。そう思い時計を一瞥すると、あまり猶予は残されていないようだった。
近くに置いていた黒色の、そして鍔部分が深紅色の花を模しているレイピアを腰に差す。
気が引き締まる想いで頬を叩き「よし」と意気込むと、イツキは目的の場へと足を向けた。
・・・・・・・・・
教室にはすでに級友が集まっていた。
黒板の前へ立たされ、新入生を見渡せるように。そして見渡されるよう並べられる。まずは端から順に担当する生徒と体育館へ向かうのだ。
中間らへんだったがあっというまにイツキの番が来ると、自分とタッグを組む予定の神崎まぐろの名を呼んだ。
「えっと、俺と組むのは神崎まぐろさん……です。どちらにいらっしゃいますか?」
「は、はい。」
イツキが見回す前に手を挙げる少女が見えたため、手間が省けたと思いながらこっちへ来るよう手招きをした。
「じゃあ、まぐろさん。とりあえず体育館に行こうか。自己紹介は道中でいいかな?」
「は、はい。」
「……緊張で顔が強張ってるけど……うん、大丈夫だよ?もっと気楽にしていいんだよ?」
「は、はい。」
だめだこの娘。さっきから同じことしか言ってない。
イツキは苦笑しながら、少女を連れて教室を出るのだった。
「とりあえず自己紹介。俺は霧雨イツキ。26期生で、まぐろさんの2年先輩だ。……まあ、さっき先生から聞いてると思うけど。」
「……。」
「に、にしても、まぐろって珍しい名前だな。」
「……。」
今度は黙り始めた。
直に緊張も解けるだろうが少しやりにくいと思うイツキだった。
しかし……いざ彼女を見るとかなり綺麗な相貌だ。長く伸びた黒髪をポニーテールに纏めており声が幼いのもあってか、可愛いという部類に入るであろう少女だった。
「あ、あの……。」
「んえっ!?」
突然まぐろがこちらを向き話しかけてきたため、変な声が出てしまう。
「え、あ、すみません……。」
「……ああごめん、まぐろさん。どうかした?」
「あの……今から体育館で何をするんですか?」
「そのことか。今日は武器の使い方だね。」
「武器って、さっき学校から支給されたこの剣のですか?」
まぐろは、自分の腰にさしたブロードソードを見てそう言った。
「そっ。あと本当は教えちゃ駄目なんだけど……。」
辺りを見回し声のボリュームを下げるイツキ。それに合わせて、まぐろは耳を傾ける。
「演習があるんだ。」
「演習……?それって、私達は……。」
「あ、勿論全員参加。……まあ、習うより慣れろってことかな。」
無言で頬に汗を垂らすまぐろ。
それを見て、イツキは苦笑し言葉を続ける。
「大丈夫。初めてだから緊張はすると思うけど、落ち着いて対処すれば……。」
「霧雨先輩、それ……。」
それ?
イツキの顔のさらに奥。廊下の窓に視線を合わせるまぐろ。何だろうと思い、イツキが視線を窓へと向けると同時、目の前の窓ガラスを人影がぶち破ってきた。
「なっ……!?」
「きゃっ……!!」
廊下に鳴り響くガラスが割れる音。突然のことに混乱する二人。しかし、先程の人影は落ち着きを取り戻す時間を与えてはくれなかった。腰に下げられていた大剣を振り抜き、狭い廊下の壁を抉りつつ少女の腹を捉え……たかに見えたが、
「ぐっ……!!あぁぁああああぁぁ!!!」
「なに……!?ぐあああっ!!」
寸前でイツキのレイピアが、大剣の軌跡を受け流し反撃に成功したのだ。
するとそれはくぐもった声を出しながら手で傷口を押さえつつ背中から倒れた。
「重い……な……なんだ?この攻撃は。」
「だ、大丈夫ですか!?霧雨先輩!!」
「ああ、なんとか。まぐろは無事か?」
「はい。私は大丈夫です。」
だけど……と言った様子で、まぐろは倒れている男を見ながら口を開く。
「でもこの人は……?これが演習なんですか……!?っていうか、もしかして死……。」
「いや、そこまで深くダメージは与えていない。…………だけど……。」
表情を曇らせるイツキ。不安を募らせながらも、まぐろはイツキをじっと見つめた。するとイツキは、襟元を口に近付けた。
「こちらNo.5クロス5、霧雨イツキ。応答願います。」
襟元に付いた小さなトランシーバーのようなもので、連絡を取るイツキ。その数秒ののち、険しい顔で口を開く。
「……回線が込み合ってる……聞かされていたこととは違う……。」
ブツブツと呟くイツキが考え事をするなか、ふとまぐろの顔が目に入った。
「あ、まぐろ。俺から離れるなよ?」
「はい……。って、えっ!?ちょっ!?」
不安に満ちた顔のまぐろの手をとると、イツキは駆け始めた。
「どうしたんですか!?」
「とりあえず教室だ。先生がいるから、指示を……。……!!」
さらなる音が響く。すると同じような身なりの者達が、廊下に次々と侵入してくるではないか。それらはこちらに気付くと同時に剣を抜いてきた。
「動きはプロだな。マスクで顔は見えないが、その服……青か。」
まぐろの手を離し、構えるイツキ。受け流しを得意とするイツキは、それらの剣撃をかわし受け流し突く。まぐろの目にはイツキに敵無し。そう見えた。
・・・・・・・・・
「……まぐろ!離れるなって言っただろ!」
「あっ、すみません……。」
見とれていたのかいつの間にか距離が開いていたようだ。まぐろは自分を待ってくれているイツキのもとへ急いだ。
教室の前へと着くと、イツキは辺りを見回した。
敵の影は無い……そう確認すると、ドアに手をかけた。だが……。
「ど、どうしたんですか?」
首を傾げるまぐろ。しかしイツキはある違和感を覚えていたのだ。
「……何で何もないんだ?」
「え?」
イツキはまたも、ブツブツと呟き始める。
「廊下に鳴り響くほどの音がしてた……じゃあ何で誰も出てこない?」
「霧雨先輩……?」
嫌な予感がする。イツキ意を決してドアを開けた。
「……!!まぐろ、絶対に見るな!!!」
「え。」
時すでに遅し。イツキが言うも、すでにまぐろの目前にはただ赤い光景が広がっていた。
「うっ……がはっごほっ、……ぁぁぁ!!!」
胃の中の物が込み上げてくる感覚に襲われ、まぐろは思わず嘔吐してしまう。
「あああぁぁぁぁああぁぁああああああああぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁあああああああ」
イツキの声が教室にこだました。無論、返ってくるものは……その声だけだ。
目眩。意識の混濁。嘔吐感。一歩遅れてやってきたそれらはイツキをさらに深い絶望へと突き落とした。ふらふらと歩いて「山」の前で崩れ落ちる。
すると。
ピチャッ……
「……!?」
イツキの耳に、水溜まりの上を歩くような音が入る。
振り向くと、剣に赤い液体を滴らせた体格の良い男が一人立っていた。マスクが取れていたため男と判断出来たのだが……。
今のイツキには関係ない。
「あああああああ。」
男を睨みつけ自然とやりどころのない感情をぶつける。ただただ乱心するイツキ。
「ああああああアアアアア!!!!!!」
怒号を響かせ、イツキの意識は糸が切れたようそこで途絶えた。
こんにちは。そしてはじめまして。
アフロ月という者です。
萌葱色変奏曲、第一章を読んでいただき大変恐縮です。
いかがでしたでしょうか?
稚拙な文章なので理解しがたいところがあれば、それは私の勉強不足です。申し訳ありません。
さてさて、第一章ですが、物語にはイツキとまぐろが出てきました。
タッグを組むことになって、いざ楽しい共同生活の始まりだ!!と思っていた矢先、あんなことが起きてしまいましたね。
続く第二章では…………イツキの先輩らしさというものを見せる章となっております。続きを読みたいとお思いになられてくれたのなら、お楽しみに。
最後に、後書きまで読んでくださった読者の皆様に感謝を込めまして……是非またお会いしましょう。
Thank You。




